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始まった貴族会議

10月13日【青の日】

 今日は午前中に臨時貴族会議が開催される。

 果たしてどのような事になったのか?

 カイト皇太子は?

 スイフト皇子、ダマス皇子、アリス皇女は?


 俺は気楽な気持ちと、重大な責任があるような気持ちが、混ざっている変な心境だ。

 簡単に言えば落ち着かない感情。


 マリウスの息子のザインが馬車の扉を開けてくれる。

 今日はゆっくりと馬車でエクス城に向かう。

 澄み切った秋空を見て何となく良い方向に進みそうだと思った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 貴族会議はエクス城の会議室で行われる。

 前の貴族会議に出席した時と同じで席が決まっているようだ。大勢の貴族が既に入室していた。

 俺が会議室に入ったところでサイファ団長が手を上げて呼んでくれる。今回もサイファ団長の隣の席みたいだ。

 これだけで安心感が増すねぇ。


 今回もこちら側が侵略戦争反対派で向かい側が推進派だ。

 タイル・バラス公爵とゾロン騎士団団長の顔が見える。

 やはり俺はタイル・バラス公爵は苦手みたいだ。何か嫌な感じを受けてしまう。


 ベルク宰相が入室してきた。

 騒ついていた会議室が静かになっていく。

 今日はカイト皇太子は出席しないか。当たり前といえば当たり前だな。


 ベルク宰相が穏やかな声で発言する。


「それでは貴族会議を始める前にザラス皇帝陛下に黙祷を捧げる」


 その声に従って皆、黙祷を開始する。静寂が会議室を包む。


「黙祷止め! これより臨時貴族会議を開催する。今回の議題は皇位継承についてだ。エクス帝国の行く末を決める大事な内容になる。忌憚(きたん)の無い意見をあげてほしい。まずは皇位継承第一位のカイト皇太子についてだ」


 会議室に緊張感が走る。

 ベルク宰相は話を続ける。


「エクス帝国騎士団第二隊の取り調べの結果、カイト皇太子はザラス陛下の暗殺に、積極的ではないが関与が認められた。これは由々しき問題である。よって皇家から外れてもらうつもりだ。カイト皇太子の皇位継承権を無くすために侯爵になってもらう。またザラス陛下の喪が明けるまで謹慎とする。この決定に異論がある者はいるか?」


 ゾロン騎士団団長が手を挙げて発言する。


「カイト皇太子を皇家から外すなんて正気ですか! それでは誰が次期皇帝になるのです!」


「それを今から説明する。それに親殺しに関わった者が皇帝になるのはエクス帝国の基盤を揺るがす事になるぞ」


 そういえばゾロン騎士団団長の妹が皇太子妃だったな。カイト皇太子が権力の座から転げ落ちるのは困るんだろうな。

 俺はヒステリー気味のカメリア皇太子夫人を思い浮かべていた。


「次に皇位継承順位第二のスイフト皇子についてだ。現時点で四歳のため、皇帝になられた場合には宰相の任にある者がサポートする事になるだろう。しかしスイフト皇子が成人するまではエクス帝国は他国に弱みができてしまう。また、父親が祖父殺しで侯爵になったのもよろしくない。次期皇帝としては些か無理があるだろう」


 苦虫を潰したような顔をするゾロン騎士団団長。

 出席した貴族が理解するまでベルク宰相は言葉を止める。


「その次の皇位継承順位第三位のダマス皇子。ザラス陛下が在命中は公に出来なかったが、多くの犯罪に関わっている証拠がたくさんある。殺人、誘拐、拷問、強姦、脅迫。その証拠は現在エクス帝国騎士団第二隊に提出されている。ダマス皇子は近々捕縛されて法の裁きを受ける事になるだろう」


 騒つく会議室。


「静かにしたまえ。まだ話の途中だ。最後の皇位継承第四位のアリス皇女。彼女はとても聡明で慈悲深い人だ。心の傷により自室から出られなくなっておるが、その原因のダマス皇子が捕縛されれば解消されるかもしれない。ダメな場合でも、自室で政務を取り仕切ってもらえば良い。優秀な方と結婚をしていただき、皇配に表の仕事をしてもらっても良いだろう」


 どよめく会議室。

 やはり多くの人が、引きこもりの皇女が皇帝になるのは想定外だったようだ。

 それまで黙っていたタイル・バラス公爵が口を開いた。


「私は賛成ですな。アリス皇女の聡明さは聞き及んでおります。次期皇帝にふさわしい方でしょう。問題なのは皇配になる男性です。いつ頃までに決める予定なのでしょうか?」


「現在、身分が釣り合う男性の名簿を作成しているところです。その後、アリス皇女とお見合いをしていただきます。アリス皇女と相談して決める事になるでしょう。エクス皇家の未来がかかっているので、慎重に決めていく予定です」


 タイル・バラス公爵がニヤリと笑う。


「それは良い考えだ。アリス皇女を次期皇帝に据えて、皆んなで支えていこうじゃないか!」


 ベルク宰相と侵略戦争推進派のタイル・バラス公爵が賛成の意を示した。

 このような状況で反対する貴族は馬鹿しかいない。皆んな黙っている。


「それでは皇位継承についてはアリス皇女に皇帝になっていただくという事で問題はありませんか? なければ次の議題にいきます」


 次の議題? 何かあるのか?


「次の議題はジョージ・グラコート伯爵についてです」


 お、俺が議題!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分の関係者を皇配にしちゃえば良いじゃない!って事であっさりだったなw
[良い点] 一息で読みきれました。 [気になる点] 結婚式の回の前。 オリジナル呪文の話が出て来てたので、誓いの言葉が呪文の形式にはまり、多量の魔力を送り込んで奇跡をおこす。とかあるのかな?と思ってま…
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