67 雨期明けと不思議な植物 1
魚を釣って、カニと魚を食べた翌日の昨日は小雨が降っていたが、今日は曇りだったが雨は降らなさそうだ。あと何日かで雨期も終わりそうだ。
今日は子供達が全員揃い、小川に今日も行く?とそわそわする子供達をなだめていつもの日課と泉での水遊びを済ませ、今は子供達は昼寝中だ。
さすがに毎日釣りには行けないしな。週に一度くらいは行きたいけどな!
『イツキ、お久しぶりです』
「シェロ!久しぶりだね。もうお迎えかい?」
『いいえ。今日はイツキと種蒔きについて相談しようかと思いまして』
台所で自分の夕食の仕込みをしていると、森に続く小道からシェロが歩いて来たのが見えた。
「それはちょうど良かったな。午後は、ここの畑に植えるハーブと香草、香辛料を森に探しに行こうかと思っていたんだ。一緒に行って、教えてくれないか?」
『いいですよ。雨期がもうすぐ開ける今の時期だけに生える植物もありますし、お教えしますね。今年はユーラ様が誕生されましたので、精霊にちなんだ植物が何十年かぶりに生えているそうで、集落の老人達も張り切って採ってまして色々教わりました』
おお、それは丁度良かったな!ファーナの木以外の不思議植物とか、教わりたかったんだよな。それにシェロ達は口にしないだろうけど、胡椒とか出来たら甜菜のような茎に甘みのある植物があったら教えて貰いたかったんだ。
「それはうれしいな。じゃあ、子供達が起きるまで、シェロの用事を済ませてしまおうか」
ケットシーのシンクさんが野菜の種を人里から仕入れて来てくれているから、今年も畑に植える野菜の種類は三種類増える予定だ。
できた野菜がクー・シー達でも食べられそうな野菜は、クー・シーの集落にも分けているのだ。今まではクー・シーの集落では畑として耕すことはなかったそうだが、俺がやっているのを見て、去年から集落の近くの空き地を耕して野菜を植えだしたそうだ。
「そういえば、ユーラのことでバタバタしていたから、冬の間に芋や小麦を食べたのか聞き忘れていたんだけど、どうだった?」
雪が降ると食べられる野草が少なくなり、秋に蓄えた果物や野草だけだと食料が不安定だと聞いて、長期保存がきく芋と小麦粉を雪が降る前におすそ分けしたのだ。張り切って畑を増やしたから、俺が食べる分は十分だったからな。
ただクー・シー達は今まで火を使って調理して食べる、ということはしていなかったみたいだから、どうかとは思っていたのだ。芋も小麦粉もそのままでは食べられないから、一応鍋で湯を沸かすだけで食べられる簡単な食べ方も一緒に教えてはみたのだけれど。鍋はドワーフ達が作ってくれたしな。
『はい。今年は雪が深かったので、母親達が子供達に温かい物を、と鍋で湯を沸かし、芋を茹でて食べてみました。今まで食べたことのない触感でしたが、皆気に入って食べていました。お陰で温かく過ごせましたよ。お礼が遅くなり、申し訳ありませんでした』
「いやいや、そんなこと気にしないでいいよ。こっちがバタバタしてたから、送り迎えの時に話す時間もあんまりなかったしね」
世界樹の守り人でハイ・エルフのユーラは、クー・シー達にとっては直に顔を見るのも恐れ多い相手らしく、子供達はすぐに慣れてくれたが大人になる程未だに遠巻きで見ている感じなのだ。
俺がユーラをいつもだっこしたりおんぶしたりしているから、送り迎えの付き添いの大人の人達とはほとんど話せていないんだよな。
「その感じだと、芋は食べたけど小麦粉の方には手を出さなかった感じかな?」
『いえ、一度は食べてみたのですが、手間を考えると私達は芋の方が性が合っているみたいです。今年は畑を広げて、森で芋を採って来て植えていましたよ』
まあ、お湯に水でといただけのすいとんもどきじゃあ、味もないし美味しくないだろうしな。その分炭水化物だからカロリーにはなるんだけど。まあ、精霊にも一日の摂取カロリーがあるかどうか分からないけどな!
