夢と微笑みの裏。
11月20日に親戚が集まり、11月21日にシュエットも数日間の家出を終えて帰っていった。
また御屋敷に住む者たちとの穏やかな日々が続いていた。
レオとの魔法練習も順調で、紙を浮かせることができる程度だったが、上まで飛ばしたり、手元に持ってこられるようになった。
次はもっと重たいものを動かせるようにと、大幅レベルアップで本を浮かせる練習中だ。
11月30日になった日、次のステップで魔法薬の実戦をスタートすることになった。
0時少し過ぎた頃…キトが地下室を訪れると、普段は部屋の隅にあり、物が積み重なって使っていないようだった大きなテーブルが部屋の中心の方に移動しており、そのテーブルには色んな大きさの鍋や薬の材料、初めてみる不思議な道具、魔法薬の本が綺麗に並べられていた。
地下室にはレオの姿はなく、キトは並べられた道具を興味深そうに眺める。
ふと気になる物が目に入り、じっくりと見る。
それは大きさの違う黒猫の置き物…
“これは…何に使うんだろ……”と手に取ると重みがある。
「それは重りだよ」
集中して置き物を眺めていると、レオが後ろから声をかける。
「あ…レオさん…!すみません…勝手に触って…」
慌てて手に取った重りをテーブルに戻す。
「かまわないよ、危ないものではないから」
そう言いながらコトッと瓶をテーブルに置くレオ。
「ルナは本当に猫好きで魔法道具もわざわざ猫仕様にしてたんだ。だから重りも黒猫の形に」
「ふふ、時計も椅子も机も猫が描かれていたり、彫られていたりする物が多いですものね」
笑いながら地下室に置いてある木彫りの猫時計をみるキト。
「そうだね、これだけあれば猫屋敷と言われるのも頷けるよね…―」
キトと話しながら、レオは材料が揃っているかを確認していたが、顔を上げ「さて、準備できたよ」と声をかける。
「ありがとうございます!ひいおばあさまみたいに喜んでお鍋をひっくり返さないようにしないとですね……」
と緊張した表情で言うキト。
「はは、ひっくり返してもいいけど、怪我だけはしないでね?」
とレオは微笑む。
「はい…!」
キトは気合いを入れるように袖を捲り、テーブルの前に立った。
テーブルの前に立ったことを確認すると「まずは“眠り薬”を作ってみようか。ルナも最初ここから始めたから」とレオが言う。
「はい…」
キトは上手くいくかどうかとドキドキの状態だ。
「これが必要な材料、本と照らし合わせて見てみて?」
テーブルにある材料たちを指し示しながら説明するレオ。
キトは言われた通り、眠り薬について書かれているページを開き、メモするための紙と一緒に並べた。
「…説明していくね?まず…この粉は蛇の鱗をすり潰したもの」
キトに粉が見えるように木でできた丸い器を少し傾ける。
「…蛇の鱗?!」
「そう…キトさんも催眠にかけられたでしょう?元々蛇たちには催眠をかける能力があるとされていて、それでもしかしたら眠り薬に効果を与えるのかもしれないね」
「なるほど…」
「…それでこれがシュラーフという植物。元々この植物の香りには安らぎの効果があって、不安が強い人やストレスが溜まっている人に癒しをもたらしてくれるから、そういう人の治療にも使える植物だよ」
鉢植えに手を添えながら伝える。
シュラーフは緑色の大きな葉っぱが特徴的で、手のひらより少し大きいくらいだ。
葉は水分を含んで少し厚みがあり、マシュマロのように柔らかい。
「この植物…誕生日にもらった本にありました…!」
と言いながら、一生懸命レオの説明を紙にメモするキト。
「確かにあの本にも書いてあったね。…香りを嗅いでみて?嗅いでも寝てしまうことはないから」
キトはシュラーフの葉に顔を近づけ、すぅっと香りを嗅ぎ「…良い香り…確かになんとなくホッとする感じがしますね!」と言う。
「そうでしょう?…そしてこれがソリーム蜂の蜂蜜。ソリーム蜂は聞いたことあるかな?」
キトが重りを見ている時に置いた瓶を前に出すレオ。
「ソリーム蜂…この前読んだ本に出てました!…確か紺色の身体に淡紅色の縞模様があって、星のように輝いているんですよね?」
「その通りだよ、よく本を読み込んでいるね?この蜂は自分の身を守るため敵に針を刺して、ぼんやりとさせ身体を麻痺させるんだ。その間に逃げるためにね。この蜂が作る蜂蜜は麻痺まではしないけど、身体の力を抜く効果がある。作っている蜂たちにとっては食料として蓄えているんだけど、他の生き物たちには別の効果を与えるみたいだね。食べ過ぎると力が抜けてぐったりしちゃうけど、少し舐めたり紅茶とかに入れるくらいならリラックス効果になる。美味しいから食べてごらん?」
瓶の蓋を開けると、通常の橙色の蜂蜜とは異なる淡紅色の蜂蜜が入っていた。
「…わぁ…綺麗な色ですね…」
そう言うキトに、レオはティースプーンを差し出す。
キトは受け取ったスプーンで掬い、少し食べてみる。
「ん…甘い…!ふわっと香りもする……美味しいですね…♪」
うっとりと幸せそうな表情を浮かべるキト。
「ふふ、美味しいよね。この蜂蜜は魔法薬ではよく使われるんだ、治療用の薬には多く使われているかな……解毒薬や鎮痛薬とかね。忘却薬にも使われるよ…そうだな……あと惚れ薬も」
