侮りには……
ダンとジェシカが別室に移動し、客室には俺とラバルさんが残った。
「ラバルさん、お疲れ様でした。交渉が纏まって安心しました」
「いやぁ面目無い。さすがにジョージさんの提案が予想を超えておりまして焦りましたよ。ジェシカ大臣がいてくれて助かりました」
「本当にあの方が大臣なんですか? とてもお若いように感じましたが」
「間違いなく我がエルバト共和国の大臣ですね。類稀な事務能力と発想力、そして圧倒的な行動力で文官機構の改革を数年で成し遂げた逸材です。前回の国政選挙でトップ当選を果たした大人気の政治家ですよ。以前は私が上司だったんですけどね」
「凄い方なんですね。それでミランダさんの方は……」
「先程は本当に失礼いたしました。どうしてもジョージさんに会いたいと駄々をこねられまして……。凄いと噂される魔術師の話を聞くとミランダは自分の方が上と証明したいのですよ。ミランダはエルバト共和国最高の魔術師のため拒否できませんでした。先日グラコート伯爵邸を訪ねた時はミランダには内緒にしていたんです。ジェシカにミランダの世話を頼んでね。それがバレてしまい、今日は必ず行くと言って、ミランダは昨晩からずっと私にくっついてましたよ」
「先程ミランダさんは私と手合わせがしたいと言ってましたが? 剣技なら模擬刀がありますが魔法の手合わせだと生命の危険性がありますよ」
「ミランダは妹のジェシカとは分野の違う天才なのです。齢15歳でエルバト共和国の魔導師のトップになりました。彼女は豪語しています。自分より優れた魔術師はこの世にいないと。増長しているところがありますので困っております。確かに魔法の手合わせだと決闘になってしまいます。ジョージさんにお願いしたいのは腕試しですね」
「腕試し?」
「せっかくなのでミランダにドラゴン討伐を見せてあげてくれませんか? そうすればジョージ様との格の違いを実感するでしょう」
うーん。この提案はどうするべきか? 他国の魔術師に見せて良いのか? これはエクス帝国の機密のような……。でもロード王国の人にはオーガ討伐だけど簡単に見せていたよな。
それに何か罠のようにと感じるな。修練のダンジョンの情報収集のような気もする。
「私個人で判断がつきませんね。でもミランダに格の違いを見せるなんて簡単ですよ」
「えっと……。それはどういう意味でしょうか?」
「まぁ魔術師としてのミランダの鼻をへし折ってあげれば良いんですよね。任せておいてください」
俺は迷わずスミレを呼んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺に言われたスミレは別室で寛いでいたミランダに魔力の威圧をかけに行った。
優秀な魔術師ほど、その威圧は効くだろうな。心の傷にならなければ良いけどね。
ミランダの様子を見て慌てていたラバルさんだけど、あくまでもこちらは希望に応えただけだ。
グラコート伯爵家に変な画策をすると痛い目を見ると理解してもらえると嬉しいな。
ラバルさんは震えるミランダを抱えて先に帰っていった。
そうこうしているとダンとジェシカの細かい打ち合わせが終了し契約書が作成された。
「この度はありがとうございました」
ジェシカ・バースが右手を差し出してきた。
「いやこちらこそ良い取り引きができたと思います」
俺はジェシカの右手を握る。
「そう言っていただけて嬉しいですね。もし時間的な余裕がごさいましたら一度エルバト共和国にお越しください。国をあげて歓待させていただきます」
うん? 含みのある言い方だな。
横からダンが口を挟んだ。
「それも良いですね。エルバト共和国の行楽の時期は8月ですか。その時に一ヶ月くらい滞在しましょう。私もゆっくりと休みたい気分です」
「本気で仰っているんですか?」
「本気ですよ。せっかくなのでその時に年間取り引きの半量である4,000個のドラゴンの魔石を納品しましょう。これから長い付き合いになりますし、今回だけはその輸送費はこちら持ちにしますか」
「……。了解いたしました。それでは8月にお待ちしております」
「ぜひそれまでに邸宅の修繕を済ませておいてください。我が主ジョージ様が使われるのですから」
ダンのジェシカを見る冷たい目が怖く感じたよ……。
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