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116 ニキニキとぬこぬこ

 ドライに台所だけでも採取を頼んだが、やはりすぐにニキニキに台所を占領されながら朝食を食べていると、集まって来た子供たちが楽しそうにニキニキを刈りだした。


『うわっ!さっき刈ったのに、また生えているのっ!去年より、生えるの早いよ!!』

『うん、早いね』『これは刈るのは無駄だな』


 広場でえーい!とクオンが風魔法で一面を刈り取っても、次の場所を刈っている時には後ろでにょき、とニキニキが顔を出し、振り向けば既に一面のニキニキ畑。

 そんなことを繰り返している間に来たケット・シーとクー・シーの子供たちはにょきっ、と顔を出すニキニキの上に寝転び、あっという間に伸びるニキニキに背中をふんわりと持ち上げられるのを楽しんでいた。


「……しばらくどこへ行ってもニキニキに覆われてそうだけど、まあ、子供たちも楽しそうだし、いいか」


 去年は森の中でもニキニキは見かけたが、森の中は木の根が張り巡らされている為、空いた土地にしか群生はしていなかった。

 そのことから考えると、空いた土地に群生する習性があると予測すると、森の中にぽっかりと、しかもそれなりに広い面積が開けている家の前の広場など、ニキニキからしたら絶好の群生場所なのだろう。


「おーい、ニキニキはもうそれくらいにして、聖地に行くよー!」


 さすがの子ウサギ三兄弟も目の前の惨状に驚いている様子を見ながら、とりあえず日課に出かけることにしたのだった。




「聖地にはニキニキが生えてなくても、まあ当然か、って思っただけだったけど、ククルカンの結界の中にも生えていないんだな?」


 ほぼニキニキに覆われた聖地への道を子供たちと一緒に歩き、結界を越えて聖地へ入ると白い花に覆われた花畑へと切り替わった視界には、子供たちも不思議そうにはしなかった。

 今では白い花以外の花も聖地で見られるが、聖地に生える植物は特殊なのか、ここでしか見ない物ばかりだ。季節の精霊の力を宿した植物は、聖地では今まで見たことはなかった。


 でも、いつものように子供たちと泉で別れ、今日の当番のツヴァイと一緒にいつものようにククルカンの結界を越え、きょろきょろと辺りを見回して見たが、ニキニキの姿?がなかったのだ。


『ここは温かいから、ここじゃあ生えないんじゃないか?』


 おおお、ツヴァイにまともなことを言われて納得したぞ!まあ、そうだよな。場所によって生える植物は違うんだから、ここでこの時期に生える精霊の力を宿した植物は、ニキニキじゃない、ってだけだよな。


 とりあえずここではあのにょきっ!と生える姿を見なかったことに少しホッとし、いつものように巣に向かい卵を撫でる。


「おお、雨期も終わって、また体温?上がったんじゃないか?おお、元気だな。元気に生まれて来いよー」

『うううう……。ありがとうございます、ありがとうございますぅ』


 雨期で大雨が降る時は、やはり卵も少し冷たく感じたが、雨期が明けてまた温かく、そしてまた少しだけ大きく成長した気がする。


 雨期に入る前にもう少しで生まれるかと思ったけど、まあ、急いでないしな。うん、元気なのはいいことだ!


 撫でるとまるで跳ねるかのように元気に動く卵をしばらく声を掛けつつ撫で、未だに巣の傍で泣き続けているククルカンに一応一声掛けてからウキウキと沼地へ向かう。


『まぁた行くのかよ!毎日見たって、たいして変わりないって』

「そうだけど、いいだろう。今日は魔法も掛けないし、ちょっと上から見るだけだって」


 ブツブツ言いながらも俺の前を歩いて、たまに上から襲ってくる虫を蹴散らしてくれているツヴァイをなだめながらもう慣れた沼地への道を歩きつつ、辺りを見回して精霊の力を宿した植物を探す。