幸せそうなキトを見て、ふわっと微笑みながら説明を続けるレオ。
「…惚れ薬も…。最初、治療薬をまとめた本を読んだ時にソリーム蜂について書いてあるのを見たんですが……魔法薬を作るためにソリーム蜂の蜂蜜は大活躍なんですね…!」
レオを見ながら、ニコニコの笑顔を送るキト。
黙って微笑みを返した後、レオは説明を続ける。
「…眠り薬に必要な材料で、重要なのは今伝えた3つかな。あとはすり潰した胡桃の粉、玉葱の絞り汁…ノンム豆…あとはミルクも混ぜる…。以上だね。あとはこの本に書いてある通りの量、入れる順番や混ぜる回数をしっかり守って…最後は自分の魔力を少し使えば完成。さっそくやってみようか?」
「はい…」と答えて緊張の表情を浮かべるキトに対し、「失敗しても俺が傍にいるから大丈夫。安心して本の通りやってごらん?」と優しい口調で言い、キトに微笑みかける。
「わかりました…!…えっと……まずはお鍋を……たくさん種類があるんですね…」
テーブルに並んだ大きさの違う黒い鍋を眺め、悩むキト。
「鍋は作る量で選べば大丈夫。本にも鍋の大きさごとに材料の量が書いてあるから」
「…本当だ…では、初めてなので一番小さい鍋でいいですね」
縦横直径18㎝程の円い形の一番小さな鍋を手に持ち、目の前に置く。
「キトさんは、堅実だね。ルナは、絶対成功するからどうせなら一度にいっぱい作っちゃお!って一番大きな鍋を選んでたよ」と思い出し笑いをするレオ。
「そうなんですか!ふふ、魔法薬作りにも性格がでるんですね? レオさんならどれを選びますか?」
「俺は必要な量に合わせて選ぶよ。今回は練習だし、キトさんと同じく一番小さいのを選ぶかな」
「そうですか、レオさんと同じなら安心です…!」
と嬉しそうに言うキトに何も言わず、また温かくて優しい微笑みを送るレオ。
キトは、その微笑みを見て…常に冷静で、落ち着いた大人な雰囲気が漂うレオに比べて、はしゃいでしまっている自分は子どもっぽいかもしれないと急に恥ずかしくなり、本に視線を戻し、魔法薬作りに集中しようと気持ちを改める。
「鍋に入れる水は…一番小さい鍋と同じ大きさのグラスに入れる……これかな?」
テーブルにあるそれらしき円いグラスを手にとる。
レオは黙って、彼女の様子を見守る。
「えっと…お水は……レオさん?このバケツに入っているのがお水…ですか?」
床に置いてある木のバケツを指し、尋ねる。
レオは頷き、それを見たあと円いグラスにバケツの中の水を入れ、鍋に注ぐ。
「次は…火をつけて沸騰させる……」
テーブルを見渡すが、火をつける道具もなければ、火をつける場所もなく…困った顔をして立ち尽くす。
「あ…ごめん。準備するの忘れてた」
いつも完璧そうなレオさんでもうっかりすることがあるんだ、と少しホッとした気持ちになるキト。
「道具どこに置いてたかな…。普段は魔法で火をつけてて…」
そう呟きながら、思い当たる場所を探しているレオ。
そんな彼にキトは「…魔法で火をつけるところ見てみたいです…!」と期待の眼差しを送る。
「…いいよ」
そう言い、小さな鍋を手のひらの上に乗せると…鍋を緑色の靄が包み、ふわっと空中に浮かび上がった。
キトは黙って、瞳を輝かせながらレオの魔法に見惚れた。
今度は、浮かび上がった鍋の底にボワッと緑色の炎が現れ、そのままキトの目の前にすーっと鍋を移動させるレオ。
「すごい…浮いたまま火がついている鍋が目の前に……落ちたりしないんですか…?」
不思議そうに浮いている鍋を眺めながら尋ねる。
「俺が魔法を解かない限りはね」
「いつもこうやって魔法薬作りをしているなんて…すごいです…私もできるようになりたいな…」
鍋の炎をじーっと見つめながら呟く。
炎の光が映り、彼女の青色の瞳が緑色に輝いていた。
「キトさんならできるようになるよ。さ、このまま続けていいよ?」
レオは机を挟んだ向かい側に椅子を持ってきて座った。
「ありがとうございます!まずは…沸騰したらシュラーフの葉を1枚切り取ってそのまま鍋に入れる…砂時計をひっくり返し6分計る…」
シュラーフの大きな葉を1枚、テーブルにあった小型ナイフで切り取って手に持つ。
そして、砂時計に目をやるが、数が多すぎてどれが6分の時計か迷ってしまう。
「砂時計も種類があるんですね…大きさは違うみたいですけど…どうやって見分けるのでしょうか?」
「裏を見て…数字が書いてあるでしょう?これが分数なんだ。魔法薬を作る時に便利だから基本的に魔法使いの家庭ならどの家にもあると思うよ」
キトは言われた通り、1つ手に取り、砂時計を持ち上げて裏を下から見てみると数字が書いてあった。
「ほんとだ…!」
キトは数字の6が書いてある砂時計を見つけて傍に置き、シュラーフの葉を鍋に浮かべ、すぐに砂時計をひっくり返した。
そのあと、見逃さないように砂時計が落ちるのをじーっと見つめる。
「ふふ、6分間そんなにじーっと見つめていると疲れてしまうよ?」
と微笑むレオ。
「あはは、そうですよね…見逃したらと思って、つい…」
「この砂時計が便利なところは、光で知らせてくれることなんだ」
「え…光るんですか?」
「そう、砂時計が落ちきる少し前から光って知らせてくれる。しかも、結構強く光るから見逃しにくい」
