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63 神獣と幻獣の変化とドワーフ達の洞窟へ

 クオンの家出騒ぎは、結局一泊のお泊りで終着した。

 俺も子供達は預かっているけど、神獣や幻獣の大人は、実はアーシュとオルトロス、それにドラゴンしかまともに話したことは無かったので、いい機会だと思い、戻る前に神獣の子育て事情の方を聞いてみた。


『それなんですけどねぇ。イツキさんがいらっしゃってから、子供の成長が全く違うので、以前の子育てとは全く違うのですよねぇ』

「へ?そ、そうなんですか?俺はただ子供達を預かって皆で楽しく遊んだりしているだけなんですが、一体何がそこまで違うんですか?」


『イツキさんも知っておられるように、神獣、幻獣の子供は親の能力を受け継いでそのまま生まれます。当然、そこにこの世界の知識も含まれるのですがねぇ。生まれた時は、その知識だけが詰まった状態で、自我はありませんのでねぇ。自我が出てくるのは、身体が大きくなり、ある程度精霊の力も馴染み、能力を使えるようになってからでしたからねぇ』


 あ、ああっ!そういえば、ドライにだったか?そんな説明をされていたような……。その時はそんなものか、としか思わなかったけど、俺と一緒にいると自我が出て来るのなら、もしかして最初の時点から子育ての仕方が変わったってことなのか!う、うわぁ……。


「え、ええと。じゃあ、もしかして子供達が自我に目覚めたのに能力を使えない、ということはもしかして問題になっていたりするのですか?」

『ああ、いいえ。自我が目覚めれば、自分で力を使う、ということの意味をきちんと考えられるようにもなりますので、能力が馴染むのが以前より格段に早くなりますからねぇ。お陰で、短期間で成長するのですが、それでも今回は私が焦り過ぎましたかねぇ。私もクオンともっと向き合って、一緒に成長していきたいと思います』


 そして一族の他の子供達の影響も聞いてみると。なんと、クオンにつられたように不安定だった自我が確立し、それに合わせて能力が馴染んで一気に成長が始まったそうだ。たださすがに急激に、という訳ではなく、今まで五年かかっていた成長がクオンが生まれてから四年で成長するようになった、くらいの変化らしいが、それでも子供達の成長に神獣達は湧きたっているそうだ。


 守護の神獣や幻獣は守護地に対して一人だけど、やはり一族の成獣した神獣や幻獣の人数で、守護地の安定が全く違う。

 だから守護地が守護する聖地にユーラとカーバンクルという守り人と守護者が幼いとはいえ揃ったから、一気に安定させて世界から人の争乱を収束させよう!という動きが神獣や幻獣達の間で活発になっているそうだ。


 よろしくお願いします、と頭を下げてクオンのお母さんは帰って行ったが、俺の『魂のゆりかご』の力が神獣や幻獣たちにとっても初めての物だということをやっと実感出来た気がした。



 まあそれでも何が変わる訳でもないんだけどな。とりあえず、子供達一人一人に寄りそうようにするしか俺には出来ないもんな。


「あ、そうだ。前に蜂蜜を差し入れてくれたから、ミードを作ったんだったな。発酵させすぎるのも怖いから、今からドワーフ達の処に持って行こうかな。ついでにファーナの木が生えているか見回りたいしな」


 クオンがお泊りして帰った翌日の今日は、久しぶりに曇りで小雨がちらつく天気だった。

 なので久しぶりにケットシーやクー・シーの子供達もやって来て、さっきまでは賑やかだった。でも、午後から雲行きがあやしくなり、さっき早めに親御さん達が迎えに来て全員を見送ったところだった。


「なあ、ドライ、ちょっとドワーフ達の処まで付き合ってくれないか?雨が降る前にささっと戻って来れるよな?」

『そうですね。急げば間に合うかもしれませんし、小雨くらいなら大丈夫でしょう。ユーラには作って貰った雨具を忘れないで下さいね』

「分かったよ。じゃあ、準備するから」


 ミードは前にテレビで作り方を見て、自分でも調べて一度だけ作ったことがあった。ただドライイーストなどないし、他の酵母を入れるのもさすがに躊躇われるから、今回は蜂蜜と水、それに少しだけ果実酒を入れて日陰に放置しておいた物だ。


 本当は瓶で作った方がいいんだけど、瓶はドワーフ達に頼んではみたものの酒は樽で!と言われたしなぁ。まあ、しゅわしゅわしている音も聞こえているし、試した感じ、きちんと出来ていると思うんだけど。ただ酒精は少ないし保存にも不安だから、さっさとドワーフ達に飲んじゃって欲しいんだよな。


 ユーラに雨具のポンチョを着せて抱っこ紐でおんぶにし、ミードの樽をマジックバッグへ入れるとキキリとドライを連れて森へと歩き出した。


「まだ夕方には早いのに、かなり暗くなって来ているな。これは早く戻らないと、また雨が強く降りそうだな」

『ギャウー。ギャ、ギャギャ!』

「ん?おお、ファーナか!最近では良く見かけるよな。カーバンクルも喜ぶから、ありがたいけどな」


 少し森へ足を踏み入れた場所でキキリがファーナの木を見つけ、果実はしっかりと収穫する。

 ファーナの木は、カーバンクルが世界樹へ引っ越し、結界を張るようになってからは更に森で見かける頻度が増していた。一度に三つの果実が採れる為、カーバンクルへ持って行っても少しずつカバンの中にファーナの果実が溜まって来ている。


「アーシュに少しはとっとけって言われたけど、何に使うんだろう?もしかしてユーラが食べるようになるのかな?」


 おんぶしているユーラに真珠色に輝く果実を近づけてみたが、全く反応せずにじっと見つめ返されてしまった。


 まあ、確かに果物を食べるのには早いよな。もうちょっと大きくなったら出してみよう。


「そうだ。瓶が出来て来たら、少しだけファーナの果実でもお酒を作ってみようかな。食べるには勇気がいるけど、お酒なら味見してみたいかも?」

『そんなに気になるなら、むいて食べてみればいいのに。食べられるって父さんも言ってたじゃないか』

「そうなんだけどさー。やっぱり食べ物には見えない色だからなー。おおっ、あそこにもあったぞ!もしかして雨期だから余計に生えているのかな?」


 結局ドワーフ達の洞窟に着くまでに、ファーナの木は三本見つかった。ユーラが誕生してからこの森にも以前よりまして精霊達の姿が増え、あちこちに今まで見なかった薬草などもどんどん見かけるようになって来ている。

 守護地の森も世界の安定に合わせて順調に活性化しているのだろう、と容易に察せられた。


 守護地の外の森も活性化し、人の暮らしも安定するといいよな。戦争ばっかりしているようじゃ、絶対食べ物も不足しているだろうから、森が豊なら動物も増えるし森で採れる食べ物も増えるよな。……この世界の人の為に俺が出来ることはないけど、この世界が安定に向かうようにしっかりとユーラと子供達を見守らなきゃな。


 もしかしたら他にも不思議な植物が森に生えて来ているかもしれないし今度アーシュに聞いてみよう、と思いつつ見かけた果物を採取しつつドワーフ達の洞窟へと向かったのだった。






ドワーフ達の洞窟まで長くなったので次回に回します。

明日も恐らく更新できると思います!

(寝てやっと少し動けるようになってきました)


どうぞよろしくお願いします<(_ _)>


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