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エロスの女神が降臨し、海月になったジョージ

12月10日【黒の日】


 昨晩ダンと別れる時に「ジョージさんも近寄ってくる女性に注意してくださいね」と念押しされてしまった。

 これじゃ女性に本当にモテているかわからないじゃん。

 あ、その度に魔力の質を確かめれば良いか。


 うん? でも何の為に魔力の質を確かめるんだ? 浮気しない限り意味ないじゃん!


 まぁいいや。それより明日はアリス皇女と会う【白の日】だ。そうなると今晩は朝までスミレが俺を骨抜きする為に頑張ってくれるわけだ。

 期待でワクワクが止まらんわ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 夜になり俺は期待に胸を膨らませて寝室のドアを開けた。


 おぉ!!

 透け透けのワンピースタイプの寝間着だ!

 そして寝間着の下にはスミレは何も着ていない。

 所々に銀色があしらわれている。それがスミレの髪色と合わさってとても神々しい。


 め、女神だ……。


 今この時、グラコート伯爵邸の寝室に女神が降臨した。

 頭が痺れる。感動で声が出ない。


 優雅に俺に近寄ってくるスミレ。

 俺の視線はスミレから動かなくなっている。


「どうしたの? ジョージ? 固まっちゃって。どう、カスタール商会に頼んでいた寝間着よ。どうかしら? 似合っているかな?」


 俺の前で女神が一回転した。

 寝間着の裾が広がり、後ろを向いたスミレのプリッとした白いお尻が俺の目に入った。


 頭がスパークした!!


「スミレ!」


 抱き締めようとした俺の腕をスルリとかわすスミレ。


「ダメよ、ジョージ。まだ夜は長いの。ゆっくり楽しみましょう。まずは軽くお酒でも飲みましょうか」


 ベッドの横にあるソファセットに移動してお酒を作り始めるスミレ。

 俺はそのスミレの姿を凝視しながらソファに座る。

 薄い布越しに見えるスミレの裸。これはなんなんだ。

 現実と夢を行き来している感覚。

 頭の芯はずっと痺れている。

 はち切れんばかりの股間が痛い。


 俺の股間を見て妖艶に微笑むスミレ。

 あぁ……。

 今晩降臨した女神は間違いなくエロスの女神だ。


 この晩、俺は女神に翻弄され、スミレが宣言したとおり骨抜きにされた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


12月11日【白の日】


 スミレは朝の6時から日課の魔力ソナーを鍛える為に瞑想を始めた。

 そのまま食事をして修練のダンジョンに出かけてしまった。

 こんな日でも朝の8時から1人でドラゴン討伐なんて。スミレの優等生ぶりに驚かされる。

 俺はスミレが瞑想を始めた6時から9時まで仮眠を取らせてもらったよ。

 アリス皇女を訪問するのは11時からだからね。


 朝食を食べ終わる頃にエクス城から迎えの馬車が到着した。

 エクス帝国皇室の紋章が入っている豪華な馬車だ。

 それを見るとどうしても圧倒されるな。魔導団の団長室の扉を思い出してしまったわ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ようこそ、ジョージ様! お待ちしておりました」


 アリス皇女は俺を自室で迎えてくれた。

 まぁ俺がいないとまだ自室を出られないそうだから当たり前だけど。

 今日のアリス皇女は金髪の髪を軽くアップにしている。なかなか大人の雰囲気があるな。

 緩やかなドレスは室内様かな? ゆったりとしてとても似合っている。

 今日の俺は美人のアリス皇女を見ても心が(ざわ)めかない。これもエロスの女神のおかげだ。


「本日はお招きに預かりありがとうございます。アリス殿下がこの部屋から1人で外に出られるように支援させていただきます。これから毎週【白の日】はこちらに馳せ参じます」


「もう、ジョージ様。私的な場所では堅苦しい言葉は使わない約束ですよ。忘れて無いでしょうね?」


 忘れては無いが、皇室の紋章のある馬車に乗せられ、荘厳なエクス城に来て、その主に会うとなると無意識に(へりくだ)るだろ。

 これは小市民で長い事生きてきた俺の処世術だ。

 とは言ってもアリス皇女とは約束したもんな。


「もちろん忘れてないよ。それよりあれ凄いね」


 俺が指差したところは壁に掛かっている俺の姿絵だ。

 相当な大きさだな。部屋で一番目立つところに掛けられているよ。

 前に来た時は飾ってなかったな。


「フフフ。とてもお気に入りなんです。もう私がジョージさんに憧れている事はジョージさんにもバレていますから、隠す必要も無いと思いまして」


 ちょいちょい好き好きアピールがあるな。

 これは気を引き締めていかないとヤバいね。


 よし!

