ダマス皇子とアリス皇女
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10月8日【緑の日】
あまり会いたくない人物だが会わないわけにはいかない。
面会の伺いを立てたらすぐに予定がついた。ダマス皇子は政務も何もしていないからだ。
ダマス皇子はエクス城の私室で会ってくれた。
現在21歳のヒョロっとした青白い顔をした黒髪の男性だ。
ダマス皇子は俺とスミレが部屋に入るなり、スミレを舐め回すように見ている。
あ、こりゃ駄目だ。本能的に反応してしまう。
「スミレは外で待っていてくれるかな。後から合流しよう」
俺の言葉に落胆を隠さないダマス皇子。
魔力ソナーで魔力を確認すると、ドロドロした腐ったような魔力だ。
もうこれだけで充分わかったよ。こいつは嗜虐趣味の変態だって。それでも確認はしないとな。
「ダマス皇子は皇帝陛下にはなりたいと思っていますか?」
「他に誰がなるっていうんだい? 君は面白い事を言うね。カイトは父殺し。アリスは引きこもり。スイフトはまだ幼過ぎる。僕以外になれる人がいないじゃないか」
一応、正論ではあるな。
「それではダマス皇子は皇帝陛下になったら、何をしたいと思いますか?」
「僕は何もしないよ。帝国の運営はベルク辺りが上手くやるだろう。僕は自分の趣味をやるだけだね」
「趣味といいますと?」
「帝国中の綺麗な女性達を虐めたいのさ。綺麗な顔が歪むのがこの上無く好きでね。君はそうじゃないのかい? 皇帝陛下になれば、いくらでも綺麗な女性が手に入るから」
そう言いながら舌舐めずりをするダマス皇子。
あ、こりゃ真性の変態だ……。隠そうともしていない。ある意味清々しい。こりゃ退散しよう。
「それでは私はこれで失礼致します」
「なんだ、もう行くのか。今度は次期皇帝陛下の僕に綺麗な女性を献上するんだな。なるべく生娘が良いな」
俺はダマス皇子の声を無視して部屋を出た。
あれはやばい。排除しないとダメじゃないのか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
スミレと合流して、そのままアリス皇女の部屋に行く。アリス皇女は引きこもっているため、会おうと思えばいつでも会えるそうだ。
アリス皇女の部屋の前には女官が1人立っていた。
俺とスミレが近づくと扉をノックして中のアリス皇女に話しかけ、扉を開けてくれた。
引きこもりと聞いていたが、アリス皇女の部屋は陽の日差しがたくさん入り明るい印象だ。
俺とスミレが入室すると、アリス皇女は立ち上がって出迎えてくれた。
「わざわざエクス帝国のために、私のような者に会いに来ていただいてありがとうございます。たいした持てなしはできませんが、ゆっくりとしていただくと嬉しいです」
アリス皇女は優雅な動きで俺とスミレを椅子に誘った。
侍女がお茶を入れてくれる間にアリス皇女を観察する。
綺麗な金髪に切長な目。鼻筋が通っていて、美人の類いに入るだろう。部屋に引きこもっているせいか肌は色白だ。
俺は魔力ソナーで魔力の質を調べる。
清涼な魔力だ。優しい魔力を感じる。
もしやこれは当たりか!?
お茶を飲みながら雑談をしていると、アリス皇女が聡明なのが良く分かる。またとても慈愛の心を持っている。
マジか! 大当たりなんじゃないの。
「アリスさんは皇帝陛下になるおつもりはありませんか?」
「私が皇帝陛下になるなんて過分ですね。到底務まるとは思えません」
「私はそうは思いませんですが。例えばスイフト皇子が成人になるまでの間だけでも考えられないですか?」
少し困った顔をするアリス皇女。
「私は兄のダマス皇子に虐待を受けておりました。今でも部屋の外に出ると身体が強張ってしまうのです。これではとても政務は務まりません」
なぬ! ダマス皇子がネックなのか。やっぱりアイツは排除じゃないのか!
「例えばですが、ダマス皇子を帝都から追放すれば、それは問題無くなりませんかね」
「どうでしょうか? 精神的なものですから、こればかりはどうなるかわかりません。ご期待に応える事ができずごめんなさい」
その後、軽い雑談をして、アリス皇女の部屋を辞する。
それでも俺は心の中でアリス皇女に二重丸の上に花丸を付けていた。
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