ジョージさんの後ろ盾【ベルク宰相視点】
ベルク宰相視点です
主人公の視点に戻るまで残り2話。
謁見の間を出ると私はジョージさんとスミレさんとダンを執務室に連れてきた。
すぐにダンがお茶をいれてくれる。私はお茶を一口飲んで喋り出す。
「まずはロード王国の捜査任務、お疲れ様でした。上手くいったようでなによりです。それにしても、これから考えなければならない事がたくさんありますね。その全てにジョージさん、あなたの判断が最も重要になります」
何はともあれ、ジョージさんに現状認識をしていただく必要がありますね。
「まずはカイト皇太子の処遇についてです。どこまで本気でザラス皇帝陛下の暗殺を指示したか分かりませんが、流石に軽率過ぎます。バルバン伯爵とアイヴィーとカイト皇太子の取り調べ次第ですけどね。現在、カイト皇太子は相当マズい立場になっています。カイト皇太子が皇帝陛下になったとしても不満が溜まったままになるでしょう。私でもカイト皇太子が皇帝陛下になったとしたら、反発しますからね」
ここで真剣な口調に変える。
「ただし、カイト皇太子の後ろ盾にジョージさんがなれば話は違います。盤石とはいえませんがそれなりの権力基盤を持てる事でしょう」
「皇帝陛下の継承順位ってどうなっているんですか？ カイト皇太子が皇帝陛下になれない場合はどうなるのでしょうか？」
伯爵になったばかりのジョージさんは皇家の内情は知らないか。
「ザラス皇帝陛下には子供が4人います。長女が27歳のパラマ皇女。こちらは侯爵家に降嫁しております。降嫁しているため継承権はないです。長男が25歳のカイト皇太子。そして次男が21歳のダマス皇子。この皇子は残虐非道として有名です。次女が20歳のアリス皇女。こちらは引きこもりで、自分の部屋から出てこなくて有名ですね」
青い顔になるジョージさん。
私の説明は止まらない。
「後はカイト皇太子の長男のスイフト。今年4歳になりました。継承順位は1位がカイト皇太子。2位がスイフト皇子。3位がダマス皇子。4位がアリス皇女です」
ジョージさんの曇った顔を見て、つい笑ってしまう。
「ジョージさんも、やっと大変な事を理解してくれましたか。仲間ができて嬉しいですよ。誰が皇帝陛下になっても難があるんです」
「ベルク宰相はどうするつもりなんですか？」
「ハハハハ！ 今回、私は見ですな。ジョージさん次第ですよ」
不思議そうな顔をするジョージさん。
本当に素直な人だ。腹芸はできそうもないな。
「ジョージさんは1人で有無を言わせぬ力があります。ジョージさんが皇帝陛下になりたいなら、強引ですがなれるでしょう」
まぁなるつもりはないでしょうな。
「でも、ジョージさんの夢は違いますからね。温かい家庭を作るんですよね」
この流れなら頼めるかな？
「ですからジョージさんには皇帝陛下の継承権を持っている四人に会って欲しいのです。ジョージさんが、この人なら手助けできると思う人を選んで欲しいのです。ジョージさんが後押しするならば誰も逆らわないでしょう。私も手助けはしますよ」
「分かりました。近日中に時間を作って会ってみます。ただしベルク宰相とサイファ団長には相談に乗ってもらいますからね」
さすがに保険はかけてきましたか。
「それは了解しました。それではジョージさん、よろしく頼みますよ」
「ベルク宰相、パトリシア王女についてはどうすれば良いですか？ ロード王国の公爵になった方が良いのですか？」
「難しい問題ですね。エクス帝国とロード王国の関係に関与しますし、ジョージさんの夫婦生活にも関わってくるでしょう。まずはジョージさんとスミレさんで良く話し合ってください。それが夫婦ですよ」
納得した顔をするジョージさんだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
数日後、ジョージさんとスミレさんがエクス城の私の執務室に訪ねてきた。
予想通りアリス皇女に好感を持ったようだ。ダマス皇子は最悪、スイフト皇子は判断は保留。カイト皇太子とは考え方が合わない。
こうなったらアリス皇女に皇帝になってもらう以外ないですか。ダマス皇子は今までの悪行の証拠が大量にあるので排除可能。カイト皇太子には皇家を抜けてもらって継承権を剥奪と。
問題は皇配をどうするか？
一番可能性が高いのが、私の兄の息子のバラフィー・エバンビークか。それだと政治力学的にマズい。私が宰相を辞めれば何とかなるか。まぁアリス皇女に引き合わせて相性を見てからだな。
もう一つの案件のロード王国の公爵打診について、ジョージさんはキッパリ断った。しかしロード王国の守護者にはなりたいとの事だ。
難儀な性格をしているな。パトリシア王女とも婚姻すれば良いのに。まぁその純朴さがジョージさんの魅力なのかもしれませんね。
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