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凶刃に倒れる皇帝陛下【ベルク宰相視点】

ベルク宰相の視点です。

主人公の視点に戻るまで残り5話。

 臨時貴族会議の後にサイファ団長とジョージさんを別室に誘った。


「お疲れ様でした。ジョージさん。気疲れしたのではないですか?」


「やっぱり気疲れはしますね。何故かタイル・バラス公爵が怖く感じて。穏やかそうな人なんですけど……」


「なるほど。ジョージさんはタイル公爵の本質を理解しているかもしれないです。彼は戦争を金儲けだと思っていますからね。戦争で物資を売り買いして儲ける事ばかり考えています。先代とは大違いで困ってしまいます」


 タイル公爵は本当に戦争を経済行為と思っているから面倒だ。


「侵略戦争推進派はカイト皇太子やゾロン騎士団団長のような武闘派。それに戦功を挙げたい没落気味の貴族。そして金儲けを考えているタイル公爵です」


 サイファ団長が私の説明を補足してくれる。


「侵略戦争推進派はロード王国に侵略したい。だけどザラス陛下の考えを変えるのは難しいわ。それで2つの動きがあったのよ。一つが東と北の国々の平定ね。戦争が起これば食糧や武器などで儲かる。それに平定後は戦後復興でまた金儲けができる。これを考えて提案したのがタイル公爵ね。もう一つが大きな声では言えないけどカイト皇太子のクーデターね」


 ジョージさんの顔が驚愕に染まった。サイファ団長は説明を続けてくれる。


「クーデターを起こすとなるとゾロン騎士団団長がカイト皇太子に付くわ。帝都で邪魔になるのはジョージ君と魔導団ね。たぶんクーデターの話はタイル公爵も一枚噛んでいるわ。だからジョージ君を東と北の国々の平定に行かせようとしたのよ。ジョージ君が拒否したために次策として帝国軍を行かせようとしたのよ」


「騎士団まで帝都を離れたらクーデターは失敗しませんか?」


「そこは途中で騎士団だけ帝都に引き返すのよ。ゾロン騎士団団長なら理由を付けて帝都に引き返す事ができるわ。帝都からジョージ君と魔導団を引き離して、騎士団でエクス城を強襲すればクーデターは成功するかもね。だからベルク宰相は国軍である魔導団と騎士団を帝都から離れないようにするために、東と北の平定に参加させないようにしたのよ」


 まだ頭の整理がついていないジョージさんに私は穏やかに話しかける。


「ジョージさん。この話はここだけにしておいてください。あ、スミレさんには話して良いから。これからジョージさんには色々な人から接触があるかもしれない。充分注意をしてほしい」


「分かりました。何かありましたらサイファ団長を通して相談させてください。よろしくお願いします」


 これで少しは侵略戦争推進派が大人しくなると助かるのだが。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 臨時貴族会議が終わった深夜、屋敷に早馬がやってきた。

 驚天動地! 青天の霹靂とはこの事だ。今まで生きてきた中で一番の衝撃を受けた。


「ザラス皇帝陛下が暗殺された模様! すぐにエクス城に登城してください!」


 慌てて着替えてエクス城に向かう。

 エクス城内は既に混乱の渦だった。


「まずは落ち着け! 騎士団第二隊を呼び寄せるように! 昨晩の陛下の動きをしっかりと聴き取れ! 初動が大切だぞ! 落ち着いてやる事をやってくれ!」


 その後、ザラス陛下の亡き骸を見た時は流石に呆然としてしまった。


 少し経つとサイファ魔導団団長がやってきた。

 これで少しは楽になる。


「ベルク宰相、これはクーデターと関係あるのですかね?」


「わからん。それより侵略戦争推進派の謹慎を行おうと思うのだが」


「わかりました。その謹慎するメンバーにゾロン騎士団団長がいるのですね。私が臨時で騎士団団長も務めます」


「話が早くて助かるよ。サイファ団長は騎士団第二隊を使って捜査を進めてくれ。私は侵略戦争推進派と話をしてくる」


 これは眠れない夜になるな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 カイト皇太子とゾロン騎士団団長、タイル・バラス公爵をエクス城の一室に集めた。半分連行だが。


 私の護衛は騎士団第二隊が受け持ってくれている。

 カイト皇太子が大声を上げる。


「なんだこれは! どういう事だ!」


 この男はすぐに大声を出すから面倒くさい。

 私は努めて静かな声で喋り出す。


「落ち着いて聞いてください。今晩、ザラス皇帝陛下が暗殺されました。あなた方にはその容疑がかけられています」


 ゾロン騎士団団長が声を張り上げる。


「そんな事をするわけが無いだろ!」


「あくまでも容疑です。あなた方がクーデターを起こすかもしれないという情報があった事は知っていますか? 今はこちらの言う事を聞いていただいたほうが身の為だと思います。嫌疑が晴れるまで自主的に謹慎をしていただきたいのですが。拒否される場合には捕縛させていただきます」


 静かになった室内。

 沈黙を破ったのはタイル・バラス公爵だった。


「わかりました。確かに侵略戦争推進派とザラス陛下とは軋轢がありましたからね。嫌疑が晴れるまで謹慎する事とします」


 その後、カイト皇太子とゾロン騎士団団長も謹慎を受け入れた。ゾロン団長は騎士団の指揮権をサイファ魔導団団長に臨時で移譲する。


 その後、私はノースコート侯爵家の領地に早馬を出し、嫌疑が晴れるまで謹慎するように命令した。


 今後、どうなる? 誰が皇帝になってもジョージさんの後ろ盾は必要になるな。ジョージさんを中心に考えていかないといけない。

 そんな事を考えていると、胃が重くなるのを感じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作品序章はダンジョン潜って強くなるっていうシンプルな展開でしたが今はかなり状況が複雑ですもんね。 読者にとっても作者さんにとっても整理も兼ねてこういう話がしばらくあるのはいいことだと思いま…
[良い点] 宰相さんの胃が順調にキリキリしてる事 [一言] 普通は長いとダレる別視点を、テンポ良くそれでいてジョージの知り得ない裏事情も簡潔に分かりやすく書かれているのがいいですね
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