エクス帝国魔導団退団
10月11日【白の日】
今日は朝から魔導団本部に向かった。サイファ団長に会うためだ。
ロード王国の侯爵か伯爵になるのならエクス帝国の軍人である魔導団を退団したほうが良いと俺は考えた。なるべくエクス帝国とロード王国に優劣を付けないように配慮していきたい。
サイファ団長は第二騎士団の詰所から魔導団本部に戻ってきているそうだ。
団長室の扉をノックすると中から返事があった。
扉を開けて中に入るとサイファ団長が迎えてくれる。
少し顔色が良い感じだ。
ザラス皇帝陛下の暗殺の件の山場は越えた感じかな?
「あら、いらっしゃい。たぶん来るかと思っていたわ。魔導団を退団するんでしょ」
「よく分かりましたね。俺とスミレの退団届けを持ってきました」
「ベルク宰相からロード王国の貴族になる事を勧められたんでしょ。それならエクス帝国の軍人でいると都合が悪いものね。分かったわ。その退団届けは受理させてもらうわ」
「ありがとうございます。退団しても、引き続きサイファ団長に協力させていただきます」
「助かるわ。あとはエクス帝国騎士団と魔導団との契約ね。ジョージ君達には修練のダンジョンで実力の底上げをしてもらいたいから。今、予算を獲得するのに難儀しているのよ。ジョージ君達は半日で修練のダンジョンでドラゴンの魔石を4つ獲得してくるでしょ。その時間を使わせるとなると、その分の対価が必要でしょ。結構な額になるのよ」
確かに今はドラゴンの魔石1つで200万バルトだ。半日で800万バルトになってしまう。今後、ドラゴンの魔石の価格が下がっても半値にはなるだろう。そうすると400万バルトだ。
その対価ってなると確かに大変だ。
週5日間連れて行くと2,000万バルト。一ヶ月で1億バルト。一年で12億バルトになってしまう。
軍の予算からそれを捻出するのは厳しそう。
「今は一回当たり200万バルトで契約してもらえないかしら。格安にはなるけど拒否権をジョージ君達に与えるから。連れて行きたくない人は拒否して構わないわ」
拒否権か。それがあるなら良いかな。ある程度のところで連れて行く人も減ってくるだろうしな。
「わかりました。取り敢えず、今日は話を持ち帰ってスミレと相談いたします。返事は早いほうが良いですか?」
「そうね。明後日の貴族会議でいろいろごちゃごちゃしそうなのよね。案外早めに契約したほうが良いかも。貴族会議の後までに返事をもらえると嬉しいわ」
貴族会議は明後日の10月13日の午前中だ。午後にもう一度話し合いかな。
「了解致しました。10月13日の午後にこちらの条件を付けて返答いたします。それと修練のダンジョンの入り口をロックウォールで閉じる事にしました。詰所に人を配置しなくても大丈夫だと思いますよね」
「あら、そうなの。確かにジョージ君のロックウォールなら誰も壊せないわね。それなら不法侵入の心配がないわ。騎士を引き上げる事にするかしら。あ、来週にはエルフの里から研究者がくるわ。ライドって名前よ。ジョージ君に興味津々だったから覚悟しといてね」
魔力制御と不老について研究しているエルフか。是非、会って色々確かめないとな。
「ありがとうございます。それではこの辺で帰りますね」
「明後日の貴族会議は荒れるでしょうからジョージ君に期待してるわよ」
俺に期待されても……。
でも何とか無駄な戦争が無いような体制になって欲しいな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
修練部の部屋により、私物を整理して屋敷に帰宅する。
そのまま俺の部屋で騎士団と魔導団との契約について、スミレと話し合いだ。
「スミレはサイファ団長の話についてどう思った? 俺はまぁ妥当な話かなって感じたけど」
「そうね。契約価格はオーガの討伐だから私達の安全性は高いから問題ないと思う。拒否権があるから侵略戦争推進派の人を省けるのも良いわ。今後はできればロード王国の軍人の受け入れもしていきたいわね」
俺がロード王国の貴族になるなら、ロード王国が衰退するような貢ぎ物も無くす方向で動く感じか。ロード王国の戦力向上もありだな。それでロード王国の西の辺境の地が安定するかもしれないし。
「今まで通りのレベル30の縛りを続けてもらえれるわよね。契約書の文面は少し変えないといけないけれど。あとロード王国との契約も必要になりそうね。ただ、エクス帝国がロード王国の軍人がエクス帝国に入国するのを認めるかどうかはわからないけど」
それから以前の提案書の改善を始める。
①修練のダンジョンで上げるレベルは30までを基本とする。
②騎士団団長及び魔導団団長及びジョージ・グラコートが許可した者についてはレベル30までの縛りを受けないものとする。但し、上記の場合に於いてもレベル40までを上限とする。
③ジョージ・グラコート、又はスミレ・グラコートに引率される騎士団、魔導団の者は、ジョージ・グラコート、又はスミレ・グラコートにギルドカードを閲覧させ、レベルの確認を義務付ける。
④ ジョージ・グラコート、又はスミレ・グラコートにギルドカードの開示を拒否する者は修練のダンジョンに入場させない。
⑤ ジョージ・グラコート、又はスミレ・グラコートは、特段の理由が無くとも引率を拒否できる。
⑥一回の引率する時間は13:00から17:00までの4時間とする。
⑦エクス帝国は、ジョージ・グラコートに一回の引率につき、200万バルトを支払うものとする。
まぁこんなものか。あとは問題が出たら、追々改善していこう。
ロード王国との契約はパトリシア王女に聞いてみてだな。
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