震えるエヴィー
エクス帝国魔導団の本部を辞し、シーファとそのまま新グラコート伯爵邸に向かった。
エヴィーの状態を確認する為だ。
エヴィーはポーラの部屋のベッドで布団を被って震えていた。
「エヴィー、大丈夫か?」
俺の呼び掛けにエヴィーは被っていた布団を放り投げ、一目散に俺に飛び付いてきた。
「ご主人様! た、助けてくれ! いや助けてください!」
エヴィーは俺の腰に手を回し力いっぱいしがみついてくる。
「おい、落ち着け。いくらでも助けてやるから取り敢えず離れろ」
「いやじゃ! 怖いのじゃ! ご主人様から離れたくないのじゃ!」
「スミレに突っかかったって聞いたけど?」
エヴィーの身体が強張った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
こりゃ完全に心の傷になっているような……。
これからエヴィーには情操教育をするんじゃなかったかな? 大丈夫だろうか?
それにしてもエヴィーがこんなに怖がるなんてどうしてだ? 確かにスミレの魔力量は規格外だろうが、スミレにエヴィーを攻撃する手段が無いだろ?
「何でそんなにスミレを恐れている? エヴィーは精霊界に身体を移動できるんだろ。何人も我の身体に触れる事はできんと豪語してたじゃないか」
「あの刀じゃ……。あれは御霊斬り……。精霊王が鍛造した一振じゃ。例え精霊界に身体を移動させても容易に斬られてしまう」
「スミレの愛刀の【雪花】か? 御霊斬りなんておどろおどろしい物じゃないだろ。ましてや精霊王が鍛えた刀なんて信じられない」
「我が間違えるわけがないわ! あれは間違い無く御霊斬りじゃ! あの女の魔力に反応して【りんりんりん】と鳴いておったぞ! あんな音を発する刀は御霊斬り以外にありえんわ!」
よくわからんが俺以外にエヴィーを抑えられる人ができたのは良い事かな。
「まぁこれに懲りてスミレに歯向かうのはやめるんだな」
「ご主人様に言われなくてもそうするわ! 我は自殺志願者じゃないぞ。それでお願いがあるのじゃが……」
急にしおらしくなるエヴィー。まぁそのお願いは何と無くわかるけど。
「あの女……、いやスミレ様にご主人様から我に危害を加えないように言い聞かせて欲しいのじゃ。このままだと夜も安心して眠れない」
「まぁスミレに話すのは良いけど、エヴィーはスミレに何をしたんだ?」
口を噤むエヴィー。俺の後ろからシーファが声を上げる。
「スミレ様に『虫ケラの分際でご主人様の番とは片腹痛いわ。早急に身を引け!』って言ったんですよ」
横に顔を向けて押し黙っているエヴィー。
全くコイツは爆弾娘だな。歩く火薬庫だよ……。
「エヴィー、今回だけだからな。まずは人間を虫ケラと思うのを止めるんだ」
「ご主人様は許してくれるのか?」
俺にしがみつきながら上目遣いをするエヴィー。
取り敢えず念押しは必要だな。
俺はルードさん直伝の貴族の仮面を被る。
「今回だけだ。次は無いからな。シーファにも言っているが、俺とスミレの仲を引き裂こうとする奴は誰であろうと許さない」
エヴィーは俺の低い声に慌て出す。
「わ、わかった、あ、いやわかりました。今後一切ご主人様とスミレ様の仲を引き裂こうとはしないのじゃ!」
やっと俺の身体から離れたエヴィー。
やれやれだよ。これでエクス帝国高等学校に通い出したらどうなるんだろ? 毎日俺は保護者として先生に呼び出しをくらいそうだ。
俺がこの先の事に不安を感じていると、思い出したようにエヴィーが口を開いた。
「あ、そうだ、失念しておったわ。ご主人様はダンジョンと呼ばれるところで魔石を得ていると聞いたのじゃが?」
「修練のダンジョンの事かな? ドラゴンの魔石やオーガの魔石を得ているよ」
「その修練のダンジョンだが、我に心当たりがあるんじゃ。たぶんそれは精霊王と始祖エルフ達が作った【王の階梯】じゃ。二人しか入れないんだろ? 我もエルフ王になる前に一度入っておるわ」
【王の階梯】? なんじゃそら?
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