「そうなんですか…すごいですね…」
改めて興味深そうに砂時計をじーっと見つめるキト。
「だから、ずっと見つめていなくてもその間に準備を進めることができるんだよ」
「では、次の準備を進めた方がいいですね!…砂時計が落ちきったら煮詰めたシュラーフの葉を取り出し、すり潰したくるみをひとつまみ…ノンム豆を7つ、順に入れて今度は2分間煮込む…」
もう一度本を見て、続きを確認する。
すでにくるみはすり潰された状態で置かれていたため、ノンム豆を7つだけ選んで側に準備しておく。
「…次…2分間煮詰めた後は…玉葱1つ分の絞り汁を入れる…か」
と読み上げ、皮が剥けた状態の玉葱を手に取る。
「玉葱を絞れる道具はこれだよ。この中に入れて?」
立ち上がって、道具をキトの傍に持ってくるレオ。
四角い箱のような道具の蓋を開けると、円い空間があり、キトはそこに玉葱を入れる。
レオが蓋を閉じ、「ここを左に回してみて…」と言う。
キトは側面についている時計の秒針のような針を左にぐるっと一回転させる。
すると、ガタガタと音がして針がゆっくり元の位置に戻っていくと同時に、下に置いた木の器の中に絞り汁が溜まっていく。
「おお…!」
再び感心して、キトはつい声が出てしまう。
「この道具はフルーツとかにも使えるよ?」
レオが一緒に道具の針が動くのを眺めながら言う。
「そうなんですね…便利だなぁ♪」
少しの間、絞り汁が溜まっていく様子を眺め、溜まったことを確認すると器を胡桃などの近くに置く。
そして、“他に準備が必要なものは?”と再び本に目を通す。
「次は…蜂蜜を入れる。3番目に大きな重りと高さが同じになるように天秤で量る…」
キトが読んでいる間にレオは天秤を均等にするために同じ器を両方に乗せる。
「ありがとうございます…!この器に重りを入れて、そのあと高さが揃うように蜂蜜を入れていく……3番目って…この猫さんかな…?」
「そう、それだよ」というレオの言葉を聞いて安心し、1つの器に重りを入れ、重さを見ながらもう1つの器に少しずつ蜂蜜を入れていく。
「んー……同じ…かな?……」
しゃがみ込んで、慎重に少しずつ重さを確かめていると…砂時計が光り出し、6分経つことを知らせる。
レオが言った通り、強い光を放っている。
「えっ…あ……光が!」
作業の手を止め、慌てて立ち上がる。
「あれ……光が消えちゃった…」
「落ちきったら自然と消えるんだよ」
「そうなんですね…あ、葉を取り出さなきゃ…!」
キトは焦りながら大きな葉を取り出し、空いている木の平皿に入れる。
続いて“胡桃をひとつまみ…と豆を7つ……”と思い出しながら、すり潰した胡桃をひとつまみ、ノンム豆7つを順に鍋に入れ、2と書いた砂時計をひっくり返した。
「…これで大丈夫ですか?」と不安そうにレオを見る。
「うん、大丈夫。初めてなのに、落ち着いて丁寧にできていると思うよ」と安心させるように微笑み返す。
「よかった…!」と言い、ホッとした表情を浮かべる。
そして、“次は…絞り汁を入れたら…12回大きくかき混ぜ…また2分煮込む……そのあとは蜂蜜入れて3分間かき混ぜながら煮込む…1番小さいスプーン1杯分のミルクと、すり潰した蛇の鱗を3つまみ入れて、2分かき混ぜながら煮詰める……”と次の手順を本で読んでおくキト。
“ん―……とりあえず次は…12回と2分ね…あ、時間大丈夫かな…”
一度砂時計を確かめ、まだ落ちきっていないことを確認し、そのあと鍋に視線を向ける。
鍋の中をみると、透明だった水が紫色に変わり、ほんのり光っているように見える。
「紫色になってる…」と不思議そうに見つめるキトに対し、「それはノンム豆を入れたからだね」と答えるレオ。
「そういえば…ノンム豆って見た目は白いけれど、中は紫色って書いていたような気も……」
と鍋の中を見ながら呟く。
「豆を切ると…ほら、紫色でしょう?」とノンム豆を小型ナイフで半分に切って見せる。
「本当だ!しかもほんのり光ってる…だから鍋の中も…」
紫色になり、トロッとした液体になっている鍋の中をぽーっと見つめていると…
またピカッと砂時計が光り出し…キトは慌てて玉葱の絞り汁が入った器を手に取る。
待機して砂時計の光が消えるのを待つ。
光が消えたことを確認し…絞り汁を鍋に入れていく。
「…入れたら12回大きく混ぜる…1…2……―…12!」
大きな木のスプーンで12回混ぜる。
すると、何かに反応したのかぽわっと雲のような紫色の煙が浮かび上がり、「…?!」驚くキト。
「びっくりした…だ、大丈夫かな…」とまた心配そうにする。
「大丈夫、正しい反応だよ。砂時計をひっくり返して?」
「あ…そ、そうでした…!」
慌てて2分の砂時計をもう一度ひっくり返す。
「今の煙は何ですか…?」
「あれは豆が反応したんだよ、玉葱の絞り汁を入れると必ずそうなるんだ。玉葱の成分とノンム豆の成分が合わさって起こすみたい。何故か本には書いてないんだけどね」
「そうだったんですね…」
キトはもう一度本に視線を戻し、再度手順を確認する。
“蜂蜜を入れたら3分間かき混ぜ…1番小さいスプーン1杯分のミルク…蛇の鱗を3つまみ…2分かき混ぜて……ん?…一番小さなスプーンってどれだろう……この木のスプーンかな…?”
