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英雄の誕生【ベルク宰相視点】

引き続きベルク宰相の視点です。

主人公の視点に戻るまで残り10話。

 東の新ダンジョンが修練のダンジョンに名称が変更になった。これでエクス帝国騎士団と魔導団の実力の底上げができるようになる。

 ジョージさんが冒険者ギルドで流布されている噂を拾ってきた。国が修練のダンジョンは実入りの良いダンジョンだから国が独占しようとしているって噂になっているそうだ。

 それの対応として冒険者に修練のダンジョンを限定的に開放する事にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 馬鹿な冒険者もいるもんだ。修練のダンジョンの地下4階まで潜った冒険者が出た。そしてドラゴンの目撃情報がもたらされる。

 地下4階の魔物がドラゴンだと話が変わってくる。

 ドラゴン討伐者(スレイヤー)がいる軍隊に攻め込む国があるだろうか? それだけドラゴン討伐者(スレイヤー)の称号は大きい。

 早速、サイファ魔導団団長をエクス城に呼び出す。


「サイファ団長、率直に聞きたい。ジョージさんはドラゴン討伐ができる人材か?」


「ドラゴン討伐の可能性は相当高いと思います。それほどジョージ君の魔力制御は凄いです。危険性はありますが、ジョージ君のドラゴン討伐には賛成します」


 私はその言葉で踏ん切りがついた。

 私はザラス皇帝陛下に上奏し、ジョージさんの陞爵(しょうしゃく)の後にドラゴン討伐の指令が発動された。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 執務室で書類仕事をしているとジョージ・グラコート伯爵がドラゴン討伐指令の終了報告のために城に来ているという。直径1.5mもある魔石を運んできているそうだ。

 慌てて謁見室に入る。ザラス・エクス陛下とカイト皇太子も駆け込んできた。その他にも手の空いていた高官が見に来ていた。

 謁見の間の扉が開く。


 ジョージさんが持っているドラゴンの魔石を見て、私は驚嘆の声を上げた。

 英雄の誕生をこの目で確認した瞬間だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 一昨日にドラゴン討伐をしたジョージさんが私を訪ねてエクス城に来た。陞爵時の祝いである屋敷の選定のためだそうだ。

 早速、部下のバルクを呼び、若き英雄のいる部屋に向かった。

 ジョージさんは、ドラゴン討伐のパートナーを連れている。

 ジョージさん一人じゃないのか?


「本日は陞爵時の祝いである屋敷の選定と聞いていたが?」


「ベルク宰相お時間をお取りくださりありがとうございます。実はこの度こちらのスミレ・ノースコートと結婚する事になりまして。屋敷は新居になる事から一緒に選んでもらおうと思い連れて来ました」


「何と、結婚ですか。それは喜ばしい。なるほどノースコート侯爵家の娘さんとですか」


 ノースコート侯爵家の娘か……。

 ノースコート侯爵家は今のロード王国との国境の緊迫感を作っている元凶じゃないか。ノースコート侯爵家はジョージさんを取り込むつもりか。


「安心してください。スミレはノースコート侯爵家ですが侵略戦争推進派ではありません。私と同じエクス魔導団の軍人です。忠誠はザラス陛下にございます」


 なるほど、この娘はノースコート侯爵家とは関係無いという事か。それなら安心か。


「そのような情報をいただけるのはありがたいが、ジョージさんも腹芸を覚えたほうが良いのではないか?」


「私に腹芸は無理ですよ。困ったら力で捩じ伏せる事にしたんです」


 ジョージさんの冗談だと確信しているが、一瞬ヒヤッとする。

 ジョージさんは自分の力をしっかりと理解していないな。


「ハハハハハ! 若者の特権ですな。年配者の私はジョージさんの力がこちらに向かわないように画策させていただきますよ。それで屋敷の件だったな。こちらのバルクに一任しているから気に入った屋敷を選んでくれれば良いよ」


「あと、頼みたい事があるのですが」


「なんだね。できる範囲ならなんでも頼まれるぞ」


 売れる恩はいくらでも売っておいて損はないしな。


「屋敷で雇う人を揃える事ができる人を紹介して欲しいんです。ノースコート侯爵家のギランさんからはカスタール商会を使えと言われましたが、侵略戦争推進派に深く関わりそうなので。できればベルク宰相の知り合いに頼みたいと思いまして」


