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65 そうだ、川へ行こう!

 ドワーフ達の洞窟でサラマンダー達とユーラが挨拶をした日から、ユーラは一気に動き回るようになった。

 表情はまだほとんど変わらないもののぼんやりしていた目に意思が宿り、手足を動かすだけでなく自力で座れるようになっていた。

 それを歓迎したかのように、聖地の世界樹の周囲では虹色の花が咲き乱れている。


 まあ、最初から乳幼児というより一歳児ほどの大きさだったからな。体の成長はほとんどないけど、元々の体格的につかまり立ちをしてもおかしくないくらいだったし。


 なのでいつハイハイをしだしてもおかしくない、ということで大慌てでドワーフ達に家の床に手すりを設置して貰った。

 その日からも五日が経ち、連日大雨が降ることもほぼなくなってきていた。



「今日も雨かー。そろそろ雨期も終わりがみえてもいい頃だよな。雨期が終わったら、畑に新しい種をまかなきゃな」


 今日はしとしとと朝から雨が降り続いていて、今日来た子供はロトムとクオンだけだったが、そのロトムとクオンも聖地から戻って昼食を食べて今は昼寝中だ。

 ユーラを真ん中に、右にクオン、左にロトム、そして足元にキキリが丸くなって団子になって寝ている姿はとてもかわいらしい。


 ユーラがもふもふな毛並みや尻尾に手を伸ばすのは、もしかしたら俺の影響があったりするのか?……ずっと一緒のキキリとも触れ合ってはいるけど、俺ももっとキキリも撫でまわそう。うん。


 目に意思が宿りだした頃から、ユーラは子供達とも積極的に触れ合うようになった。家にいる時は俺におんぶされているよりも、家の床に座り、子供達と一緒にいるようになったのだ。


 まあ、遊ぶとは言っても皆が座っているユーラの脇に代わる代わる座って自分の毛並みで遊ばせてくれているだけだけどな。まあ、仲がいいのはいいことだよな。


 ユーラが更に手がかからなくなって来たので、雨期が開けたら後回しになっていた畑の種まきや適当になっていた食事の改善にも手をつけようと思っている。

 畑は春には元々雨期の都合ですぐに収穫できる葉物野菜と、雨期でも影響の少ない芋と小麦しかまいていなかったので、今年も新たにケットシーのシンクさんが手に入れて来てくれた種をこれから撒く予定だ。


 せめてなー。トマトとかあれば、ハーブは似たような香草が森にあるからトマトソースとか作れたんだけどな……。さすがに塩と果汁の味付けだけだと、そろそろ飽きて来たんだよなぁ。


 岩塩は定期的にアーシュがとってきてくれているので塩には困らないが、それ以外の調味料が今だにマジックバックに入っていた少しの香辛料とハーブのような香草だけなのだ。


 卵は当然無理だからマヨネーズは作り方知ってたって作れないし。醤油と味噌は、豆っぽい野菜はみつかりそうだけど、麹を作るなんて俺には無理だしな。後はやっぱりトマトソースとせめて胡椒と砂糖が欲しいよな。今年は胡椒と甜菜のような植物を頑張って森で探そうかな。


 食材が基本肉と少しの野菜と果物なので、やっぱり飽きてきているのだ。


 肉……せめてたまには魚が食べたいよなぁ。もう一年以上食べてないし……。ってんん?そういえば、森の外の池があるんだから、森の中に小川があるはずだよな!聖地の世界樹の泉には生物は生息していなかったけど、川になら魚とかカニとかいるんじゃないか?


 なんでそこに俺は一年も気づかなかったのか……。川魚の泥臭い臭みが好きではなかったけど、今なら塩を振った串焼きをとても美味しく食べられる自信があるぞ!よし、ユーラも子供達と遊べるようになって来たし、雨期が明けたら川へ釣りに行こう!