「小麦粉もパンを焼けたら美味しく食べられるんだけどね。小麦粉と塩だけでも、確かフランスパンは作れた筈だしなぁ。うどんは味がないと美味しくないしね」
『パン、ですか?集落の母親達が火を使った料理を気にしていましたから、作れるようになったら教えていただけたら喜ぶかもしれませんね』
「そうか。塩はここでとれる岩塩だし、クー・シー達も食べられるんだっけ?」
『ええ。野草も塩をふって食べていましたから』
なら、芋も言わないでしまったけど、塩をふって食べていたのかもしれないな。
それなら、と火を通して美味しく食べられる他の野菜の種を渡して食べ方を教えていると、キキリが一人、家から出て俺を呼びに来た。
「お、ユーラが目を覚ましたのか?シェロ、ちょっと待っててな。ユーラを連れて来るよ」
シェロに声を掛けて、出来るだけ気配を殺して家へと入り、クオンとロトムに挟まれているユーラの元へ向かうと、目を開けて寝がえりをうち、お座りをしようとしているところだった。
思わず止まり、じっと見ていると、手がしっかりと体重を支え、一瞬そのままハイハイをするのでは!と思うような前傾姿勢からポスンと腰を下ろしてお座りの体勢になった。
その様子を見て、そういえばオムツが必要ないからさせていないけど、お尻の保護の為には何枚かパンツを重ねて履かせるか、トントゥ達に集めの柔らかい生地でオーバーパンツかズボンを頼んだ方がいいかも、と思いついた。
「……もうそろそろ動き出しそうだよな。その時はキキリ、頼むな?」
『ギャウー』
皆を起こさないように囁き声でそう頼むと、抜き足差し足で近寄り、お座りしたユーラを抱き上げた。
すると、ムウ!というような顔をして腕でパシパシ叩かれてしまった。
その気配にロトムとクオンが身じろぎするのを感じて、そろそろと外へ出てからご機嫌斜めそうなユーラをさとす。
「ユーラ、あそこだと皆を起こしちゃうから。ホラ、ベッドでは自由にしていいから、ね?」
ポンポン、と抱っこした背中をそっと叩くと、不満そうながら突っ張っている手を降ろしてくれた。
表情はまだ口元と目でしか判断できないけど、本当に感情豊かになったよな。手足はもう自由に動かしているし、子供らしい我儘も出だしたしな。目が瞬くだけだった最初の頃と比べたら、一気に情緒面が成長したよな。やっぱりサラマンダー達と顔を合わせたことが切っ掛けだったんだろうな。
椅子から降り、頭を下げるシェロに苦笑しながらテーブルの脇に設置してあるユーラ用のベビーベッドに降ろすと、さっそくコロンと寝がえりをうっていた。
このベビーベッドは最初からかなり大き目に作ってあるので、ハイハイ、つかまり立ちもある程度するスペースもある。きちんと柵がついているし、安心していられるのだ。
『……とても成長なされましたね。さすがイツキです』
「へ?なんでそこで俺になるのかな。まあ、確かにユーラに関しては俺が色々切っ掛けになったりしているけどさ。こうしてユーラが赤ちゃんの状態で安心して誕生できたのは、ユーラを見守ってくれている、神獣や幻獣、それに精霊達のお陰だと思うよ。皆が世界樹やこの世界のことを諦めなかったから、こうしてユーラが生まれて頑張って成長しているんだよ」
世界がゆるやかに終焉に向かっていたのに、俺だけの力でここまで持ち直せた筈はない。皆がどうにかしたい、と希望をもって諦めずに自分にできることを積み重ねていたからこそ、今の回復があると思うのだ。
『……本当にイツキは不思議な人ですよね。初めて会った時から、まだ今でもどんな人が私にはつかめませんよ』
なんだよ、それ!と、シェロと初めて出会った頃を思い出しながら盛り上がっていると、子供達が次々起きて来て、それからシェロと一緒に皆で森へと向かったのだった。
約二週間開けてしまい、お待たせしてすみませんでした<(_ _)>
体調は良くなってきたのですが、気力が伴わず、文章が書けずにいました。
これからものんびりとお待ちいただけるとうれしいです。
不思議な植物まで辿り着きませんでした……(いつものこと?)なので一応1にしてみました。
次回2じゃない副題をつける時は1を消しますね!
新しい子の登場はもうちょっとだけお待ち下さい。どうぞよろしくお願いします<(_ _)>