目につく一番小さな木のスプーンを手に取り…首を傾げる。
「それで間違いないよ」と察したレオが声をかけてくれる。
「あ…ありがとうございます!…レオさんっていつもその時に欲しい言葉をくれる気がするんですが…もしかして心の声が分かっちゃうんですか…?」
「はは、心の声が分かったら苦労しないよ。ただ俺は手順を覚えているから、キトさんの行動をみてもしかしたらと思っただけで」
「…ということは、きっと私がいつも分かりやすい行動をしているのですね」
と少し照れたように笑うキト。
話をしていると、2分経つようで砂時計が再び光った。
キトは蜂蜜の入った器を手に取り、光が消えたと同時に鍋に注ぐ。
そして、本にある通り、3分の砂時計をひっくり返し、大きなスプーンでかき混ぜる。
かき混ぜながら、ふとレオに視線を向け…目が合うと相変わらずふんわりと微笑み返してくれる。
キトはガーネットが言った悲しい歴史の話…レオが何らかの約束を果たすために不死の道を選んだこと…彼があまり眠れていないと言っていたこと…色々なことを思い出し、優しい微笑みの裏をつい考えてしまう。
彼が怒っているところも不機嫌そうにしているところも泣いているところも見たことがない…常に微笑んでいるように思う。
もちろん、それが嫌というわけではないけれど…心配になる。
彼は1人で考え込んでしまっているのではないか…
それを微笑みというポーカーフェイスに隠しているのではないか…と。
その微笑みの影に、たまに寂しそうな哀しそうな雰囲気を感じることがあるから…。
そんなことを考え込んでいると、気づいたら混ぜる手が止まってしまっていた。
「キトさん…大丈夫?」と心配そうに見つめるレオ。
それに気づき、キトは我に返り、「あ…だ、大丈夫ですよ!考え事に集中しちゃってました…ちゃんとかき混ぜないとですね、あはは」と慌ててもう一度かき混ぜ始めた。
レオは彼女の少し寂しそうな雰囲気を感じながら、どうしてあげたらいいか迷ってしまい、「大丈夫ならいいんだけど…」と呟いたあと、黙ってしまう。
黙ってかき混ぜ続けていると、3分経ったようで…
混ぜる手を止め、1番小さいスプーン1杯分、器に入ったミルクを掬い取って鍋に入れる。
そして、すり潰した蛇の鱗を、ひとつまみ…ひとつまみと3回繰り返して中に入れる。
2分の砂時計をひっくり返し、またかき混ぜ始める。
本に書いてある内容をすぐに覚えて実践している彼女を見て、レオは感心するように微笑む。
それから「キトさんは落ち着いているね。1発で上手くいくかもしれない…」と呟く。
「え…本当ですか?上手くいきそうですか?!」
寂し気な雰囲気から、嬉しさ溢れる明るい雰囲気に変わるキト。
「うん、ルナは一つ一つ大慌てだったよ?それに…この前遊びに来たシュエットもね?」
「シュエットさんもここで魔法薬作りを?」
「たまに魔法の勉強を手伝っているからね」
「そうだったんですね…!そういえばシュエットさんがお家にいる時に、箒の飛び方をアドバイスしてましたよね…」
「そうだね、彼はいつも飛ぶことはできても止まれなくて。他の魔法でもそう、最初はいいんだけど…途中から集中力が切れちゃうせいか失敗しちゃうんだ」
「ふふ、確かに一緒にお勉強している時も最初は真剣に読んでいるんですけど、途中から気づいたら寝てしまっていたり、他のことしてたりしてました」
「そうだったんだね。何かきっかけがあれば変わるかもしれないね、例えば…」
静かにキトがかき混ぜている手元に視線を落とし、小さく微笑むレオ。
“あ…また……”
笑っているのにどこか哀しい…。
過去に何があったんだろう…。
それとも…ひいおばあさまが亡くなってしまったからなのかな…。
だとしたら…私がその代わりになれたらいいんだけど……。
とまたキトは考え込む。
「今度、シュエットに会ったら集中を続ける方法をアドバイスしてあげて?キトさんならできると思うから」
落としていた視線をキトの瞳に向け、そっと微笑む。
「…わかりました!…私もドジしてしまうことはいっぱいありますが…集中力は少し自信あるので!」
とキトも笑顔を返す。
「ありがとう」と言ったレオの表情は、とても温かく…シュエットを大切にしていることが伝わってきた。
と…話していると2分経ったようだ。
「あ…このあとどうするか見てなかった…!」
キトは慌てて本の次の文章を探そうとする。
「最後は…紙を浮かせた時のように手に魔力を集中させ…今持っているスプーンで、鍋を3回叩いたら完成だよ」
とレオが助言してくれる。
「3回…ですね。ありがとうございます…!」
本をテーブルに置き、集中して手元に魔力を集める…
そして…トン…トン…トン……と3回叩く。
するとポファと紫色の煙が浮かび上がる。
「…できたでしょうか…?」と不安そうに鍋を見つめるキト。
「試してみないとだけど、上手くいったと思うよ」と頷きながら言うレオ。
「本当ですか?!」
キトはぎゅっとスプーンを握りながら、嬉しそうに笑う。
「んー…誰かに試したいけど…どうしようかな。…誰か起きてないか見てくる」
レオは地下室から出て行き、茶トラ猫のアーモンドを連れてくる。
地下室に来たアーモンドはワクワクした様子で、「実験って何するんだ?♩」と言う。
「キトさんが初めて眠り薬を作ったんだ。それを舐めて、ちゃんとできているか試してもらいたくて」
と言い、レオはアーモンドに微笑みかける。
