86 雪ウサギと世界樹
雪ウサギな雪の精霊たちと出会った夜、三日ぶりに雪が降った。それ程積もりはしなかったが、雪がほぼ無くなっていた広場に、うっすらと雪が積もって再び真っ白へと雪化粧していた。
かまくらを仕上げよう!と張り切った子供達が早朝からやって来たので、急いで朝食を食べて日課をする為にまず聖地へ皆で向かう。
「おお、凄い!雪の結晶がキラキラ光っているみたいだ!」
『すごいすごーーい!キレイなの!』
広場から聖地へ向かうと、森から雪ウサギ達が次々に姿を見せ、一緒に聖地へとついて来たのだ。
精霊だから結界にはじかれることなく聖地へ入り、雪化粧をした白い花畑まで来ると、雪ウサギたちがぴょーーんと白い花の上を次々と飛び跳ねながら進み出した。
雪ウサギが白い花の上に着地すると花に積もった雪が弾かれ、キラキラと雪の結晶のように辺りに飛び散り、雪ウサギ達が止まった花を見てみると、キレイに雪が無くなり、朝陽に照らされてうっすらと輝きを放っていた。
雪ウサギたちが辺りに散って一斉に飛び跳ねだしたので、辺り一面がキラキラと輝いていて、いつもの花畑が更に幻想的な光景となっていた。
そんな雪ウサギ達と世界樹へと向けて歩いていると、シルフ達が寄って来て雪ウサギ達と挨拶を交わしていた。
嬉しそうに空を舞い踊るシルフ達の姿に、雪ウサギ達の復活を心から喜んでいることが見て取れる。
『ミャウーーミャッ!ミャッ!!』
そんなシルフ達の姿に、シュウも楽しそうに飛び跳ねている。
……シュウが一瞬空気?風?を足場に二重跳びをしているような気がしたが、そっと目をそらして見ないフリをしてしまった。
最近はかなり成長して少しはこっちの言うことを聞いてくれるし、だ、大丈夫だよな?
テンションを上げたシュウが、家の広場をあちこち飛び回る姿を脳裏に描いてしまい、どうか気のせいであってくれ、と逃避してしまった。
風以外の親和性を高めないと神獣的な成長はほとんどないらしいので、いくら風を上手く使いこなせるようになっても、シュウが言葉を話せるように成長するのはまだまだ先らしい。これで会話が出来るようになれば、もう少しはTPOの大切さを説明する言葉に耳を傾けてくれる……と思いたいのだが。
雪ウサギ達が雪の結晶をキラキラと舞い上がらせる中、シュウに釣られてかクオンも一緒に飛び跳ね、その上空をライが楽しそうに舞う、というまるで一枚の絵画のような美しい光景を眺めつつ現実逃避をしていると。
『む。緑の花、か?』『シルフと雪の精霊の力が交じり合ったな』
「へ?えええっ!さっきまであんな色の花、無かったよな!?」
『うむ。今、生えて咲いた』『ふむ。聖地に少し力が満ちたようだな?』
え、えええええーーーーーーっ!!ゆ、雪ウサギ達、雪の精霊ってやっぱりすごかったんだな!!
呆然と見ている間に、白い花の上から跳ねた雪ウサギと空のシルフが重なると、その陰から薄い緑の光が滴り落ち、その光が花畑に落ちた瞬間、透明感のある薄緑の茎と葉が出てするすると伸び、薄い緑の花が咲く。そんな光景があちこちで展開され出し、瞬く間に真っ白な花畑が薄い緑の色を帯びて行く。
事象を司る精霊の復活は、やっぱりこの世界にとってかなり大きなことだったんだろうな。……雪ウサギだけど。
そんな神秘的な光景を見つつ世界樹の元へと進み、泉の傍まで来ると、今度はウィンディーネが水面から飛び跳ね、雪ウサギ達と挨拶を交わし出した。
すると今度は泉の周囲に透明感のある透き通った青い花があちこちに咲き出した。
凄いな……。泉の周りはユーラとカーバンクルの力が戻るにつれて、白い花以外に虹色の花が咲いていて色とりどりだったけど、それも雪に埋もれていたのが雪ウサギ達が飛び跳ねて散らしているから、雪原の上に色とりどりの花畑が出現したかのようだ。
花の上に積もった雪は結晶となって飛び散り、花は彩美しく朝陽に輝く。行く先々にそんな奇跡のような足跡を残しつつ、いつもの日課をする世界樹の根元まで辿り着いた。
「じゃあ、日課をしてくるから皆はここで……って、え?もしかして挨拶をするのかな?」
冬は泉で水遊びも出来ないので皆でここまで一緒に来ているので、いつものように待っていて貰い、一人で世界樹の根に近づいて行こうとすると、一匹の雪ウサギがぴょーーんと跳ね、一足先に世界樹の根へと近づいて行った。
挨拶の邪魔をしてはいけない、と一歩引いた場所で見守っていると、世界樹の根に飛び乗った雪ウサギが、一度一礼をするように頭を下げると、次に根の上をあちらこちらと飛び跳ねだした。
え?これは……ダンスを踊っているのか?ぴょこぴょこ跳ねててかわいいな。って、えええええーーーーーーっ!!
