パラマ・トパール侯爵夫人
まずはパラマ皇女、現在はパラマ・トパール侯爵夫人に連絡をとってみよう。
いつもはトパール侯爵領にいるそうだが、今はザラス皇帝陛下の葬儀があったため帝都に滞在している。
早いうちに会わないと領地に帰ってしまうかな。
早速屋敷に帰って執事見習いのザインにトパール侯爵邸に行かせる。
パラマさんは領地に帰還する準備に追われていたそうだ。
それでも時間を捻出してくれる。急遽、今日の午後3時に面会予定が立った。
昼食を食べてからゆっくりとスミレと帝都のトパール侯爵邸に向かう。
メイドのサラが手土産に帝都で評判のお菓子の詰め合わせを買ってきてくれた。
できる使用人がいると楽で良いね。
トパール侯爵家は政治的には中立と聞いている。無理矢理派閥に分ければ、崩御したザラス皇帝陛下派と言えるだろう。
帝都の東側は貴族街があり、トパール侯爵邸は我がグラコート伯爵邸からもそんなに遠くない。
現在、帝都のトパール侯爵邸には、先代のナパム・トパールが住んでいる。ナパム・トパールはエクス帝国の高官で、トパール侯爵領は息子の現トパール侯爵のタカバ・トパールが治めている。
今日はザラス皇帝陛下の葬儀出席のためにタカバ・トパール侯爵とパラマ・トパール侯爵夫人もトパール邸にいた。
玄関フロアでは先代のナパム・トパールとトパール侯爵夫妻が出迎えてくれた。
「今をときめくジョージ・グラコート卿が我がトパール邸を訪ねてきてくれるなんて光栄だな。皇帝陛下の継承問題でパラマから話を聞きたいんだろ? お茶でも飲みながらゆっくり話をしていってくれ。私はこれからエクス城で仕事があるから不在にするよ」
口髭を生やした先代のナパム・トパールが柔和な笑顔で話しかけ、出かけていった。その言葉を受けてトパール侯爵夫妻は俺たちを客室に案内してくれる。
まずは雑談をしながら相手がどのような人か確かめていく。
パラマは良くいえば平凡、悪く言っても平凡な女性に感じた。魔力ソナーで魔力の質を調べてみたが、特質的なものはない。
タカバ・トパール侯爵も同じ感じ。毒にも薬にもならない印象だ。
ただ、夫婦仲はとても良さそう。
温かい家庭を作っているんだろうな。こんな家庭を作りたいなぁ。
「ジョージさんは弟達の情報を聞きたくて来たのでしょう。私の意見でよければお話しさせてもらうわよ」
パラマが会話をリードしてくれた。
「それではパラマさんから見たご兄弟の為人を教えてください」
「そうね。カイトは自信家で猜疑心が強いって感じかな。小心者なのかも」
カイト皇太子が猜疑心が強い? 小心者? イメージが無いな。
「ピンと来てないみたいね。それには南の大国のエルバド共和国をどう見るかね。カイトはエルバト共和国を脅威と捉えているわ。今にエルバト共和国はエクス帝国を攻め滅ぼしてしまうと思っている。だから焦っているの。今回の暗殺事件もそのせいで起きたようなものね」
カイト皇太子はエルバト共和国を仮想敵国に設定しているんだ。だから早く大陸の北を統治したいんだな。
なるほど。
「ダマス皇子はどのような人なんですか?」
「ダマスは嗜虐趣味がある捻くれた弟ね。他人の嫌がる顔を見るのが好きみたい。また、自分の事しか考えていないから皇帝陛下になると酷い事になりそうね」
やっぱりダマス皇子は地雷だな。パラマの評価も低い。
「アリスはダマスを怖がっていてね。幼い時からダマスに意地悪されていて、それで引きこもってしまったの。心根は優しい子なんだけど、皇帝陛下になるほど、精神的に強くはないかな」
アリス皇女はダマス皇子が怖いと。精神的に強くないなら、アリス皇女が皇帝陛下になるとアリス皇女自身が不幸になりそうだ。
「スイフト君については私はわからないわ。私がここに嫁いだ時は、まだ赤ちゃんだったから」
スイフト皇子は保留か。しょうがないよな。まだ4歳だ。
「私は誰が次の皇帝陛下になっても良いけど、エクス帝国民の平穏な暮らしだけは壊してほしくないわ」
この言葉を最後に俺とスミレはトパール侯爵邸をあとにした。
パラマの最後の言葉は自分勝手に聞こえるが、人は誰しも自分の立場で物を考えるからな。これが普通なんだろう。
分かった事はカイト皇太子がエルバト共和国を仮想敵国に設定している事。
あとはアリス皇女の引きこもりの切っ掛けがダマス皇子にあると言う事。
そして皇帝陛下になり得る人材がいそうもない事か。
俺は重い足取りでグラコート邸に帰宅した。
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