 雨期にはいきなり襲われたからな。雨期明けにも、何か生えていても不思議はないしな。


 ついきょろきょろしながら歩いて足元が疎かになり、つまずいて転びそうにはなったが、他には変わった植物を見ることなく沼地へ到着した。


「おお、良かった。今日も元気そうだな。ここら辺はもう暑くなってきているし、どんどん伸びてくれよー」


 沼地を埋め尽くした蓮の花のような花は、やはりいつの間にか姿を消し、ウィンディーネやスプライト達に守られたおかげか、稲はすくすく育っている。

 分けつした茎も更にしっかりと太く、そして背丈をぐんぐんと伸ばしている姿は、日本で見ていた水田の稲にそっくりだった。


「ウィンディーネ、スプライトもありがとう!何か変わったことはあったか?」

『ーーーー、ーー!』

『ーーー、ーーーーーー!』


 声を掛けると水面からウィンディーネが顔を出し、湖畔からはスプライト達が手を振ってくれた。


『なんにもないってさ。なあ、イツキ、もういいだろ』

「分かったよ、ツヴァイ。じゃあ、また明日も来るから、よろしくな!」


 せかすツヴァイに、また明日と精霊達に手を振って引き返そうとした時、ふいに足元にぷにっとした感触が触れた。

 なんだ?と思って下を見ると、いつの間にか足元が黒い苔のような植物に覆われていた。


「お、おお?来た時、こんな苔っぽいの、生えていたか?」

『なんだよ、イツキ。ん?今、なんかぽこって増えなかったか?』


 じーーっと足元を見ていると、少し離れたツヴァイの足元にもぽこっと黒い苔が一瞬で出現した。

 そしてみるみるうちに辺り一面がぽこっと生えて来た黒い苔のような植物に覆われてしまったのだった。


「……なあ、スプライト。これも、精霊の力を宿した植物、だよな?」

『ーーーー!ーーーーーーーーーー!!』


 近くで楽しそうに踊り出したスプライトに、しゃがんで黒い苔のような植物をつい指先でつつきつつ聞いてみると。


『そうだってさ。なんか、ぬこぬこ、っていうらしいぜ。この時期にしか生えないってよ。害はないらしいから、さっさと帰ろうぜ』

「ぬこぬこ?……なんかぷにぷにしているし、なんかついずっと触っていたくなるような感触なんだけど」


 ぬこぬこ……ぬこ、って、まさか猫、って意味じゃないよな?なんだかこのぷにぷにが、何かの感触に似ているんだよな。


 ツヴァイにせかされつつ、ついついぷにぷにと黒い苔のような植物をつついていると。


「ああっ、そうだっ!何か気持ちいいこの弾力性は、肉球だっ!ケット・シーの子供たちの触らしてもらった肉球の感触にそっくりなんだっ!やっぱりぬこぬこ、ってねこねこ草って意味なんじゃないか?」


 ついくせになるぷにぷに感に、一つ採って握ってみたが、なんとも言えない弾力性がくせになりそうだった。



 つい無言でぷにぷにしていたら、じれたツヴァイに嘴で釣り上げられ、そのまま走られそうになって慌てて下ろして貰い、そのまま急ぎ足で聖地へと戻り、いつものように日課を済ませて家へと戻ったのだった。が。


 その翌日、ニキニキに覆われた広場のところどころにぷにぷにとした黒い苔、ぬこぬこの姿を朝起きて発見し、叫び声を上げることになったのだった。







ついニキニキは続けてしまいます( ´艸`)変な植物がくせになります( ´艸`)

今年?はこのまま夏に続きます!(いつも雨期から秋に飛ばしていたので)


そしてとうとう今週木曜日、1/30日にGCノベルズさんより1巻発売となります!!

風邪なのか花粉なのか……ですが、水曜、木曜更は新をしたいな!と思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>

(特典SSも4本書きましたのでGCノベルズさんサイトでチェックしていただけるとありがたいです)


ブックマーク、評価もありがとうございます!励みになっております。

あとこっそり他社ですが今月は初書籍化作品のコミカライズ版13巻も発売しましたので(1/20ごろより)そちらも良かったらよろしくお願いいたします<(_ _)>(110万部突破ですってよ、奥さん)


挿絵(By みてみん)

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