最初はととと、ととと、と右に左に飛び跳ねて移動する雪ウサギを微笑ましく見ていたのに、気が付いた時には世界樹の根に積もった雪が輝きながら雪の結晶となって弾け、その結晶が世界樹の根に当たると消えて行く。そして、消えて行った場所から根の内側に光が宿り、それが水の流れに乗って世界樹の幹へとキラキラ輝きながら流れて行っていたのだ。
「ほへぇー……。俺の日課よりも、輝いているような?」
ねえ、これ、俺の日課、もうそろそろ止めてもいい気がするんだけど?
そう思いつつキラキラと輝く世界樹を眺め、雪ウサギと交代して日課を終わらせてユーラの食事を済ませると、かまくらを完成させるべく興奮する子供達と一緒に家へと戻ったのだった。
因みにいつものように根本の花を摘み、ユーラの為に落とされた世界樹の雫はいつもよりも輝いており、それを飲んだユーラも一瞬内側から光を放ったかのように見えた。
春は待ち遠しく思うけれども……子供達にそんなに急いで成長しないでゆっくりと成長してくれ、とも思ってしまったのだった。
小山のようなかまくらの穴堀りは、たくさんの雪ウサギ達が協力してくれた。
まずは昨夜の雪で雪が緩くなっていないかを一応確認し、入り口の大きさに印をつける。これはライが飛びながら張り切ってやってくれた。
口に枝を咥え、器用に入り口の半円を滞空しつつ描いてくれたのだ。
皆から凄い!と喝采を浴びたライが照れつつ嬉しそうに飛び回っていたのが微笑ましい。
次に入り口の真ん中、下から小さい子から掘り始めた。まず最初に掘るのはララだ。
『あ、あの、これで大丈夫、でしょうか?』
『ーー、-----!』
皆に混ざって練習していたララは、なんとか雪を纏めることには成功していた。それを雪ウサギ達が協力し、一緒になって自分と同じくらいの雪を纏め、風魔法で後ろへと掘り出していた。
そんなララの姿にほっこりしつつ、クオン、シュウ、ハーツ、それにロトムが交代で穴掘りを開始する。俺は皆が堀った雪を転がして移動する係だ。
「う!ううーー!」
「お。ユーラもやりたいのか?」
「う!」
今日もかまくらが気になったのか、オズの付き添いをキキリに任せたユーラが、雪ウサギ達に「うーーー!」と指さして指示?すると、ぼこっと音を立ててこれまでで一番大きな穴が開いた。
え?それ、いいのか?いや、別に反則とかないし、確かにまだユーラは自分じゃ魔法は使えないし自力で掘るのも無理だろうけど。
と唖然と皆が見守る中、ユーラの掛け声とともにまたボコん、と穴が開いた。
それに刺激を受けたのか、シュウが楽しそうに『ミャウーー!』とシルフと一緒に穴に突進して行き、犬の穴堀りのように両手に風を纏って雪堀りをし始めた。
それを見たハーツやクオンも続き、気づくとあちこちから削られた雪が飛び散り、あっという間に無秩序空間へと変貌していた。
『え、え、え……?』
それについていけず、オタオタとするララを回収して一緒に掘った雪の除去に励んでいる内にお昼になり、昼食を食べて昼寝を見守った。
午後はアインス達がまた張り切って穴を掘り出し、何度か掘る予定からはみ出そうになってライに怒られつつ作業は進み、雪ウサギ達が最後に天井をきっちりと補強してくれて、夕方にはとうとう巨大なかまくらが完成したのだった。
なんとか書けましたー……。なんか難産でした。やっとかまくらの完成です!(3話もかかってました)
少し涼しくなったと思ったらまた暑くてバテ気味です。
(お話は冬だから温度差が凄いですね)
次回は水曜か、無理なら木曜に更新予定です。
どうぞよろしくお願いします!




