郷に入っては郷に従え
「あぁーー! 生き返るーー!」
俺は大きな湯船に手足をいっぱいに伸ばしてつかっている。
つい先程、大浴場の洗い場で手短に右手を恋人にした。やっぱりお風呂場だと後処理が楽やなぁ。
再度賢者になった俺は今ならば悟りを開けそうだ。
それにしても何もかも忘れてゆったりするのも大事だよな。
目を閉じてリラックスしていると、大浴場に近づく27人の魔力反応を感じた。砦にいるエルフ全員の魔力反応か……。
襲撃する気か? 裸の俺なら勝てると踏んだ? どうする? 広い大浴場であるがこれだけの人数から逃げ回るには狭い。襲ってくるようなら壁を壊して一旦逃げてから体制を整えるか。壁の破壊なら体内魔法の身体能力向上で壊せるだろ。
27人の魔力反応は脱衣所で待機している。襲撃の最終確認か?
俺は脱衣所につながる扉に意識を集中させる。
そして扉が開かれた……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほう……。ジョージ様はなかなか良い身体をしてますね。それに立派なモノをお持ちです」
シルファさんが世間話をするような気楽な感じで俺に話しかけてきた……。裸で。
「本当ですね。とても引き締まった身体です。素敵!」
プリちゃんがシルファさんの言葉に同意する……。裸で。
「私にも見せてよ! あぁ立派です……」
「やはり救世主様は美しいのですね」
「ライドの手紙のとおり、確かに私達は奇跡を目撃する歴史の証人になったわ」
「眼福、眼福」
「ちょっと前が邪魔でジョージ様が見えないでしょ! 場所を変わってよ!」
至るところから次々とエルフたちが声をあげる……。もちろん裸で。
な、なんなんだいったい!? エルフ達から害意は感じないが身の危険は感じてしまう。
美人揃いの27人の裸のエルフ。桃源郷のような光景だが、背筋に冷たいものが走る……。
「あ、あの……。皆さん、今は俺が入浴中なんですが……」
「あぁ、そういえばエクス帝国には混浴の文化は無かったですね。エンヴァラで男性と女性が一緒に入浴する混浴は普通の事ですから気にしないでください。ジョージ様と裸の付き合いをして親睦を深めようと思いました」
素敵な胸や股をまったく隠さず、にこやかに俺に告げるシルファさん。
気にしないでと言われても……。
シルファさんを見ているとサイファ魔導団長が全裸で俺の前にいるような錯覚を感じる。あのサイファ魔導団長が俺の前で全裸。興奮してしまうわ。
あら? また下半身に漲る力。みるみると俺の三本目の足に血流が流れ込むのを感じる。
「これはこれは……。ジョージ様の立派なモノがさらに立派になられましたね。とても苦しそうです。よろしかったら私が処理のお手伝いをしましょうか?」
シルファさんの申し出に反射的にお願いしますと言いそうになったが、なんとか言葉を飲み込んだ。
まずは冷静になれ! ここは動揺を悟られないようにするところだ。ルードさん直伝の貴族の仮面を被るのだ!
「これはこれは失礼なモノをお見せ致しました。あまりにも貴女方が魅力的だったもので身体が反応してしまいました。時間が経てば落ち着きますのでお手伝いは不要です」
薄い微笑を口元に浮かべるシルファさん。ちょっとゾクっとしたぞ。
「そうでしたか。それならば必要になりましたらお声掛けをお願い致します。私達は身体を洗ってきますので、後ほど湯船でお話をさせていただきます。ジョージ様にはそれまでゆったりしていただけると助かります」
シルファさん達はそう言って洗い場に向かった。
ちなみに洗い場に向かうプリちゃんの後ろ姿、裸でのぷりぷりはやはり凄かった……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
湯船から洗い場は軽く距離がある。エルフ達の嬌声の声を聞きながらゆったりと湯船につかる。
そっか、エンヴァラでは混浴が普通なのか。郷に入っては郷に従え。エンヴァラの文化に俺が合わせていかないとな。異文化交流の難しさを実感するわ。
混浴が普通なのに、それで発情して股間をおっ立てていたら恥ずかしい人認定されちゃうよ……。
まずは頭と下半身の頭を切り離そう。
これは普通の事。性的な気持ちを持つのはおかしい奴。目の前に広がる光景は日常なんだ。
そうこれは日常。
ぷりぷり。日常だ。
ぷりぷり。そう日常。
ぷりぷり。日常……。
ぷりぷり。日常……。
ぷりぷり。こんな日常があるか!!
さっきから視界の端にぷりぷりが映り込むわ! プリちゃんがあっちこっちに動き回っている……。あ、転んだ。何をやっているんだ。少しは落ち着けよ。
でもプリちゃんに心の中でツッコんだら、何か気持ちが落ち着いたわ。下半身はギンギンだが頭が冷静になってしまった。あと少しすれば鎮まりそうだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目の前ではエルフ達が泡を立てて身体を洗っている。それにしても刺激的な光景もずっと見ているとなんて事無くなるんだな。性欲も気持ちの持ちようなのかな?
エルフの皆んなが直接な性的意識を俺に向けてないからか? 相手の羞恥や興奮が伝わるとこちらも呼応して興奮するのかも。そして肌から伝わる感触、そして匂い、相手の喘ぎ声、きっとそこから興奮の連鎖が始まる。スミレと肌を合わせる時はそうだもんな。
身体を洗ったシルファさん達が湯船に入ってきた時には俺の下半身は落ち着いていた。





