奔放的な誘い【スミレの視点】
ロード王国のパトリシアが謁見の間で婚姻の話をしたところからのスミレ視点になります。
主のいない謁見の間でパトリシア王女の声が響く。
「もっと私を知ってから結婚するかどうか判断してほしいのです。滞在する屋敷は既に押さえております。ジョージ伯爵、どうかよろしくお願いします」
その時、私の貴族の理性が判断する。
ジョージとパトリシア王女が結婚すればジョージはロード王国の公爵になれる。そうすればロード王国の国民も守る事ができる。
これは良い話だ。すぐに受けても良い。しかしジョージはベルク宰相に答えを留保する。
何故か少しホッとした自分がいた。
その後ベルク宰相の執務室でパトリシア王女の事は夫婦で話し合うように言われた。
でも私の意見は既に決まっている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
屋敷に帰ってジョージと話すと、ジョージはパトリシア王女との婚姻に前向きじゃない。
私の想いを伝えたが、ジョージは頑として受け入れない。
平行線のままだ。
「スミレの考えはわかった。今日はここまでにしよう。話がまとまるとは思えないから。少し時間をおこう。今晩は、俺は客室で寝るよ。おやすみ」
私は部屋から出て行くジョージに「なによ!」と悪態をついていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一人で眠る寝台は広く寂しかった。
先程のジョージの言葉が頭に浮かぶ。
「それならスミレはなんでそんなに悲しそうな顔をしているんだ?」
「パトリシアが魅力的かどうかは関係ないんだ。俺はスミレを何があろうと幸せにすると帝国中央公園の噴水前で誓ったんだ。そんな顔をするスミレは幸せではない」
ジョージの言葉に嬉しさを感じている自分がいた。
だけどロード王国の国民にも幸せになって欲しい。
頭の中でぐるぐる思考が回っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝起きて魔力ソナーの訓練をしているとジョージがいきなり部屋に入ってきた。
デートをすると強引に連れ出された。
エクス城の城塔に行き、その後帝国中央公園に連れていかれた。告白された時と同じ噴水前で、ジョージから菫の花束をもらう。
「俺はここでスミレに告白した。その誓いは俺の魂に刻まれている。【何があろうと幸せにしてみせます】この言葉に嘘はない。スミレにはここに立ち戻って再確認して欲しい」
告白された時の映像が脳内に克明に浮かぶ。
私の大切な思い出だ。
あの時、ジョージの言葉に私の心が動かされた。
ジョージが私を見つめて口を開く。
「【何があろうと】って言ったろ。パトリシアと結婚しなくても、スミレの願いのロード王国の民も守ってやる。それがスミレの幸せになるのならな」
「でもどうやって?」
「俺に聞いても分からないよ。それを考えるのはベルク宰相さ」
私は呆れて笑ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後結婚前に良く行っていた飲食店に入った。
まだ心に棘が刺さっている。
「私の我が儘でロード王国の人達が苦しむのは嫌なの」
「我が儘なんかじゃないさ。自分以外の奥さんができるのに平静でいるほうがおかしいよ。普通の感情だよ。その感情を抑える必要なんてないね。あとはお父さんがなんとかしてくれるさ」
「お父さん?」
「ベルク宰相の事だよ。俺の中では既にベルク宰相はお父さん認定がされているからね」
「フフフ、こんな子供だとベルク宰相も困りそうね」
「お父さんには我慢してもらうよ。一生、俺の為に頭を使ってもらうんだ」
ジョージの笑顔が私の心の棘を溶かしていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ジョージは忙しい。
皇位継承者と次々と面会を重ねていく。新皇帝にはジョージの後ろ盾が必須だからだ。
ベルク宰相の執務室に行った時に、パトリシア王女との婚姻をしない事を伝えた。
了承を得たがパトリシア王女へのお断りの返事はジョージ本人がするように言われる。
それが礼儀としても、ジョージの心は重くなるだろう。
ジョージが私を見つめてきた。私はできるだけ優しく微笑んだ。ジョージの顔にヤル気が満ちてきた。
私はジョージの心が壊れないように癒やしてあげないといけないと心に誓った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝起きてジョージを気分転換に修練のダンジョンに誘った。
今日の計画の第一段階だ。
大丈夫、私はできる。
そう言い聞かせて修練のダンジョンに向かった。
修練のダンジョンに入った。
私は立ち止まる。
振り返るジョージ。
私は上のシャツのボタンを外し始める。
計画の第二段階だ。
驚いているジョージ。
私を凝視しているのを感じる。
身体が熱くなってくる
ジョージと目が合う。
恥ずかしいが、そんな事は噯にも出さずに見つめ合いながら服を脱ぐ。
あぁ、もっと私を見て……。
既に上半身は下着姿だ。
計画の第三段階に入る。
私はできるだけ甘えたような声で話し出す。
「ジョージはこのまま下着姿が良い? それともいつものビキニアーマーにする? それとも……」
「い、いや、俺はとても嬉しいんだけど、どうしたんだ! スミレはビキニアーマーを着るのは嫌だったんじゃないの!」
「ジョージが喜んでくれるなら、これくらいの恥ずかしさは問題ないわ。今日は修練のダンジョンの4階で開放的に愛されたいの。ダメ?」
ジョージには私だけを見て欲しい。
私だけで感じて欲しい。
私はこの我が儘を素直に表現することにもう躊躇いはない。
ジョージは頷いてくれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ジョージは日頃のストレスを発散するように私に欲望をぶつけてきた。
それがとても嬉しい。
私の身体の奥が熱くなる。
ジョージの魔力と私の魔力が混じり合う感覚。
あぁ堕ちていく……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日の夜、ベッドの中でジョージと会話をする。
「スミレ、今日はありがとう。楽しい一日だったよ。でも無理する必要はない。俺はスミレだけを愛していくから」
自分がやった事を思い出して恥ずかしくなってきた。顔が火照ってくる。
「俺はスミレと温かい家庭を作りたいんだ。これはずっと変わらないよ。だから安心して欲しい。わかった?」
私は頷いて、ジョージの胸に顔を埋める。
ジョージは私の耳元で囁く。
「でもたまにはスミレから奔放的に誘ってくれると嬉しいかも」
また顔が火照ってきた。
そしてジョージは私の寝間着を脱がし始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その二日後、ジョージはパトリシア王女に毅然と婚姻の断りを入れてくれた。
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