軽やかな話術は詐欺師の香り
「ず、ずるいのじゃ! 我に放った縛鎖荊と違うではないか! ずるい! ずるい! ずるい!」
エヴィーが騒ぎ始めてしまった。
面倒なので放っておこう。
「なんかちょっと予定と違っていたけど、縛鎖荊が上手くかかっているか確認したいから皆んなで修練のダンジョンに行こうか」
「承知致しました! 早急に準備をしてまいります!」
シーファが元気良く返事をした。
そしてエルフ達に声をかける。
「ジョージ様より指令が発動された! 迅速に戦闘服に着替えて戻ってこい!」
「「「「「応!」」」」」
シーファの声に即座に反応し、動き出すエルフ達。さすが元軍人の集団だな。
でも戦闘服まで着なくても……。修練のダンジョンの人数制限に引っかからないか確かめるだけなんだけど。ちょっと入って終わる予定だったんだが、今更そんな事を言える雰囲気じゃ無くなってしまったよ。
大ホールに残ったのはポーラとオリビアとダン、そして拗ねているエヴィーだ。
あまり拗ねられるとそれはそれで面倒だな。
俺がエヴィーに声をかけようとしたら、ダンが目線を送ってきて俺を止めた。
そしてダンはエヴィーに声をかける。
「エンヴァラさん、別にずるくはないですよ。反対にエンヴァラさん1人だけが違う縛鎖荊じゃないですか。ジョージ様に特別扱いされているのはエンヴァラさんです」
「ふん! 何が特別扱いじゃ! そんなわけあるわけないわ!」
「そうでしょうか? エンヴァラさんはジョージ様の最初の縛鎖荊を受けたのですよ。ジョージ様の初めてをいただいております」
ダンが口が上手いのは知っているけど、いくらなんでもそんな女性の初めてをいただいたようなニュアンスで言っても意味ないだろ?
「ご主人様の初めて……」
うん?
「そうです。これは未来永劫語り継がれる事になるジョージ様の英雄譚の中で燦然と輝く歴史的な事実となるでしょう。私にとってはエンヴァラ様が羨ましくて仕方ありませんね」
「燦然と輝く……」
あれ?
「それにエンヴァラさんはジョージ様と戦闘をなされたのですよね? その行為には容易に膝を折らないエンヴァラ様の高潔さを感じられます。それが例え神に等しいジョージ様であろうとも」
「高潔さ……」
おいおい!
「その戦闘の結果としてのエンヴァラ様を縛っているのが今の縛鎖荊です。唯一無二の縛鎖荊ではありませんか」
「唯一無二……」
…………。
「エンヴァラ様はジョージ様の筆頭下婢です。これは動かし難い事実ですよ。これからも筆頭下婢としてジョージ様を支えていきましょう」
「おぉ! そうじゃな! 我はジョージ様の筆頭下婢じゃ!」
まるで詐欺師だよ……。拗ねていたエヴィーがあっさりと機嫌を直しているわ……。
「それではそろそろ人間の社会の常識を知るお勉強を始めましょうか。エンヴァラさんがエクス帝国高等学校に入学するまでに時間がありませんから」
「お主が前から言っていた学校というものじゃな。本当にそれはご主人様のためになるのか?」
「もちろんです。エンヴァラ様が高等学校に通うことは我が主ジョージ様の希望です」
「ジョージ様が喜ぶなら頑張らないといけないな。よし! 早速人間の社会について勉強するか」
「それでは僭越ながら私が講師を務めさせていただきます。それでは私の執務室にいきましょうか。美味しいお菓子もありますよ」
「おぉ! お主はわかっておるな! それにしてもお主は人間のくせにできるのぉ。褒美じゃ、我が名前を覚えてやろう」
「ダンと申します。平民のため氏はありません」
「なんと、お主ほどの者が平民とな! なるほど、人間の社会はなんとも摩訶不思議じゃ」
ダンは首を捻るエヴィーを連れて大ホールを出ていった。
ダンにかかればエヴィーの扱いも簡単なんだな……。
そうこうしている間に戦闘服に身を包んだエルフ達が戻ってきた。
よし! それでは修練のダンジョンに行ってみるか。
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