「ふふーん…実験台だな?お嬢さんのためだし、いいよ♩」
アーモンドはにんまりとして胸を張って答える。
「アーモンドさん、ありがとうございます!」
「飲み過ぎるとしばらく起きられなくなるから舐めるだけでいいよ?」
「分かった♩」
レオはスプーンで掬った眠り薬をアーモンドの口元に持っていく。
ぺろっと薬を舐めるアーモンド。
すると、ふにゃあっとしてその場でパタッと眠り込んでしまった。
「キトさんすごいよ、1発で上手くいった!」とレオは嬉しそうに笑う。
「やった…!あ…でも…アーモンドさんはどのくらい寝ちゃうんでしょうか…?」
キトはホッとした気持ちと喜びの気持ちで溢れ…そのあとアーモンドを心配する表情に変わる。
「少し舐めただけだからね。個人差はあるけど、だいたい5分程度かな。長くて10分くらい?」
ホッとした表情を浮かべ、「そうなんですね…よかった」とキトは胸をなでおろした。
「キトさん、魔法薬の才能があるかもしれないね。集中力もあるし、覚えるのも早いから」
寝てしまったアーモンドをベッドに寝かせてあげながら、そう言うレオ。
嬉しそうに「本当ですか?」と返すキト。
「うん、俺はそう思うよ」とアーモンドにブランケットをかけてあげながら、微笑むレオ。
ふと、さっき考えていたことが再び浮かんできて…キトは「あの…レオさんはあまり眠れないと言ってましたけど…眠り薬を作って寝たりするのですか?」と尋ねてみる。
「それはしないかな。この薬は深い眠りについてしまうから。大きな物音とかでも起きられなくなるから。シュラーフの香りを嗅いだりはするけれど」
顔色一つ変えず、淡々と言葉を返すレオ。
「そうなんですね…。あ…あの…どうして眠れないのですか?…心配ごと…?」
反対にキトは心配そうな表情を浮かべながら尋ね続ける。
「んー…眠りには入れても、起きてしまう感じかな。心配ごとで眠りが浅くなるのは確かにあるけど」
レオはキトと目を合わせず、炎の魔法を止め、浮かんでいた鍋をテーブルの上に移動させる。
「そうですか…」
彼を心配し、哀しそうな表情を浮かべる彼女を落ち着かせるように…
「心配してくれてありがとう。…けれど、俺は大丈夫だよ?」
とまた微笑み、彼女の瞳をまっすぐ見つめる。
「…そう…ですか…。…でも……あの…起きてしまうのは何か恐い夢でも見てしまうからですか?…それとも物音で起きちゃうとか…?」
それでもその微笑みの裏を考えてしまい…気持ちを落ち着けることができず、彼のことが気になってついつい質問を続けてしまう。
「…物音もあるね…夢も当たってる」
そう返し…少し沈黙する。
…そして
「目を閉じると、昔のことを思い出してね。それで起きてしまうんだ」と言い…
キトが口を開こうとすると、それを遮るように「…ごめんね。いつか話すから」と呟いて微笑むレオ。
そう呟いたレオから今まで以上に寂しくて哀しい雰囲気を感じ、キトは「はい…」と返事するしかできなかった。
“レオさんは昔…何を体験したのかな…。思い出して眠れなくなってしまうなんて…きっと不死になる道を選んだことと関係があるんだよね……?…話してくれたら嬉しいけれど、まだそこまで私のことを信頼してはいないよね……まだ1か月しか経ってないんだもの、当然だよね……どうしよう、なんだか雰囲気を暗くしてしまった…。あ…そういえば”
雰囲気を戻そうと話題を変えようとする。
「あ、あの。今日ガーネットさんが来て誘ってもらったんです。12月3日にシュエットさんのお家に行くみたいで…キトも一緒にどう?って」
自分が命を狙われていると聞いたこともあり、どこか申し訳なさそうに伝えるキト。
「そうだったんだね。ガーネットも一緒なら行ってもいいよ。キトさんも行ってみたいでしょう?」
「え…いいんですか?」
ダメと言われると思っていたキトは、許可をもらえて驚いた。
「夜は危ないから帰る時間が遅くならないようにね?もし遅くなるようだったら、泊めてもらって?」
「わかりました!ありがとうございます、レオさん…!」
とても嬉しそうな表情を浮かべるキト。
「楽しんできてね」
レオもそれを見て、ホッとしたように微笑む。
「はい…!」
「今日は上手くいったし、これで終わりにしようか?キトさん、ゆっくり休んでね。アーモンドのことは心配しなくていいよ。俺からお礼を言っておくから。それと片づけもしておくよ」
「そうですか…レオさん、今日もありがとうございました!」
「うん、こちらこそ。部屋まで送るよ」
そのまま最上階のキトの部屋まで一緒についてきてくれるレオ。
部屋に入り、「レオさん、おやすみなさい」とニコッとキトが微笑むと…
バンッ…と外で何かが破裂するような音が聞こえた。
「え…今の音は……」
不安そうにキトは窓の方をみる。
すると…頬にぬくもりを感じ…“え……”その正体はレオの両手で、耳を覆い隠すようにしてキトの頬を優しく包んでいた。
視線を窓の方からレオの方に向けられ…彼の美しい緑色の瞳と月明りに照らされて輝く金色の髪に心を奪われる。
彼は真剣な表情をしていて、黙っている。
“え…えっ…これはいったい…どういう状況なのかな……レオさん…真剣な表情してる……”
キトは、ふと脳裏にシュエットの一人芝居が浮かぶ。
“これって……もしかして…シュエットさんのご両親みたいに……キス…を?……そ、そんなわけないよね……。…でも…夫婦になったのだからありえるのかな……?”
