表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

116/282

クーデター疑惑【ベルク宰相視点】

ベルク宰相視点です。

主人公の視点に戻るまで残り6話。

 タイル・バラス公爵は本格的に話し始める。


「まずはジョージさんに確認したい事があります。エクス帝国の大陸制覇についてはどう思っていますか? 賛成ですか? 反対ですか?」


 ジョージさんが緊張している? タイル・バラス公爵は苦手なタイプなのか。


「現実的にはどうなんでしょうか? 北と東の小国と中規模の国家群の平定は可能でしょう。ロード王国も年々国力が落ちるはずです。場合によってはロード王国は内戦になるかもしれないですね。東、北、西は平定可能だと思います。しかし南の大国のエルバド共和国を打倒するのは骨が折れるのではないですか?」


 畳みかけるように言葉を紡ぐタイル・バラス公爵。


「そういう話ではなくて、エクス帝国が大陸制覇をする事に賛成できるかどうかって事です。どうですか?」


「無益な血を流さないのであれば賛成できますかね」


「それは良かった。ここで反対されると話が進みませんのでね」


 タイル・バラス公爵がザラス陛下に顔を向けて大きな声を上げる。


「私、タイル・バラスは陛下に進言致します! ここにいるジョージ・クラコート伯爵にエクス帝国の東と北の国々を平定するように命令する事を!」


 私は冷静に頭を働かせる。


「先程、ジョージ伯爵はエクス帝国の大陸制覇について、条件付きで賛成しております。条件は無益な血を流さない事。現在、東と北の国々は争ってばかりいます。絶えず無益な血が流れている状況です。エクス帝国が平定すれば、その血は流れなくなるでしょう」


 相当無理な論理だな。

 慌てたジョージさんが早口で喋り始める。


「誠に申し訳ございません。私は攻めてくる敵を倒す事に抵抗はございませんが、自ら他国まで行って人を殺したいとは思っていません」


 残念そうな顔をするタイル・バラス公爵。しかし演技丸出しだ。


「それならばジョージ伯爵を抜かした騎士団と魔導団に平定を任せるべきかと。大陸制覇をする為には、東と北の国々の平定は必須事項です。その後、弱ったロード王国を平定し、南の大国のエルバド共和国に相対するべきと愚考します」


 騎士団と魔導団を帝都から引き離したいのか。まさか本当にクーデターを考えている!?

 ザラス陛下が私に問いかける。


「ベルクはどう思う?」


「大陸制覇を目指すのならば、確かに東と北の国々の平定は必須事項でしょう。しかし東と北はあまり旨味がある土地とは言えません。戦争の収支で言えばマイナスでしょう」


 冷静に答える私にカイト皇太子が噛み付く。


「国家大望の話をしている時に金の話か! それはロード王国の貢ぎ物で補えるだろう!」


「確かにロード王国の貢ぎ物とジョージ伯爵が納品してくれるドラゴンの魔石で充分補えます。経済効果がどちらも高く税金の増収が見込めますからね。ただ東と北に軍を進める事は、火中の栗を拾う事になりかねないことは否定しません」


 ザラス陛下は一つ頷いてから発言をする。


「カイト、サイファ、ゾロン。其方らの意見を聞きたい。あくまで軍事的な話だけだ。東と北の平定は可能か? 可能ならばどの程度の時間がかかる?」


 カイト皇太子が胸を張って答える。


「我がエクス帝国軍に敵などいません。一年もかからずに平定が可能でしょう!」


 ゾロン騎士団団長は横で頷いている。

 しかしサイファ魔導団団長の意見は違った。


「これから季節が冬に入ります。冬の間は北に攻め込むのは無理でしょう。またエクス帝国軍が東と北に攻め込むと、争っていた国々が纏まる可能性があります。戦争に勝利できると思いますが、状況によっては長い時間がかかるかと推察いたします」


 会議室が静寂に包まれる。

 誰も発言しない。

 その時、ザラス陛下が私に語りかける。


「ベルクよ。何か良い案はないもんかの?」


 クーデターを起こさせないためには騎士団と魔導団を帝都から離しては駄目だ。ジョージさんとスミレさんも帝都にいたほうが良い。戦費と侵略戦争推進派の不満を考えると落とし所はどこだ?


「それならば志願者で東と北の国々を攻めるのはどうでしょうか? 国軍である帝国騎士団と魔導団は出さないようにするのが良いかと」


「そうするとどうなる?」


「あくまでも戦功を挙げたい貴族の領軍に任せれば良いかと。そうすれば戦費はその貴族が負担する事になりますし、ロード王国への侵略戦争にかける思いのガス抜きにもなるかと思います」


「帝国騎士団と魔導団にも戦功を挙げたい者がいると聞いておるぞ。其奴らはどうする?」


「そちらも志願制にしても良いかと。そこまでの人数が志願するとは思えません。それならば許容範囲です」


 ザラス陛下がカイト皇太子を見る。


「どうだカイト。志願する者だけで東と北の国々を平定するか? それとも止めておくか?」


 難しい顔をしているカイト皇太子。

 確かに志願制にすると烏合の衆の軍隊だ。厳しい戦いになるだろう。

 そこに声が上がる。ゾロン騎士団団長だ。


「私が指揮をとりましょう。志願者を統率して必ずや東と北の国々を平定します」


 ザラス陛下がカイト皇太子を睨みつける。


「カイトよ。ゾロンを総大将にして東と北の国々を攻める事に了解するのか? いつもの勢いはどうした? これではお前がいつも言っているのは大言壮語(たいげんそうご)になってしまうぞ」


 カイト皇太子は不満がある顔をしながらも無言を貫いた。

 ザラス陛下はそんなカイト皇太子を無視してゾロン騎士団団長に顔を向ける。


「ゾロンよ。言ったからにはしっかりと東と北の国々の平定を任せるぞ。帝国騎士団と魔導団から志願者が出た場合の戦費は国費から出そう」


 取り敢えず、クーデターの企ては潰せたか。

続きを読みたい方、面白かった方は下の星評価とブックマークをお願いいたします。星をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
集英社ダッシュエックス文庫より
第1巻が発売中
▼▼▼クリック▼▼▼
ジョージは魔法の使い方を間違っていた!? ~ダンジョン調査から始まる波乱万丈の人生~
html>



▼▼▼葉暮銀その他の作品▼▼▼
蒼炎の魔術師〜冒険への飛翔〜
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