ダンの言葉遊び
夕食を終えるとダンが俺とスミレに話があると言ってきたので、俺の部屋で話し合う事にした。
まずはダンからスミレにエルバト共和国との契約について報告をする。
8月にエルバト共和国に行く件でスミレが声を上げた。
「素晴らしい提案ですね。今からワクワクします」
ダンが殊勝な態度で言葉を発する。
「しかしそれまでにドラゴンの魔石を最低4,000個必要になってしまいました。一時の感情でこのようになってしまい申し訳ございませんでした」
「何を言っているの。グラコート伯爵家を侮った相手には目にものを見せるのが我が家の家訓です。誉めこそすれ、叱責などするわけがないです。ダン、本当に素晴らしい提案です。ジョージがダンに約束したように8月に8,000個のドラゴンの魔石を納品しましょう」
スミレの言葉に頭を下げるダン。
「誠にありがとうございます。スミレ様にもご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。それと先程ジョージ様より相談事がございまして」
え、その話をこの場でするの!?
「夫婦の夜の営みに口を出すのは無粋ではございますが、当主の場合は家が傾く要因になり得ます。取り返しがつかなくなる前に、しっかりと対策を講じましょう」
ダンはそう言ってスミレに先程の俺の相談内容を懇切丁寧に説明をした。
俺は恥ずかしくて穴に入りたい気持ちになってしまう。
「呆れた……。それじゃジョージは自分に誓った事に囚われているの?」
あぁ、スミレに呆れられてしまったよ……。捨てられたらダンを膾斬りにしてやるからな。
「そうですね。自粛自戒も過ぎれば自縄自縛になります。そしてジョージ様は我慢を重ねて俺は凄いと自画自賛しています。こうなったのも自業自得ですよ。しかしほっとくと自暴自棄になりそうです」
うん? 言葉遊びしとらん?
「ふふふ、それで?」
スミレが軽やかに笑いながらダンに先を促す。
「ジョージ様は自分自身に誓った内容で自己暗示にかかっております。そしてそれが自己陶酔を生じさせています。自己満足も甚だしいです。私としてはもっと自己中心になってくれれば楽なのですが」
やっぱり遊んでいる! 人が真剣に悩んでいるのに!
「ジョージ、ダンはわざとやっているのよ。気楽に考えましょうってことね。真剣を通り越して深刻になっているジョージへの優しさよ」
スミレの言葉にはたと気付いてしまった。
確かに深刻になっていたか……。
「ジョージ、もういい加減安心して。私は既に貴方の虜なの。貴方が何をしようと私の心は変わらないわ。生涯愛し続けるから覚悟しておいて」
スミレの言葉に頭が痺れてしまった……。
【生涯愛し続けるから覚悟しておいて】
間違いなく俺の人生でかけられた最高の言葉だ……。
何度でも脳内で再生を繰り返してしまう……。
「ジョージは呆けているからほっとくとして、ダンはどうすれば良いとおもっているの?」
「簡単ですよ。元来、男はハンターですから。男性には狩猟脳が存在しています。それを思い出させるだけですね。そうすればスミレ様がジョージ様に言ったように下半身で考えるようになりますよ」
スミレの言葉を何度も脳内で再生を繰り返していた俺は、この後のスミレとダンの会話は覚えていなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ジョージ!」
スミレの俺を呼ぶ声が脳内再生を強制終了させた。
「いつまで呆けているの? 明日からドラゴンの魔石を大量に得ないとダメなのよ。それに明日からは新邸宅で過ごす事になるの。いろいろと忙しいから早く寝るわよ」
先程まで俺の脳内で甘い言葉をかけていたスミレ……。
ちょっと厳しい目の言葉に一瞬で現実に戻る事ができた。
「あれ? ダンは?」
「もうとっくに自室に帰ったわよ。あ、ジョージに確認しておくわね」
「うん?」
「あくまでもジョージが性的な処理をして良いのは貴方の専任侍女だけよ。それ以外は醜聞に繋がるし、問題も発生する可能性もあるから注意して」
スミレの中で俺が専任侍女で性的な処理をする事は既に確定しているのか……。
「市井で抱きたい女性がいた場合はキチンと手続きするからダンに言ってくれれば良いわ。一時金で済ますのか専任侍女にするのか話し合うから」
俺はどんな性獣と思われているんだろう……。
「あとは貴族令嬢ね。できれば既婚者は避けて欲しいわ。無用の恨みを買う場合があるから。未婚者であれば下級貴族なら大概問題無いけど、上級貴族の場合は調整に手間取る可能性があるから時間がかかるかも。できれば敵対派閥は避けて欲しいけど、どうしてもと言う場合は何とかします」
何とかするんだ……。
「あれ? でも先程性的関係を持って良いのは専任侍女だけって言ってたよね。上級貴族の令嬢だと俺の専任侍女にするのは問題あるよね?」
「だからその場合は側室ね。その調整にどうしても時間がかかるわ」
「側室!? それはダメだよ。俺はスミレ以外と婚姻関係を結びたくない」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。それなら上級貴族の令嬢は避けてもらうのが良いかな。気持ちが変わったらいつでも言ってね」
そう言いながらにこやかな笑顔を見せるスミレ。
俺は外堀がどんどん埋められているような感覚を覚えてしまった……。
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