と考えて顔がどんどん熱くなり、彼の瞳を見ていられなくなってしまい、きゅっと目を瞑る。
ドキドキしながらじっとしていると…何かされる様子はなく、彼の手が頬から離れていく感覚を感じ…“あれ…?”と不思議に思う。
「おやすみ…キトさん」と囁くレオの声が聞こえ…何故かそのまま意識が遠のいた。
力が抜け、眠り込んでしまった彼女をレオはベッドに寝かせた。
少しの間…彼女の寝顔を眺め、きちんと眠っていることを確認する。
そして「ごめんね、キトさん」と呟き…その場を立ち去って行った。
―――――
レオは階段を下り、玄関へ向かう。
玄関前には執事のナイトが立っていた。
「さっきの音は?」
レオは真剣な表情で尋ねる。
「魔除けのかぼちゃが破裂した音です」
とナイトが答える。
「そうか…」
「ほぼ毎日……これは警告でしょうか…?」
ナイトは、無表情のままレオを見据える。
「…さぁ。どうだろう」
レオは玄関をぼーっと見つめながら呟く。
「彼女は…?」
「眠ってもらったよ…」
ナイトの方に視線を向けて答える。
「魔法を…?」
「まぁね…彼女に音を聞かせてしまったからね。今は必要以上に恐がらせたくないから」
とレオは微笑みながら言う。
「…そうですか」
ナイトは変わらず無表情のまま、淡々と答える。
「…今夜は嫌な予感がする。今までとは違う何か……。悪いんだけど…遣いを頼まれてくれるかな?…俺はここを離れない方がよさそうだから…」
もう一度、玄関の扉へ視線を向け、睨みつけるレオ。
「……どちらへ…?」
「…Fのところへね?」
表情を和らげ、微笑んでナイトを真っ直ぐ見るレオ。
「…明日の朝までには戻ります」
ナイトは頷き、彼から視線を外し…キッチンに置いてある自身のコートを取りに行くために歩き出す。
「ありがとう…ナイト」
レオはそんな彼を見ながら、少し申し訳なさそうな表情で微笑んだ。
「いえ…貴方のためなら……」
振り返らずにそう呟き…そのままキッチンのある部屋へ入っていった。
コートを着て戻ってきたナイトは、玄関から出かけて行った。
レオは玄関の横にある窓から外を眺め、ナイトの後ろ姿を見送る。
いつも微笑んでいる彼の表情は、真剣そのものだった。
ナイトが出て行ったのは午前2時頃のことだ。
―――――
ギー…バタンッ
扉が開く音が聞こえる…
ペタペタペタ……
と玄関の側にいるレオの元へ音が近づいてくる。
その音の方を睨みつけるように見るレオ。
「…なんだ。君たちか」
正体に気づいて、ホッとして表情を和らげる。
出てきたのは、2匹の冷蔵室のミニペンギンたちだった。
赤いリボンと桃色リボンをつけた2匹だ。
「俺に用事かな?」
レオは優しく微笑みかける。
赤いリボンをつけたミニペンギンがすっと封書を手渡す。
宛名には、筆記体で<Dear Finley(親愛なるフィンレーへ)>と書かれていた。
レオは封書を裏返し、封蝋に刻印された紋章を見た途端、目を丸くして驚き、石造になってしまったかのようにそのまま動かなくなってしまった。
桃色リボンのペンギンがレオの足をぺちっと叩く。
まるですぐ読めと言っているようだ。
「あ…ごめんね。読むよ」
キッチンに行き、小型ナイフを手に取り、封書の上を切って中身を取り出す。
ペンギンたちは彼のあとをついてきた。
―How's your Lady? The game's starting.―
<貴女のレディは元気?ゲームが始まる>
とたった二言だけ、筆記体で書かれており…
手紙の右端に真っ赤なキスマークがついていた。
“これは……”
レオは手紙の文字を真剣な表情で見つめたまま…考え込む。
2匹のペンギンたちは不思議そうにお互いに顔を見合わせ、またレオの方を向く。
「…ごめん、つい考え込んでしまった。届けてくれたんだね、ありがとう」
ペンギンたちは頭を下げて、役目を果たしたためか黙って冷蔵室へと戻っていった。
そのあとレオは、手紙を眺めながら居間の椅子に座り込み、考えを巡らせた。
―――――
一方、レオに眠らされたキトは…夢を見た。
“雪…?”
何故か…彼女は森の中にいて、雪の絨毯の上に立っていた。
真っ白な雪が降り続いている…。
“…なんだろう、これ……”
ふと下を向くと…真っ白な雪の上が、ぽつぽつと紅く染まっていた。
“え…もしかして…これ…血?…あれ…私怪我したのかな?”
慌てて顔をあげ、腕や手のひらを見るが、傷はなく…
“あれ…誰かいる。…誰だろう”
顔の前に上げた手のひらの先に、ぼんやりと人がいるのを見つけた。
「あの…!すみません…!ここがどこか教えていただきたいのですが…!」
大声で呼びかけるが、気づいていないのか答えも振り向きもしない。
キトは急いで人影を追ってみることにした。
足元には血の跡が続いていた…。
近づいていくとはっきりと姿が見えるようになった。
そして…キトは言葉を失った。
雪が降る中、立っていたのは淡い金髪の少年だった。
顔が見えるように少し位置をずれると、緑色の瞳が見え…少年はとてもレオに似ていた。
“もしかして……レオさん…?”