 ジョージさんは侵略戦争推進派と距離を取ろうとしている。これはエクス帝国の平和には良い事だ。


「なるほど、ノースコート侯爵家の御用達のカスタール商会は確かに侵略戦争推進派だ。戦争で儲けたいんだろうな。了解した。私の知り合いを紹介させてもらうよ。なんだ、ジョージさんは政争のバランス感覚が優れているじゃないか」


「スミレの提案ですよ。ノースコート侯爵家との距離感を間違えないように言われています」


「それは良い心掛けだ。今は難しい時期だしな。ジョージさんには期待しているよ。では後はこちらのバルクに任せて仕事に戻らせてもらうよ」


 私は部屋を出て、すぐに先日までバラス公爵家で執事長をしていたマリウスに連絡をした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ロード王国の外交団がエクス帝国にやってきた。緊迫している国境についての話だろう。

 話し合いは平行線だった。終いにはロード王国がエクス帝国に宣戦布告をすると言ってくる。

 馬鹿な戦争はしたくない。我が帝国軍にはドラゴン討伐者(スレイヤー)がいるから止めておけと言っても納得しない。

 こうなればジョージさんの実力を見せたほうが話が早い。

 ジョージさんにエクス城に来てもらう事にした。


 私は来てもらったジョージさんに話しかける。


「休みの日にわざわざすまないね。ジョージ伯爵。実は頼みがあるんだ」


「頼みですか?」


「こちらに座っているのがロード王国の外交代表団だ。話し合いがうまくいってなくてね。このままならロード王国がエクス帝国に攻め込むのも(やぶさ)かでないと言うんだ。エクス帝国にはドラゴンスレイヤーの君がいるからそんな事は止めた方が良いと説得しているが信じなくてね。実際に君の実力を見てもらおうと思った次第だ」


「悪いですけど、ドラゴンを見せに行っても良いですけど、その人達だと死ぬ可能性が否定できませんよ」


「何を! 我がロード王国騎士団を愚弄するのか!」


 ロード王国騎士団の一人が怒鳴り声をあげた。この男のせいで話し合いが進まないんだ。


「俺も弱い人と修練のダンジョンの地下4階には行きたくないですよ。地下3階のオーガのモンスターハウスで勘弁してもらえないですか?」


「エクス帝国は我々ロード王国を馬鹿にしているのか! オーガがそんなダンジョンの浅層で現れるわけがないだろ! 虚偽ばかりで話にならん!」


「ベルク宰相、了解致しました。地下3階層のオーガのモンスターハウスで軽く魔法をぶっ放してきますよ。それで戦争が避けられるなら手間じゃないですから」


 拍子抜けするくらい気楽に私の頼みを聞いてくれるジョージさん。

 任せたぞ。


 それから数刻が経ってロード王国の騎士団の男性がエクス城に帰ってきた。

 「ジョージ伯爵と戦うのは無謀です」という言葉と共に。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ジョージさんにはドラゴンの討伐を定期的に頼む事になった。

 ドラゴンの魔石は大量のエネルギーが内蔵されている。大規模な魔道具を動かすためにもっとドラゴンの魔石が欲しい。また魔道具の研究、開発にも必要だ。

 この無茶な要求にもジョージさんは応えてくれた。これでは頭が上がらなくなるな……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 数日後、サイファ魔導団団長から申し出があった。ジョージさんがドラゴン討伐の褒美に優れた剣を欲しているとの事。ただし、普通の剣では身体能力が上がっているジョージさんの振りに耐えられないそうだ。

 すぐに国宝の【黒月(こくげつ)】が頭に浮かぶ。


 既に来歴が紛失している刀。

 ただ英雄が持つ刀とだけ伝わっている。エクス城の宝物殿に飾られているだけの刀だ。

 英雄が持つ刀というのもジョージさんに相応しいか。

 早速、ザラス陛下に許可を取り、ジョージさんに【黒月(こくげつ)】を下賜(かし)する事が決まる。


 ジョージさんはとても喜んでくれたとの報告が上がってきた。

 純真な青年と感じてしまう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「悪いですけど、ドラゴンを見せに行っても良いですけど、その人達だと死ぬ可能性が否定できませんよ」 すっきりしない、変な文章のように思いました。
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