心からの笑顔
グラコート伯爵家の当主であるジョージは大の愛妻家。妻であるスミレに全ての愛情を注いでいた。側室を拒否し、全く耳を貸さない。
しかし上級貴族の当主の体裁を整えるために御側付きである専任侍女を付ける事になった。
ポーラは没落気味の男爵家の16歳の三女だ。容姿が優れていたため、ポーラの実家としては大きな期待を込めてグラコート伯爵家に送り出された。
しかし専任侍女になったポーラにジョージは専任侍女の重要な特別の仕事を全くさせなかった。
容姿端麗の専任侍女を持つ事は貴族の基本ステータスだ。当然、夜会に専任侍女は連れ出される。ポーラも例外ではなかった。
夜会での専任侍女は会場に入場するまでが仕事になる。
当主の斜め後ろを歩き付き従う。言ってみれば当主の装身具だ。
そして夜会の本会場には入らず、専任侍女専用の控室で夜会が終わるまで待機する事になる。当主の帰宅時にも装身具としての役割りがあるためだ。
専任侍女専用の控室は一般的には大部屋だ。他の貴族の専任侍女との交流を持つようになる。
そこにも貴族社会の構図が存在していた。
主人の権力を誇示するもの。どれだけ自分が寵愛を受けているのかの自慢話。絶え間ない美の追求の話。自分の将来設計の話。内容は多岐にわたる。
そしてどうしても避けられないのが専任侍女としての重要な特別の仕事についてだった。
どうやって当主を満足させているのか? 新しい性技は何かないか? 週に何回相手しているのか? 果ては当主のナニの大きさや特徴などが話のネタになる。
16歳のポーラはジョージ伯爵だけでなく男性経験が全くなかった。
その為、その会話に全く付いていけなかった。
ポーラはなんとか誤魔化そうとしても、それは到底無理な話だ。
ポーラがジョージ伯爵と性的な関係を持っていないことはすぐに周囲に知れ渡った。
上級貴族の専任侍女の価値はどれだけ当主から寵愛を受けられるかだ。
当主の下半身の管理の責任を一身に受けるのが専任侍女である。
当主から性的な興味を示されない専任侍女など全くの無価値だ。
ポーラはいとも容易く他の専任侍女から馬鹿にされる存在へと成り下がっていた。
それでもポーラは頑張った。ジョージ伯爵に性的な行為をしていただくため、美容に力をいれる。
日々の侍女業務でも献身的にジョージ伯爵に尽くす。
ジョージ伯爵の趣味である登山にも嫌な顔一つせず随行する。
ジョージ伯爵の教養に合わすために勉学にも取り組んだ。
実家の期待に応えるためポーラは妥協をせず努力を続ける。
これも一重にジョージ伯爵から御情けを頂戴するためである。
容姿に優れていたポーラは数年で帝都一の美貌と教養を持った専任侍女として有名になっていた。
しかし相変わらずジョージ伯爵はポーラには指一本触れず、妻のスミレしか相手にしなかった。
表向きは帝都一の美姫。しかし専任侍女の間では見下されるポーラ。
次第にポーラの顔から表情が薄くなっていく。
そんな時ある事件が起こった。
ジョージ伯爵が夜会で知り合った伯爵令嬢と密通をしてしまう。
その夜会ではジョージ伯爵は相当酔っ払っていた。
密通をしてしまった令嬢の伯爵家はスミレの実家と政治的に敵対している家でもあった。その為、その伯爵家の策略の一つであろうと推測された。
ジョージ伯爵が平謝りをしたため、スミレからは許された。
あくまで一時の間違いとして処理される。
しかし数ヶ月後、ポーラに悲劇が訪れる。
ジョージ伯爵と密通した令嬢が妊娠してしまった。
グラコート伯爵家は上を下への大騒ぎになる。
その中でポーラが責められてしまう。ポーラが専任侍女としての仕事をしっかりしてこなかったからと。
当主の下半身の醜聞は専任侍女の責任であると面と向かって罵倒される。
これだけ努力をしてもジョージ伯爵は自分に性的な行為をしてくれなかった。
ジョージ伯爵が自分に全く性的な魅力を感じていないのならばしょうがない。
しかしジョージ伯爵の視線からは自分に性的な魅力を感じているのが感じられる。
ただ、ジョージ伯爵の自制心がおかしいまでに強固なだけであった。
この件の後、ポーラは表情を表に出さなくなってしまった。
その半年後、ジョージ伯爵が暴漢の襲撃にあった。側には専任侍女であるポーラがいたが、ジョージ伯爵を身を挺して守る事は一切しなかった。
そして事切れるジョージ伯爵を見てポーラは破顔した。
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