 最重要任務発令!

 アリス皇女と適切な距離感を保つのだ!!


 その時、ノックの音が聞こえた。

 侍女がドアを開けると騎士姿の女性が入室してくる。

 

「失礼致します。近衛騎士団所属のオリビア・バラスと申します。本日よりアリス皇女の護衛を担当させていただきます」


 おぉ!

 これは間違いなく美人さんじゃないですか!

 涼しげな切れ長の目が凛とした雰囲気を醸し出している。細身の身体だが、主張するところは主張している。出しゃばり過ぎていないバランスの取れたバディ!!

 うん? 今、バラスって言わなかったか?


「あら初めましてアリスです。ライバー騎士団長からお話は聞いております。こちらはジョージ・グラコート伯爵です。今日は私をこの部屋から出られるようにする為にわざわざ来ていただいたの。これからは毎週【白の日】には来ていただけるわ」


 俺に視線を移すオリビア。

 軽く目を細めてこちらを値踏みしているのがわかる。

 ここはルードさん直伝の挨拶で素敵な紳士を装ってみるか。第一印象が大切だからな。


「ジョージ・グラコートです。オリビアさんはアリス皇女殿下の護衛なんですね。これからは顔を合わせる事が多くなりそうです。どうぞよろしくお願い致します」


 俺は穏やかな笑みを浮かべて右手をオリビアに差し出す。

 オリビアは差し出された俺の右手を完全に無視して、馬鹿にしたように鼻から息を吐き出した。


「お前がジョージ伯爵か。エクス帝国の英雄がまさかこんな優男(やさおとこ)とはな。どうせ(ちまた)で言われている偉業は尾鰭(おひれ)がついたのだろうよ」


 あら、意外と好戦的やな。なんじゃらほい?

 俺は静々(しずしず)と差し出した右手を引っ込めた。

 その俺の行動を見て、オリビアがまた鼻を鳴らす。


「なんだ、侮辱されても何もしないのか? どうやら英雄様は能無しだと思ったが、玉無しでもあったか。腰抜けは家に帰って母親の乳でも吸ってたらどうだ?」


 俺は弱い犬がキャンキャン鳴いても何とも思わなくなった。

 既にドラゴンが吼えても何とも思わないもんな。

 うーん。どうしようかな?

 俺は別に良いんだが、俺はグラコート伯爵家の当主だ。これで何もしないのは貴族として失策なんだろうな。


 俺が口を開く前にアリス皇女が激怒した。


「なんですかあなたは! ジョージ伯爵はエクス帝国の守護者です! また私の大切な友人でもあります! ジョージ伯爵を侮辱する事はエクス帝国皇室を侮辱するのと同じ事! それを肝に銘じなさい! 不愉快です! あなたを今この場で罷免致します! 直ちに騎士団にもどりライバー騎士団長に報告しなさい!」


 あら!? 思った以上にアリス皇女が怒っていらっしゃる。周りが怒ると冷静になっちゃう俺。

 アリス皇女の叱責を受けて慌てて頭を下げるオリビア。


「これは誠に申し訳ございません。私はエルバト共和国の国境警備の任が長過ぎたようです。どうしても野卑た連中が多いもので」


 オリビアは俺に顔を向けて頭を下げる。


「田舎暮らしに染まって口が悪くなってしまったようです。グラコート伯爵様に謝罪を致します。申し訳ありませんでした」


 あらら? 案外素直や?


「私ではこのような貴人がおられる場所での任務は荷が重いようです。アリス皇女殿下の御言葉に従い、ライバー騎士団長に任務交代を申し出ます。本日は失礼致しました」


 オリビアは一方的に話し終わると踵を返して部屋を退出して行った。

 その姿を見ていたアリス皇女がまだ怒り顔をしている。


「なんなんでしょうね! せっかくジョージ様との楽しい時間が過ごせると思っていたのに! 台無しです!」


「いや、気分を改めて楽しい時間を過ごしましょう。俺の代わりに怒っていただいてありがとうございます」


「当たり前です。ジョージ様の侮辱は私への侮辱と同じ事ですから。そうですね。あんな女性のせいでジョージ様とのひと時を無駄にしちゃダメですね」


 笑顔に戻ったアリス皇女を見ながら、俺は先程のオリビアを思い出していた。

 部屋を出るために踵を返したオリビアの顔に確かに笑みが浮かんでいたことを。

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