スミレのお願い
スミレから話があると言われ夕食後に自室で話す事にした。
俺の目の前に座るスミレは真剣な顔をしている。完全に真面目100%モードのスミレだ。高校生時代の優等生だった頃のスミレを思いだされる。劣等生だった俺はどうしても萎縮してしまう。
「どうしたんだ? 話があるって言っていたけど……」
「午後にポーラとオリビアと外で会ってね。それで3人でお茶をしたの。そこで2人がジョージから縛鎖荊を受けたって」
あ、スミレに報告してなかった……。流石にそれはマズイ。
「ごめん! スミレの了解を得てなかったね。修練のダンジョンの人数制限が無くなる可能性が高かったからダンの提案をすぐに受け入れてしまったよ。確かに縛鎖荊で女性を縛るのはスミレからしたら忌避感が生じるよね」
「そうじゃないわ。ダンの判断は間違ってない。私が判断してもそうなるから。それくらい修練のダンジョンはグラコート伯爵家にとって重要よ」
怒ってないのか? それじゃ何の話だ?
「ポーラがね、とても幸せそうな顔をしていたの。修練のダンジョンに入っても少しでもジョージの足手纏いにならないように訓練するって。私にも指導してほしいって言っていたわ」
ポーラが修練のダンジョンに入る必要性は薄いけど、本人がやりたいのなら止める必要は無いか。
「それで私から提案があるの。いやお願いかな。ポーラに上級貴族の専任侍女の役割りを全うさせてほしいの」
「えっと……。それって……」
「直接的に言えばジョージにポーラを抱いて欲しいって言っているのよ」
「む、無茶苦茶だよ……。スミレ! 君は俺の奥さんだよ! どこの奥さんが旦那に他の女性を抱けってお願いするの!」
「どこの奥さんって、ここの奥さんがするのよ。それが私の願いなの」
「だってスミレは俺が他の女性とそう言う事をするのを嫌がるんじゃないの? 以前のハイドンの夜の街やロード王国のパトリシア王女との婚姻話で悲しそうな顔をしていたじゃん」
「確かにあの当時は嫌だったわ。でも嫌になる原因がわかって、それが解消されたの」
「原因? 解消?」
「去年、ジョージがザラス皇帝からドラゴン討伐を命じられた時、私をパートナーに選んでくれたわよね。あの頃から私は必死にジョージに付いていった……。でもいつもジョージはいつも私の先を行っていたわ」
「そんなつもりはさらさらないよ。スミレと2人で歩んできたつもりだけど……」
「これはジョージじゃなくて私の問題なの。ジョージと一緒にいると劣等感を抱いてしまうのよ」
劣等感の塊の俺に劣等感を抱くなんてあり得るのか!?
「ジョージに愛されているのは感じる。それに疑問を挟む余地はないわ。でも私の心の奥底でいつかジョージに愛想を尽かされるのでは無いかと不安なの」
目を伏せたスミレの睫毛が細かく震えていた。
「他の女性を知れば私に愛想を尽かしそうで……。それでロード王国のパトリシア王女との婚姻の話の時は精神的に不安定になったわ」
「それじゃ俺が他の女性と性的な関係を持つ事が嫌じゃなくて、俺がスミレに愛想を尽かす事が不安だったって事? そしてその不安が解消したって事なの?」
「昨日、魔力ソナーの有効距離が200mを越えたわ。ジョージのようにはいかないけど、凡人の私でも頑張れば英雄の隣に立つ事ができると確信したの。これからも一歩一歩だけどジョージに近づけるように努力していく。ジョージの横に並び立てるのは私以外いないし、そこは誰にも譲らないわ」
毅然と宣言するスミレから強固な決意を感じる。
「エルフの里への遠征でジョージは誰とも性的な関係を持たなかったでしょ。それが凄い嬉しくて」
「やっぱり俺が他の女性と性的な関係を持つのが嫌なんじゃん」
「そうじゃないの。私から見てもジョージは相当エッチな男性ね。いろんな女性と性的な関係を持ちたがっているわ。そんなジョージが私との関係がおかしくなるのなら他の女性と性的な関係を持たなかった事が嬉しいの。でももうそんな我慢はしなくて大丈夫よ」
これは地雷ではないのか?
このスミレのお願いを受け入れた瞬間に「馬脚を表したわね!」って捨てられないか?
「いや、それでもそのお願いは聞けないよ。実際にポーラと性的関係を持ってみたらやっぱり嫌でしたってなるかもしれないじゃん」
「ジョージは私に貴方の子を産んで欲しいんでしょ?」
「当たり前だよ。その為に苦労してエルフの里にいったんだから」
「それならやっぱりポーラと性的な関係を持たないとダメね。妊娠中は私一人ではジョージの性的な希望に応える自信がないわ。胎児に影響が出るのが怖いから。我慢を続けたジョージがエルフの里から帰還した時のようになるのが目に見えているわ」
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