大いなる愛情
新邸宅の自室に戻り一息ついているとダンに呼ばれた。呼ばれていないエヴィーも俺の後ろに付いてきた。
それにしても相変わらずダンは仕事が早いなぁ。
新邸宅の大ホールに移動するとシルファを含むエルフが27人整列していた。
そしてポーラとオリビアの親子も並んでいる。
「ここにいる29名がジョージ様の縛鎖荊に縛られる事を望んでおります」
ポーラとオリビアも!?
俺はポーラとオリビアに話しかける。
「えっと……。二人とも本気なの? 縛鎖荊は脳と心臓を俺の魔力の蔓で縛るんだよ」
ポーラが潤んだ眼を俺に向ける。
「存じております。縛鎖荊は私の行動でジョージ様が不快な気持ちになると、魔力の蔓を通して苦痛を与えられる。そして私の行動でジョージ様が喜んでいただけると、蔓を通して喜びが与えられるんですよね。考えられる中で最高の魔法じゃないですか。それにエヴィーに聞きましたが、ジョージ様に包まれている感覚があると言ってました。早く私を縛ってください」
いつの間にか両手で俺の右手を握り、上目遣いで懇願するポーラ。
色気が溢れ過ぎている女性から縛ってくださいと言われると性的な倒錯した感情を覚えてしまう……。
あれ? でも縛鎖荊を使うのは修練のダンジョンの人数制限を無くすためだよな? ポーラには関係無いような。
「まさかポーラも修練のダンジョンに入るつもり?」
「当然です。私はジョージ様の筆頭専任侍女ですから。どこであろうとジョージ様のお世話をさせていただきます」
あっさりと肯定されてしまったよ。
「私は母親だけにさせるのは心配なんだ。それにジョージ様に抱いてもらえないのなら、せめて魔力で抱いてもらおうと思ってな」
オリビアの口から迷言が飛び出した。本人は名言と思っているようだが……。
まぁ不都合が生じれば解除すれば良いよな。
「了解、わかったよ。でも嫌になったらすぐに解除するから安心してくれ」
そして俺はエルフ達に顔を向ける。エルフ達の顔は完全に上気していた。
シーファが列から一歩前に出る。
「ジョージ様の縛鎖荊に縛られる栄誉を与えてくださりありがとうございます。飼っていただけるだけじゃなく、ジョージ様自らの魔力で縛っていただけるなんてこれ以上の幸せはありません。是非よろしくお願いします」
うん、君達エルフはそう言うだろうとわかっていたよ。まぁこちらも問題があれば解除すれば良いよね。
なるようになるよな。
俺は列から少し距離を取り、並んでいる面々を一人一人確認する。
改めて見ると美女だらけだな……。
ポーラとオリビアもエルフと並んでも遜色が無い。
こんな美女軍団を縛鎖荊で従えるなんて普通に考えれば男性冥利に尽きる話なんだろうな。
俺みたいな男に人生を預けるなんて本当にありがたい事だよ……。
ポーラとオリビアには過去の経緯を考えれば是非幸せになって欲しい。
そしてエルフ達は毎回俺と顔を合わすと花が咲くような笑顔を俺に向けて見せてくれる。そんな事が続けば情が湧くのが自然な反応だ。
しかしポーラにしろエルフにしろ、周りの状況に流されるままに今の状況になっている。
ポーラの時は告白を断ろうとしたところ、ダンに止められ俺の専任侍女になった。
エルフ達は押しかけ愛玩エルフだったが、ダンから飼うことを譲歩するように説得された。
ダンの説明には納得している。しかし俺の心は受け身のままだった。
しかし縛鎖荊で縛る行為は俺に取っては能動的な行為になる。俺の意志で縛鎖荊を唱え、ポーラやエルフ達を縛るのだから……。
いや縛るって考えがいけないんじゃないか?
そうだ、絆だよ。グラコート伯爵家としての家族の絆を結ぶんだ。
俺は意を決してゆっくりと詠唱を始める。感謝の心を込めて……。
【生命の根源、心を縛り愛と苦しみを与える荊となれ、縛鎖荊!】
1人に2本ずつ、眉間と左胸に真っ赤な棘の生えてない蔓が伸びて行き刺さった。
あれ? エヴィーの時と違って棘の無いただの蔓だったな……。もしかして失敗しちゃった?
「なぬ!? 魔法改変!? 馬鹿な! 縛鎖荊でそれをおこなえるのか!」
何かエヴィーが驚いている……。
俺、やっちゃったかな……。
あ、危ない!
ポーラとオリビアが膝から崩れ落ちそうになるが、間一髪支える事ができた。
「ありがとうございます。こんなに愛情を注いでいただけるなんて……。どうやってもジョージ様にお返しできそうもないのが心苦しいです」
ポーラは涙をとめどなく流している。
「ジョージ様は凄いな。こんなに大きな男だったなんて……。この愛情はきっと父親から受ける類いの愛情なんだろう……。ここまで心に沁みる愛情は初めて受けたよ」
オリビアの眼からも涙が溢れている。
周りのエルフ達も崩れ落ちていないが、全員涙を流していた。
こりゃ、やっぱりやっちゃったな。
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