少し離れた場所にある木の影に隠れて、少年の様子を見守る。
彼は、感情を失ってしまったかのように…瞳は曇り…表情は<無>…。
哀しみや怒りや…喜び……何も感じ取れない表情……まるで心のない人形のようだ。
少年は俯いたまま、大きな木の前に立ち、足元の何かを見ているようだった。
夢のせいか…少年が何を見ているのかは何故か見えなかった……。
そして…彼が口を開き…何か言葉を発したように見えたが…その声も聞こえなかった。
「今…なんて…。レオさん……レオさん!…私、キトです!…何があったんですか?……どうして……レオさん…!!」
少年に駆け寄りながら、呼びかける。
けれど…影がかかるように少年の姿がゆっくりと消えていく…。
「…だめ…待って…!!!」
そのまま、キトは目を覚ました。
“今のは…いったい……。私の…想像かな?……今…何て言ったんだろう……それに………”
窓の方をみると、カーテンの隙間から光が差し込んでおり…
カーテンを開けると…すっかり朝の景色だった。
「もう…朝か」と呟く。
“…あれ?そういえば…私いつの間に寝たんだろ。…昨日…確か……変な音がしたと思ったら…レオさんが頬に手を添えてきて……顔が近くて………って何考えてるのっ!…あれは何でもなかったの…そう、きっとレオさんは私を安心させようとしてくれたの…うん、そう…!”
少し熱くなった両頬をパンッパンッと2度叩いて、切り替えた。
―――――
その日…夢のことが気になってしまい、レオを見かける度についつい目で追ってしまう。
夢を見たことで真っ先に思い出すのは、やはりガーネットが話していた3つの一族が処罰された悲惨な歴史のことだった。
その時、多くの人が被害にあったと言っていた…もしかしたらそれを調べたら何か分かるかもしれない…そう考えて彼女は図書館へと向かった。
レオは子猫のチェスに一緒に遊ぼうと誘われ、広間にいるのを見たから、今は地下室にはいない。
こっそりと図書館に入り込むことに成功し、とりあえずそれらしい本をあれこれと引っ張り出して読み漁る。
しかし、ほとんど同じ内容しか書かれておらず…レオのことを知るヒントは何もなかった。
「ふぅ…」と深いため息をつき、手に持っている本を閉じる。
“とにかくこの一族が酷い行いをしたということは分かったけど…それ以外のことは何も書かれていない……これじゃあ何も分からないな…”
落ち込んだ表情をして、本の表紙をぼーっと眺めながら考え込む。
「キトさんは勉強熱心だね?」
「うぉあ?!レオさん?!」
考え込んでいて気づかなかったが、いつの間にか図書室にレオが来ていたようだ。
彼は椅子に座っているキトの足元で見上げながら声をかけてきた。
「ごめん、驚かせちゃったね」
「い、いえ…こちらこそすみません…!集中していたので全然気づかなくて…」
慌てて開きっぱなしになっている本たちを閉じ、机を整理し始めるキト。
「机が本で溢れているけど…たくさん引っ張り出して何を調べているの?」とレオは首を傾げる。
「…えっと……ガーネットさんから前に聞いた歴史の話を……」
彼女は、作業の手を止めて呟く。
「歴史…?」
「はい…狼と狐と蛇を守護に持つ一族が酷い行いをして…多くの被害者が出たために処罰されてしまったという歴史です」
「どうして…その歴史を調べているの?」
と言うレオの言葉は、いつもの優しい雰囲気ではなく、声のトーンが下がり…棘を感じた。
キトはいつもと違うレオの雰囲気に、心臓がキュッと押しつぶされる感覚に襲われる。
慌てて「気になっただけなんです…そういう話があるって少し話を聞いただけだったので」と返す。
「そう…」
優しい声には戻らず、そのまま彼の声のトーンは低かった。
地雷を踏んでしまったような気がして、キトは焦る。
こんなどこか恐い雰囲気の彼を見たことがない…。
棘を感じる声に…静かな怒りが含まれているような気がしてならなかった。
「で、でも同じことしか書いてなかったので…大昔の話ですし…資料もきっと少ないんですね」
レオから距離を置こうと思い、椅子から立ち上がり、本を元の場所に戻し始めた。
「……そうだね。本に記されている歴史は、書く人の見る角度で変わるし…真実の一部だけをくり抜いていたり、都合の良いように書き換えることもできるから……」
そう…レオは静かに呟いた。
ふと、夢で見た少年の姿が重なる。
“やっぱり…この歴史と関係があるのかな。レオさん…何があったんですか…?夢に出てきたのは…本当のレオさんの姿だったんでしょうか……?……教えて…レオさん”
聞きたいことが心の中に溢れるが…グッと抑え込む。
「…夕飯の時間だから呼びに来たんだ。大変だったら夜中に俺が片づけるから置いておいてもいいよ?」
いつもの優しい声と雰囲気に戻るレオ。
「あ…そうだったんですね!片づけはちゃんとします。片づけ終わったらすぐ居間に行きますね?」
先ほどの棘がなくなり、いつも通りのレオを見てひとまずホッとする彼女。
「わかった、みんなにもそう伝えるよ。それと…今日の練習はお休みにしてもらってもいいかな?少しやりたいことがあってね」
「あ…はい!もちろん!」
キトは、レオに微笑みかけた。
「ありがとう。先に行ってるね?」
と優しい声で言い、レオは図書室を出ていった。
彼が立ち去り、ホッと一息つく…。
まさか自分の行動がレオのことをかき乱してしまうなんて、と少し反省する。
しかし、やはりこの謎を解き、彼の心にある棘を取り除いてあげたい…という思いは消えなかった。
やっぱりあの歴史が関係しているに違いない!…それにしても…彼のやりたいこととはなんだろう…と考える。
そういえば…普段彼が何をしているか、ほとんど知らないな…と改めて顔をしかめてさらに考え込む。