 魚が食べられるかも!と思ったら、居ても立っても居られなくなり、子供達が昼寝から覚める前に、と俺用に作って貰った雨具のポンチョを身に着けると、衝動的に駆け足で釣り竿の製作をドワーフ達へ頼みに行ってしまった。

 ただ家に戻ると、キキリも連れずに一人で森に出たことを心配したと、昼寝から起きていたクオンのご機嫌をとるのに苦労することになった。


 それでも訓練から帰って来たドライに森に流れる川があるか、そこに魚がいるかどうかをしっかりと確認し、晴れたら一日訓練を休んで貰って案内して貰う約束をしっかりととりつけたのだった。




「よーし!川へ釣りに行くぞーーー!今日はいつもと違う場所へ行くから、皆もはぐれないようについて来るんだぞ?」

『『『『『『はーい!(ワンッ!)(ニャー!)』』』』』』


『って、案内するのは僕なんですが。イツキこそ張り切りすぎて、一人ではぐれないで下さいね?』

「お、おお。今日はよろしくな、ドライ」


 まだ雨期の終わりが近づき、今日は雨期の晴れ間で久しぶりに快晴だった。

 勢いで頼んだ釣り竿はドワーフ達が二日で仕上げて届けてくれ、ルアーのない、竿に切れにくい繊維の糸と釣り針と浮き代わりに軽石がついているだけのシンプルな釣り竿だが、今の俺にとっては何よりの宝物だ。


 釣り竿が出来上がるのと晴れる日を待ちながら考え続けた結果、ハーブ塩を思い出したのでスプライト達に協力して貰って家の周囲で集めたハーブも朝からしっかりと干している。これで魚も手に入れられたら、食生活も少しは改善されるだろう。


 そう思うとウキウキしながらドライの後をユーラをおんぶして歩いていると、隣を歩くキキリから呆れたような視線が……。


「キキリ、今日はドライと一緒に子供達の護衛をお願いな。キキリにはいつも頼んでばっかりだけど……」

『……いい。でも、はりきりすぎ……注意。ギャウ!』

「う……。気を付けます」


 少しかがんでキキリの頭をなでると、少しだけうれしそうな顔をした。

 ユーラはまだ声を発することはほとんどないが、キキリは最近少しずつ話せるようになって来た。キキリのお父さんのドラゴンが、せめて早めに話せるように、とくれた力がキキリに馴染んで来て話せるようになって来たらしい。

 ただ、さすがにまだ発音はたどたどしく、それがキリッとしたキキリの雰囲気とは反対で、そのアンバランスさがキキリがまだ生まれたばかりの子供だということを俺に思い出させてくれた。


 いつもキキリには何かと頼ってばかりだもんな……。うう。でも、今日の釣りは諦められない。ごめん、キキリ。


 今日は朝から午後から釣りに行く予定だったので、子供達には日課の聖地でも水浴びではなく花畑で遊んでもらい、少し早めに昼食を食べて昼寝もしてもらっていた。それもこれも俺が今日は川へ釣りに行く為で、その分元気が余っている子供達が川で水遊びする監視は大変だろう。


 いつもとは違う方向へしばらく歩いて行くと、徐々に川のせせらぎが聞こえ出し、先導していたドライが止まった。


『ここら辺がいいかな。これ以上森の外へ行くと、水深が深くなるからね。ここら辺にも確か魚はいると思うけど、空から見ただけだったから分からないよ、イツキ』

「おお、ありがとうな、ドライ!このくらいの小川なら、子供達も危なくなく遊べるな。じゃあ俺は少し上流へ行って釣りをしてみるな!」


 水深も深い場所でも俺の太ももくらいで川幅もニメートルもない、子供達を連れて一緒に来るには絶好の小川だった。

 ただ子供達が騒いでいると魚も逃げるだろうから、釣りをするなら少しだけ離れた場所がいいだろう。


『見える所にしなよね。子供達がイツキの方へ行ったら危ないからさ』

「分かってる!じゃあ、ユーラのことお願いな、ドライ、ロトム、キキリ。じゃあ、行って来る!」


 どちらが子供か分からない会話をして、ユーラをロトムとキキリの真ん中へ下ろすと、釣り竿を片手に誰よりも一番に見えた小川に駆けだした。


 ……いや、大人としてどうかと思うけど、今日だけは勘弁してくれ!魚、釣るぞーー!







そういえば調味料を作ってないな→肉しかないし→そういえば魚食べてないな!

と、魚釣りになりました( ´艸`)


キキリが少しだけ話せるようになりました!ユーラの成長具合はまた次回で!

どうぞよろしくお願いします<(_ _)>


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