ダンジョンの起源
ポーラにお茶を頼み、ゆっくりとエヴィーから話を聞くことにした。
「今はダンジョンと言われているようじゃが、それは元々劣化エルフの鍛錬のために精霊王と始祖エルフ達が作ったものじゃな」
劣化エルフって……。相変わらずエヴィーは変わらないなぁ。
ダンジョンが精霊王と始祖エルフ達が作った? 本当かよ。
「生命属性魔法の究極魔法である【生命創造】。それをエネルギーを放出する龍穴の力を利用して半永久的に魔法の効力を維持しているのじゃ。ダンジョンではいくらでも魔物が湧いているんじゃないか? その魔物を倒せばエネルギーの塊に変わるんじゃないか?」
「そうだけど、それは本当の話か? 知らない事ばかりなんだけど」
「我が嘘を言ってどうする? どうせならご主人様に【王の階梯】を制覇してもらいエルフ王の証を手に入れて欲しいのじゃ」
「エルフ王の証?」
「そうじゃ、それを手にすれば真のエルフ王になれる」
「いや俺はエルフじゃないし、エルフ王になるつもりも無い。間に合っているんだけど……」
「なんじゃ、夢が無いのぉ……。全てのエルフを従える証なのに……。あ、【王の階梯】を制覇すれば精霊王の幹部であるシルフ様の祝福をいただけるぞ!」
シルフ様と言われても良く知らんわ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エヴィーの話を纏めると次のとおりだ。
代を重ね、精霊の割り合いが少なくなったエルフ達。いつしか不老でなくなり、精霊界に身体を移動させることもできなくなった。
そしていつの時代も発生するエルフ狩り。精霊界に身体を移動できなくなったエルフ達は人間の数の暴力によりみるみると人数を減らしていった。
それを憂いた始祖エルフ達が精霊王に頼み作り出したのが鍛錬場だ。
大地のエネルギーの通り道が龍脈。そのエネルギーが溜まる場所が龍穴である。
龍穴の尽きる事の無いエネルギーを利用し、生命属性魔法の究極魔法である【生命創造】を半永久的に発動させる。
龍穴から溢れ出るエネルギーを魔物に変換し、それを討伐する事でそのエネルギーを肉体に獲得する。人外の存在である精霊王だからこそ可能とした修練システムだ。
数百年はこの修練システムは上手く機能する。エルフ達は修練システムで強くなり、人間に狩られなくなった。そしていつしか反対に人間を支配するようまでになった。
しかし人間を支配しながらも、エルフは種を紡ぐためにはハイエルフに従わなければならない。
一部のエルフはその状況に耐え難い屈辱を感じていた。鬱屈とした感情が最高潮に煮詰まった状態で最大な好機が訪れてしまった。
王者の魔法である縛鎖荊がエルフの王になる為の条件である。しかし代を重ねるにつれ、ハイエルフの王族でも縛鎖荊を使える者がいなくなっていた。
数世代、縛鎖荊を使えない王が続いていた。縛鎖荊が使えない王は正統性が欠けている。また縛鎖荊にはそれ自体に政敵を押さえつける直接的な力があった。
縛鎖荊が使えない王の治世では権力争いが熾烈を極めるようになっていた。
そのような状況で齢10歳の女の子が縛鎖荊を発動させてしまった。その女の子がエヴィーである。
権力争いに負けていた勢力はエヴィーの存在に色めきだった。エヴィーを取り込み、時のエルフ王であったオーガスタ・ウィンミルに退位を迫った。
抵抗を試みたオーガスタ・ウィンミルであったが、王の正統性はエヴィーにあった。程なくしてエヴィーに王位を譲る事になる。
権力の移行がされる時、どうしても大きな隙ができる。その隙をついたのがハイエルフに対して鬱屈した想いを持っていたエルフ達であった。
エルフ達は巧妙に精霊王を騙し、ハイエルフを殺せる御霊斬りを作らせる。
また権力争いに負けたオーガスタ・ウィンミルを唆し、エヴィーを世界樹に仕立て上げた。
その後は御霊斬りでハイエルフを殺し始める。皮肉にもオーガスタ・ウィンミルはこのハイエルフ狩りで命を散らした。
この状況を知った精霊王は激怒した。精霊王である自分を謀るなんて……。
しかしエルフは精霊の子供達でもある愛すべき存在だ。
精霊王は悩んだ末、エルフしか入れなかった修練場を全ての種族に解放する事にした。
エルフへの直接的な祝福をやめる選択だ。
そしてその修練場は現在はダンジョンと呼ばれるようになった。
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