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オリビア・バラス

 その後、アリス皇女と部屋で歓談し、昼食を共にした。

 皇女との食事はやっぱり緊張してしまう。ルードさん直伝のテーブルマナーで何とかこなしたけどね。


 食後のお茶をいただいてから、アリス皇女を部屋から連れ出す事にする。


「それでは行きましょうか、アリスさん」


「はい! よろしくお願いします」


 当たり前のように俺の腕に自分の腕を絡ませるアリス皇女。

 修練のダンジョンに行った時もこうだったからなぁ。

 あの時と同じように柔らかいものが当たっている。スミレのおかげで冷静になっている俺のジョージくんが反応していまいそうだ……。


 部屋を出る時、アリス皇女の顔と身体が強張った。

 ほんの一瞬だったけど、やっぱり怖いんだな。アリス皇女はその恐怖を克服しようと頑張っているんだ。ジョージくんに気を取られている場合じゃないな。真剣にアリス皇女を支援していくぞ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 アリス皇女とはエクス城を歩き回り、中庭でゆっくりする。

 午後の3時からアリス皇女は予定が入っていた。アリス皇女は現在帝位を継ぐために猛勉強中だ。勉強内容は、エクス帝国の歴史や経済、他国との関係、自国の貴族の力関係、エクス帝国皇室の祭祀など多岐に渡る。

 俺みたいな劣等生には無理難題だな。


 午後の3時前にアリス皇女を部屋まで送り、俺はベルク宰相の執務室に向かった。


 ベルク宰相は執務が忙しいようだが、俺の来訪に笑顔ですぐに対応してくれる。


「ジョージさん、今日はありがとうございます。アリス皇女の事、これからもよろしくお願いしますね」


「いえいえ、なんて事ないですよ。それより近衛騎士団って新しい部署なんですか? あと近衛騎士団のオリビアさんの情報を教えていただけると助かります」


「先程、アリス皇女の護衛任務を解任された話を聞きました。オリビアがジョージさんに失礼な発言をしてアリス皇女が怒ったみたいですね」


 真面目な顔になったベルク宰相は俺の質問に丁寧に答えてくれる。


「近衛騎士団は今回新設された騎士団です。今まで皇室の警備は第一騎士団と第二騎士団から選抜していましたが、この度アリス皇女殿下が皇帝陛下に即位するに従い警備の充実を図る事にしたのです。提案したのはタイル・バラス公爵ですが」


 タイル・バラス公爵の提案か。何か意味があるのかな?


「アリス皇女が女性のために近衛騎士団は女性の騎士だけで選抜されます。その()えある1人目がオリビア・バラスです」


「オリビアさんはバラス公爵家と関係あるんですか?」


「タイル・バラス公爵が平民に産ませた娘ですね。いわゆる落胤(らくいん)です」


 落胤? 確か当主に認知されていない子供だっけか?


「オリビア・バラスは平民としてエクス帝国高等学校騎士科を首席で卒業し、そのままエクス帝国騎士団第一隊に配属されています。先日まで南のエルバト共和国との国境に駐屯している軍隊に所属していました。ジョージさんとは二歳差ですからエクス帝国高等学校で1年被っていますね。知りませんか?」


 そういえば俺が入学した時に騎士科で有名な3年がいたな。平民なのに美人で優秀な女性って聞いた事がある。俺はスミレしか眼中になかったから、あまり興味が湧かなかったけど。


「なんか優秀な騎士科の3年生がいたのは覚えているのですが、それがオリビアさんかはわからないです」


「たぶんそれがオリビア・バラスですね。アリス皇女が後継者に決定するや、タイル・バラス公爵がオリビアを認知しました。あの人は機を見るに敏ですから。そしてオリビアをアリス皇女の側近にするために国境から呼び戻します。オリビアが帝都に戻ってきたのはつい2日前ですね」


 あらそうなの。それにしてはいきなりアリス皇女の護衛を首になっとるやん。


「オリビア・バラスについてはまだあまり性格を把握していないのですよ。ただジョージさんにわざと突っかかってアリス皇女を怒らせたわけですから。いろいろと鬱屈(うっくつ)した想いを持ってそうですね」


 そうだよな。やっぱりあれはワザとだよな。


「現在、エクス帝国中枢では勢力争いが活発化しています。タイル・バラス公爵がオリビアを認知してアリス皇女の側近にしようとしたのもその一環ですね」


 あぁ面倒くさいな。皆んな仲良くすれば良いのに。


 俺の気持ちを見透かしたようにベルク宰相の顔が真剣になる。


「ジョージさんはエクス帝国最大の重要人物です。くれぐれも軽率な行動だけは避けてくださいね」


 俺はしっかりとベルク宰相に釘を刺され、執務室をあとにした。

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