新邸宅
外に出るとグラコート伯爵邸の門の前に人集りができている。
何事なんだ!?
「ちっ! 男かよ! 本当に女神がいるのかよ。ガセじゃないのか」
「いやマジでいるみたいだぞ。二日前に数十人の女性のエルフを従えて女神がグラコート伯爵邸に入っていくのを見た奴がいるんだ。その後は出ていってないみたいだぞ」
群衆の声が聞こえてきた。
外に出ただけで残念がられて舌打ちされるなんて、今日はとんだ厄日だな。
それにしてもこれってエヴィーとシーファ達の事を言っているのか?
「ドラゴン伯爵じゃないですか! 女神を連れ帰ってきたって本当ですか! それに大勢の女性のエルフはどうしたんですか!」
群衆の一人が大声で話しかけてきた。
うーん、面倒だな。それに屋敷の前で目障りだよ。
「女神じゃないよ。あとエルフの集団は俺の専任侍女になるみたい。わかったら解散してくれ。俺が用事を済ませて戻ってきても、まだ集まっていたら強制排除するからそのつもりで」
群衆から不満の声や非難の声が上がるが俺は無視して騎士団本部に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
勝手知ったる騎士団長室。
部屋の主のライバーさんはお手洗いに行っていることは魔力ソナーでわかっている。
全くプレッシャーを感じない重厚なドアを開け、ライバーさんの椅子に踏ん反り返ったところで部屋の主が戻ってきた。
「これはこれはライバー様、この度は本当に失礼いたしました」
「それが謝罪をしている者の態度か?」
「こんな立派な椅子に座った事がなかったので、つい座っちゃいました」
「踏ん反り変える必要はないけどな。それより頼むからもう団員を脅さないでくれよ。関所に勤めている団員が怯えていたぞ」
「あーすいません。ちょっと記憶に無いんですよね。性的に我慢し過ぎてしまったみたいで……」
「おいおい、欲求不満が原因で関所破りは止めてくれよ。今回は大目に見るが、次にやったら数日は臭い飯を食べてもらうからな」
「肝に銘じておきます。俺に肝があればですけどね。そんな事よりギュンターさんとボードさんをお貸しいただきありがとうございました。お二人はエルフの里で軟禁されたりして大変だったと思います」
「それだよ、それ! それで困っているんだよ」
それそれそれ! それで困っている?
あーそれそれ!
どんなそれなの?
「二人とも騎士団の退団を考えていてな。理由を聞いたらエルフの女性をずっと見ていたせいか、帝都にいる女性に魅力を全く感じなくなったって言うんだ。是が非でもエルフの女性と結ばれたいってな。その為にはなんとかしてグラコート家の家臣団に入ってみせるって二人とも息巻いているぞ」
ギュンターさんもボードさんもエクス帝国騎士団のエリートだよな。そんな人達がグラコート家臣団に入ったらライバーさんに絶対恨まれるよな。
「そんなの無理ですよ。ウチの家臣団は女性限定です。どうしても入りたいのなら去勢するように伝えてください」
「去勢って本気か……。あれ? 確かダンがグラコート家臣団の筆頭なんだよな。まさかダンは……」
「ご想像にお任せします。それでは忙しいので失礼しますね。もうこれから我慢はほどほどにします」
俺は唖然とするライバーさんに帰りの挨拶をして騎士団長室をあとにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
まずは前科者にならなくて良かったよ……。子供ができたとして、子供に前科者と知られたら困るもんな。
どれ、新グラコート伯爵邸を見に行くか。
俺は逸る心を抑えながら新しい邸宅のある帝都の東門の方に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
これは凄い……。凄い以外の言葉が思い付かない。
帝都で一番有名な邸宅はバラス公爵邸だ。それはもう他の追随を許さない白亜の豪邸だ。
しかし新しいグラコート伯爵邸は追随どころか完全に抜き去って突き放している。
比べる事自体間違ってるいるわ……。
「ジョージ伯爵! どうだ俺の渾身の仕事だ! 気に入ってくれたかな?」
背後を振り返るとガルボ建設のガルボ社長だった。
「これで満足しない奴はいないですよ。予想を遥かに上回ってます」
「それは良かった。最高の美しさを誇るロード王国産の大理石の中でも最高級の【月の光】をふんだんに使っているからなぁ。太陽の日差しだと白色に見えるが、月明かりの下だと鮮やかな翠色に見えるぞ」
「よくこれだけの短い期間で完成しましたね」
「帝都中の地属性魔法を使える奴を集めたよ。ジョージ伯爵がエルフの里に出発してからはエクス帝国の魔導団が全面的に協力してくれてね。そうじゃなけゃこんなに短期間には建てられん」
あ、そうなんだ。あとでサイファ魔導団長にお礼を言いに行かないとな。
その後、ガルボ社長の案内で邸宅の内部を確認したが、そこでも驚愕させられた。
露天風呂付きの大浴場が設置されていた。奥のドラゴンの像の口からは止め処もなくお湯が流れてくる。
「どうだ驚いたか。魔導団の1人が温泉を掘り当ててな。せっかくだから帝都一の風呂を作ってみたぞ。源泉掛け流しで湯量がいくらでもあるからこれだけの広さでも問題ないわな」
こりゃ凄いわ……。どこの温泉施設だよって規模だ。こんなの持て余すだろ。
あ、エルフらがいたわ。それなら案外ちょうど良い?
まぁ広い風呂は気持ちが良いわな。
一通り邸宅を見て歩くが既に家具が入っていた。スミレが選んだ家具のため上品にまとまっている。
こういうのは生まれ持ったセンスだよなぁ。
そして最後に特注しておいた専用自家発電の部屋と専用のスミレとの合体部屋を確認をする。
俺は大いに満足しガルボ社長とガッチリ握手をした。
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