主人公!?
ポーラとオリビアは俺より先に風呂を上がっていく。
スミレと二人になったところで俺は心のモヤモヤを吐き出した。
「なぁ、やっぱりおかしくないか? 何かポーラにも失礼だと思うんだよね。俺の心はスミレだけなんだよ?」
「知ってるわよ、でもありがとう。改めて言われると嬉しいわ」
「だから俺の愛情の全てはスミレに向けてるし、向けたいんだよ」
「別にジョージが私を愛していても、ジョージとポーラの間には関係ないでしょ」
「えっ、そうなの?」
「ジョージとポーラが仲良くする事によって、私とジョージの関係が変わるなら問題があるけど、そうならないのよね?」
「俺のスミレへの愛情は未来永劫変わらない自信、いや確信がある。でもスミレの笑顔が曇る可能性があるじゃないか」
「だから何度も言っているけど、私もジョージへの愛情は変わらないと確信しているの。当然、ジョージに向ける私の笑顔は曇らないわ」
「うーん……。そうは言っても……」
「やはりダンは凄いわよね」
なに!? やはりスミレはダンに惹かれてきているのか!
早く風呂から上がって、あの金髪悪魔を去勢せねば……。
「ジョージが高確率でなかなか納得しないだろうからって預かっているものがあるの。このような時に渡すように言われているわ。後で渡すわね」
なんだいつものダンの千里眼か……。寝取られるのかと思ったわ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
お風呂場から脱衣所に移動すると、ポーラとオリビアがバスタオルを持って俺を待ち構えていた。
まぁそうだよね……。
今までのポーラの専任侍女の仕事は俺の私用空間の掃除や食事時の給仕、俺の着る服を選んでくれたり、お茶を入れたりもしていた。
旧邸宅での生活習慣が既に出来上がっていたため、それを壊さないように配慮が為されていた。
しかし今日からはこの新邸宅での新しい生活だ。
上流貴族の当主に相応しい状態にしていくのだろう。
独身の同棲生活から、結婚して新居で生活した魔導団の先輩の話に似ているのか?
新婚6ヶ月の先輩は酔っ払って言っていた。
新生活では自分の領域をドンドン侵略される。抵抗するだけ無駄だ。所詮、初めから勝てる勝負じゃない。どうせ負けるのならば労力は少ない方が良い。無条件降伏こそが幸福に繋がると笑っていた。
先輩の忠告に従い、俺は軽く足を広げ、両腕を広げる。
ポーラとオリビアに身体を拭かれることを選択した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スミレから渡されたのは1冊の小説だった。
果たしてこれは何を意味するのか?
ダンが用意したものだから、きっと意味があるんだろうなぁ。
題名が【心からの笑顔】か……。スミレから向けられる笑顔を曇らせないように頑張っている俺に対して向いている小説なのかな?
小説を読み始めて驚いた。
主人公は没落しかけている男爵の三女。その三女が伯爵家当主の専任侍女になるところから始まる。
驚いたのはそこでは無い。主人公の名前がポーラなのである。
そして伯爵家当主の名前がジョージ・グラコート……。
こりゃどういう事だ!?
ダンにどういう事か確認に行こうと思ったが、既に数ページ小説を読んだあとだった。
傑作の小説は3ページほど読めばだいたいわかる。そしてこの小説は既に傑作の香りを醸し出していた。
俺はそのまま小説を読み続ける事にした。
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