始まる新邸宅での生活
新邸宅の玄関ホールでは皆んなが出迎えてくれた。
出迎えてくれた人を一人一人確認する。
ダン、エヴィー、茜師匠、ポーラ、オリビア、マリウス、ナタリー、サラ、バキの9人。
そして振り返り今日一緒にドラゴン討伐をした28人を見た。
俺を含めた38人がこのグラコート伯爵家の新邸宅で生活を共にしていく。
俺はダンに促され、皆の前に立つ。
「今日よりこの38人でこの新邸宅で生活をしていきます。この邸宅の家宰はマリウスです。邸宅内の事は全てマリウスに従ってください。またグラコート伯爵家の事は全てダンに話すようにお願いします。ここにいる皆んなは俺が愛する家族です。楽しくやっていきましょう」
少し軽い雰囲気で喋ったが、皆んなは温かく拍手をしてくれる。
あまり恵まれた環境で育っていない俺は心底この人達を大切にしようと心に決めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
新邸宅にはダンの執務室を作った。
その執務室にダンに呼ばれる。
「早速、今日からドラゴン討伐に精を出していただきありがとうございます。既に今日一日で268個の魔石を得ております。このペースだと30日間、休みを入れても45日で8,000個に到達するペースです」
「そんな感じなんだ。それはホッとしたよ。あとダンジョンで使える手押し車なんかあればもっと効率が良くなると思うんだけど」
「たぶんそうだろうと思って手配済みです。急ぎの仕事で頼みましたので、明朝には納品される予定です」
相変わらず先を見透して仕事しているなぁ。これがダンの普通か。もう驚かんわ。
「手押し車の四隅に4つ、その上に1つ乗ります。リュクサックで1つ運べますから1人で6個運べますね」
「6個!? そりゃとんでも無い量になるね。えっと27人だとえっと……」
「162個ですね。今日聞いたジョージ様の討伐速度が1時間で24個、スミレ様が12個です。4時間30分で162個になります。運搬の護衛のスミレ様はさすがにドラゴンの魔石を運ばない方がよろしいかと。1日に2回は回せますから324個。2回目はジョージ様もおられますのでスミレ様と2人で3個は運べます。327個でエクス帝国に9個納品して318個。少なく見積もっても1日300個はいけそうです」
「あら、そんなもんしか増えないか」
「そうですね。でも親衛隊のレベルが上がれば運搬の護衛をジョージ様やスミレ様がやらなくて済むようになります。そうすればもっと増えますね」
「まぁおいおいだよね。効率を追い過ぎると危険も増すからさ。やっぱり安全第一だよ。あとは親衛隊のレベルか……。当たり前だけど以前決めていたレベル制限は親衛隊には撤廃だね」
「それでよろしいかと。縛鎖荊を受け入れたポーラとオリビアもですね」
「まぁそうなるよね。縛鎖荊をかけた時に無理あったら解除すれば良いと軽く考えたけど、そうもいかないか……」
「突き抜けた戦闘力を持った人はなるべく少なくしたいですね。これは安全保障上しょうがありません」
ポーラやオリビア、親衛隊のメンバーがおかしな事をするとは思っていないが、不確定要素は避けるのが基本か。
「そういえばエヴィーはどんな感じ?」
「問題無いですね。素直に私とお勉強に励んでいますよ。高等学校に通うのにも興味をもっていますから。今日は制服の採寸を済ませました」
「あんな爆弾娘の相手は大変じゃない?」
「それこそ問題ありませんね。彼女はとても聡明で純粋な女性ですよ。純粋過ぎるから世の中力が全てと思っているんです。そしてそれは概ね正しい。しかし聡明ですから、この人間社会ではそれ以外も大切と理解しました。あとはこの社会の常識を理解し、実践するだけです」
ダンにかかればエヴィーすらおとなしくなるのか……。
「そんなものか? まぁエヴィーについてはポーラやダンに任せるよ」
「お任せください。それではジョージ様はゆっくりとお風呂にでも入ってください。この新邸宅の大浴場は素晴らしいの言葉しかありませんから」
そういえば源泉掛け流しの風呂だったな。
「早速入ってみるよ。そういえば気になっていたんだけど、なんでダンは俺の縛鎖荊を受けなかったの? 真っ先に受けると思っていたんだけど?」
「そりゃ受けたいですよ。でもそれを受け入れるとジョージ様の希望に添えないかと思いまして」
「俺の希望?」
「はい、私はジョージ様に雇われております。ここには明確な上下関係が存在します。しかし|畏《
おそ》れ多くもジョージ様は私と親友のような関係も望んでおります。努力はしておりますが今ですらなかなか親友のような関係にはなりにくいのです。これでジョージ様の縛鎖荊を受けるとより一層上下関係の強化に繋がりますから辞退させていただいております」
あぁ、本当にダンは良い奴だよ……。
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