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時には騙されてあげる事が大切【スミレ視点】

12月3日〜12月6日


 この期間はドラゴン討伐での立ち回りの確認をおこなった。やっぱりどうしても近接戦闘ではドラゴンに近付く前に火の玉を吐かれてしまう。

 エクス軍の軍人を引率するには、やはり魔法で倒すしかないのか?

 私は余った時間の全てをかけて魔法練習場に通い続けた。魔法精度はAのままだ。努力を続ければ上手くいくのだろうか? 成長が見られないと精神的疲労が増してくる。それても続けるしかないか。


12月7日【青の日】


 朝に寝室のベッドメイキングをしていたサラがジョージと話していたら泣き崩れた。

 慌ててサラをジョージの部屋のソファに座らせ落ち着かせる。


「すいません……。もう大丈夫です……」


 とてもか細い声だ。サラの眼は充血して赤い。

 ジョージと眼があった。サラと同性の私に任せるつもりだろう。確かにそのほうが良さそうだ。私はジョージに頷いた。


「俺がいない方がサラも話しやすいだろ? 俺は席を外すな」


「いや、旦那様にも聞いて欲しいです。もう本当に大丈夫ですから」


 ジョージの言葉にはっきりとした口調で返すサラ。

 眼を見るとまだ赤いが力を感じる。

 サラはゆっくりと話し始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 話し終えたサラはスッキリした顔で部屋を出ていった。

 ジョージが苦虫を潰したような顔で口を開く。


「まさかザインとサラが3日前に別れていたとは驚きだな。スミレは気が付いていた?」


「全く気が付かなかったわ。ザインもサラも仕事をしっかりしていたし、いつもと変わらない感じだったけど」


 私もジョージも全く気が付かなかった。これではグラコート伯爵家の女主人として私は失格だ。それよりもサラの気持ちに寄り添っていかないと。


「それよりどうするの? ザインからも話を聞く? サラの話ではザインに新しい恋人ができたみたいだけど」


「いやザインから話は聞かないつもりだよ。二人共独身だし、自由恋愛なんだから。付き合うのも自由だし、別れるのも自由。仕事さえしっかりやってくれるなら俺は問題ないかな」


 ジョージの言葉に男性全般の身勝手さを感じられた。サラを裏切ったザインに何もしないというのか……。

 ジョージにはザインの気持ちが理解できるのか? 私には全く理解できない。これではサラが不憫だ。

 私が怒りを堪えていると、なぜかジョージが笑いを堪えている。

 あまりにも正反対の感情の堪え。馬鹿にされている感じを受け、私の怒りが爆発した。


「何ニヤニヤしているのよ! サラの話を信じるなら、ザインはサラと付き合っている時に違う女性に手を出したみたいじゃない! そんなのゆるせないわ!」


 狼狽したジョージが早口で言い訳を始める。


「でもそんな事を言っても、人の気持ちはどうにもならないんだ。今更ザインとサラの仲が元に戻るなんて無いだろ? サラにしてみればザインがそう言う男性だって早く気が付けて良かったじゃないか。付き合い始めて3ヵ月経ってなかったし。もし1年付き合っていたら、もっと傷ついただろ?」


「何か納得いかないわ。ジョージは男性の目線でしか考えていないように感じる……」


 男性の節操の無さを無理矢理丸くおさめようとしている感じだ。過去の事は考えずに未来の事を話して煙に巻いている。

 その時、ジョージが真剣な顔でわたしを見つめ出した。


「俺はスミレを運命の人だと思っている。その運命の人と結婚できて、人生を一緒に歩んでいけるのがとても幸せだ。きっとサラにとってザインは運命の人では無かったんだよ。サラは良い()だから、きっと運命の人に出会えるはずさ。その手助けはいくらでもするよ。あ、こんどダンを紹介してみるよ」


 真剣な顔で話すジョージを見ると、どうしても帝国中央公園の噴水前での告白を思い出してしまう。胸がキュンキュンと痛いくらいに締め付けられる。

 あぁ、そっか……。私はどうしようもないくらいジョージが好きなんだ。完全に心がジョージに囚われている……。

 これは諦めるしかないんだな。


「わかったわよ。何か上手いこと誤魔化された感じがするけど、今回はジョージに騙されてあげる。でもいつも騙されてあげるわけじゃないからね」


「騙されてくれてありがとう。俺はスミレとはいつでも仲良くしたいんだ」


 ジョージは私を優しく抱きしめ情熱的なキスをする。私の胸はキュンキュンしっぱなしだった。

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