ザイン、バラス公爵家、新邸宅、そして関所破り
まぁエルフを飼うことに抵抗はあるがしょうがないのかな。スミレにどうやって説明しよう……。
あ、そういえばエルバト共和国の使者は来たのか?
「エルバト共和国はどうなったの?」
「一度使節団の代表がグラコート伯爵邸に来られております。ジョージ様にはゆっくりと吟味してほしいですからその件は最後にしましょう。次は報告がございます。ザインについてです」
そうだったな。二ヶ月空いたから少しは頭が冷えたかな?
しかしダンの口から出た言葉は全く予想だにしない事だった。
「ザインはカイト・ハイドース侯爵が募集している志願兵になりました。それに伴いグラコート伯爵邸の仕事を辞めると申し出がありました」
志願兵!? 頭が冷えるどころか沸騰した!?
「それは来月に予定されている北と東の国々の平定に参加するってこと? 意味がわからないんだけど」
「戦争に参加して武勲を上げたいのでしょうね。お金を稼ぐ意味もあると思われます」
「おいおい、何を考えているんだよ。ザインって兵士としての心得あったっけ?」
「いや至って平々凡々の青年ですよ。剣術はかじった程度、魔法はからっきしのはずです」
自分の能力がわかっていない!?
そんなの死にに行くようなもんだろ。
「自殺願望? 自暴自棄?」
「いや乾坤一擲でしょうね。ザインはアメリアとの明るい未来を描いているのでしょう。分の悪過ぎる賭けです。そして賭けるのは自分の命ですね」
得るものがほとんどなく、失うものが莫大だよ。
ザイン、お前は賭博師だったんだな……。
「止めたほうが良くないか? マリウスもナタリーも悲しむだろ」
「ジョージ様が無理をすれば止められるでしょうが、ザインには恨まれると思います」
「何で恨まれるの? 何も悪いことしてないぞ」
「ザインの思考くらい簡単に想像できます。ジョージ様に良かれと思ってやった事が裏目に出て謹慎処分になっている。最愛のアメリアも苦境に立たされてしまった。ジョージ様がタイル前バラス公爵当主と仲良くしてくれたらこんな事にならなかったのに。そして今回も自分とアメリアが幸せを掴もうとして頑張っているのにまたジョージ様は邪魔をする。こんな感じですかね」
「……。マジで?」
「はい、マジです」
うーん。どうするか。でもなぁ。
まぁ大人が自分で考え選択したんだ。その選択は尊重しよう。
生命を賭け金にして勝負しようとしている奴に何を言ってもどうにもならないよな。
結局、俺はザインには好きにさせる事にし、即日付けでザインの退職を認めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あとは何があったかなぁ。
エルフの里への遠征が結構濃密だったから忘れているわ。
「次の報告です。ジョージ様がエルフの里に向かった1月21日にジャイル・バラス公爵とコールド・バラスが謝罪に来られました」
あ、そういえばバラス公爵邸でコールドにムカついて直ぐに帰宅したんだった。
コールドの顔を思い出すだけでイライラするわ。
「ジャイル公爵から謝罪の言葉ございましたが、コールド・バラスの態度に問題があるとしてスミレ様は謝罪を受け入れませんでした。それにコールド・バラスが激昂して立ち去り、残されたジャイル公爵が大泣きをして大変でしたね」
大泣きって……。それって公爵家当主として醜聞が過ぎるだろ。
「えっと、どうすれば良いかな?」
「別に何もなさらなくて大丈夫です。こちらが率先して動く必要はございません。バラス公爵家から動きがあれば対処しましょう。次が最後の報告です。新しいグラコート伯爵邸の門の脇に設置するドラゴンの像ですがドット・ベルーガ子爵に創作をお願いいたしました。また屋敷部分は完成したとガルボ建設より報告がございました。いつでも転居が可能です。ドラゴンの像が出来上がってからと思っていましたが、エルフの方々が来られましたので早急に新邸宅に移った方が良いですね」
新邸宅ができたのかぁ。感慨深いものがあるな。
そういえばエンヴィーや他のエルフ達はどこで寝ているんだ?
「エルフ達は今はどこで寝ているの?」
「この屋敷のホールで雑魚寝ですね。エンヴァラだけはポーラの部屋で寝ております。新邸宅ですと余裕がありますので一人一部屋ご用意ができます」
「それなら直ぐに移ろう。皆んな帝都まで来て疲れているだろうし、新しい環境で慣れるまで大変だもんね」
「かしこまりました。それでは早速本日より転居を開始します。転居が完全に終了するまでは三日ほどかかりそうです。エルフ達は今晩より新邸宅で寝起きしてもらいます」
「後から俺も新邸宅を見にいくよ。楽しみだなぁ」
「素晴らしい邸宅ですよ。英雄であるジョージ様が住むのに相応しい邸宅です。バラス邸を遥かに凌駕しております」
そんなに凄いのか! やっぱり今から見にいこう!
「ジョージ様。新邸宅を見に行かれる前に騎士団長のライバー様にご挨拶をしておいてください」
「騎士団長? 何で?」
「ジョージ様は二日前に帝都に帰還した際、関所を手続きもせずに強行突破なされました。覚えておりますか?」
えっ? 記憶に無いぞ……。
それってヤバくない……。
「騎士団本部に顔を出してください。ライバー騎士団長に話は通してございます」
「あれ? 関所破りって重大な犯罪だよね? 普通は即捕縛されるだろ?」
「ハハハ、ジョージ様の冗談は相変わらず面白いですね。誰があの状態のジョージ様を捕縛するのですか? そんな命知らずは騎士団にもいないですよ」
あぁそうね……。
俺おかしくなってたもんな……。
笑い続けるダンを見て、過度な我慢は周囲に迷惑をかけるんだなって反省した。
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