ハッと我に返り、急がねばと考えることを止めて本を戻し…居間へと向かうのだった。
夕飯の時、彼女は緊張していたが、レオはいつも通りで猫たちとともに自分も話に混ぜてくれた。
“怒ってはいないのかな…?”と少し安堵するのだった。
―――――
今晩は練習がないため、そのまま日付が変わる前に眠りについた…。
そして…
また…キトは夢を見た。
今度は森の中ではあるが、雪はなく川が流れていた。
昨日と同じ少年の姿が現れる。
昨日よりも乱れた髪…やせ細った身体…ボロボロになった服を着た姿だった…。
そして、少し身長が伸び、大人っぽくなったように見える…。
“昨日よりもボロボロの身体…腕や顔が傷だらけだわ……どうして…”
少年は川の側を足取り重く歩く…。
髪の隙間から見えた横顔…相変わらず瞳に輝きはなく曇っている…。
歩く速度がどんどん遅くなっていき…そのまま川に浸かるように倒れ込んでしまった…。
“大変…!”と駆け寄ろうとすると…どんどん空間が歪んでいき、少年は再び姿を消してしまった。
また同時に目が覚め…気づくと外はすっかり明るくなっていた。
「まただ…」
リアルな夢に…心が揺れ動く。
一度大きく深呼吸をする。
“何で…急に少年レオさんの夢を見るようになったのかな…しかも必ず目覚めたら外が明るくなっているし……”
起き上がり、目の前にある机を眺める。
ぼーっとしていると、トトントトンと扉を叩く音がした。
布団から出て扉をそっと開けると、足元に白猫のバニラがいた。
「キト様!おはようございます」
明るく可愛らしい声で挨拶をするバニラ。
「おはようございます、バニラさん」
キトも明るく挨拶を返す。
今日はいつもより長く寝てしまっていたようで、朝ご飯の知らせに来てくれたようだった。
一緒にひいおばあさまのクローゼットへ向かい、バニラが洋服を選んでくれた。
身だしなみを整えて、居間へと向かう。
すでに居間には皆座っていた。
朝ご飯を食べながらも、夢のことが離れずキトは浮かない顔をしていた。
一方レオも考え込んでいるのか、猫たちの会話に参加せずに黙っており、今までで初めて何となく空気が重かった。
―――――
朝ご飯のあと、どこへ行ったのか…レオの姿が見えなくなった。
キトも相変わらず浮かない顔で過ごしており、広間の揺れ椅子に座っていた彼女にバニラが気になって声をかけた。
「キト様…?何か悲しいことあったんですか…?」
バニラの声はとても心配そうだ。
「え…いえ、別に何もないですよ?」
慌てて言葉を返すが、バニラは疑うようにじーっと見つめてくる。
「………実は…不思議な夢を見て…」
じーっと見つめられ、黙ってはいられないかと思い、理由を話すキト。
「夢…?」
「はい…あのレオさんは…?」
辺りを見渡して、彼がいないかを確かめる。
「先ほど外に出て行くのを見ましたよ?」
広間には他の猫たちも集まって温まっているので、キトはバニラに自分の部屋へ来ないかと誘う。
バニラは承諾して、一緒にキトの部屋へ向かった。
部屋に入ると、隣同士でベッドに座った。
「それで…どんな夢を見たんですか…?」
心配そうにバニラが尋ねる。
「…レオさんに似た金髪の男の子が夢に出てきて…どれも哀しい場面なんです…。なんだかとてもリアルで…本当にあったことなんじゃないかって思えてきてしまって…」
扉の方を真っ直ぐ見ながら、静かに話すキト。
「そうなんですね…」
バニラも静かな声になる。
「時々…レオさんは微笑んでいるのにどこか哀しい感じがして。力になれないかな…って思うんですけど。まだレオさんに心を開いてもらえてはいないみたいで…。いつか話すからとは言ってくださるんですけど…」
哀しそうな表情になるキト。
バニラもしゅんっとする。
「昨日やりたいことがあるとレオさんが言っていたので、魔法の練習がお休みになったんです。…私の知っているレオさんは魔法の練習している時か…一緒にご飯を食べている時がほとんどで……やっぱりまだ彼のことあまり知らないなぁ、って実感したんです」
「それで、落ち込んでたんですね…」
「…はい、少し」
「……あ!…じゃあ今から地下室に行きませんか?!」
バニラはキトの顔を覗き込みながら元気よく言う。
「…え…何故地下室に?」
キトは首を傾げる。
「今、レオ様はいないんですよ?彼のことを探るのにちょうどいいじゃないですか♩」
なんだかバニラはノリノリな様子だ。
“そんなことしていいのかな…”と思いつつ、彼のことを知りたいと思っているキトは意見に賛同し、こっそりと一緒に地下室に入った。
レオは地下室にもいないため、やはり出かけたようだ。
「レオ様いないですね。チャンスですね!昨日の夜何をやっていたのか、もしかしたら分かるかもしれないですよ?ふふ、何だかスパイになったみたいでワクワクしちゃいますね♩」
やはりバニラは楽しんでいる様子だ。
―――……
辺りを見渡していてもいつもの地下室と何ら変わらずで…何も分からなかった。
最終的にはバニラと大きなベッドに座り込み、ぼーっとするしかできなかった。
「何も分からなかったですね…」
とバニラは少し不貞腐れたように言う。
「そうですね…」
キトはぼんやりと目の前の机を眺めながら呟く。
―…図書室においで……
「え……」
声が聞こえた気がした。
「キト様…?どうしたんですか?」
声の正体はバニラではないようで、不思議そうにしている。
「いえ…声が聞こえた気が……きっと気のせいですね」
首を傾げている様子を見ると、バニラには声は聞こえていないようだ。
―……聞こえているのでしょう?…図書室までおいで?……
やはり声が聞こえる…。
落ち着いた大人の女性の声だ…。
図書室に吸い寄せられるような感覚に襲われる…。
魅了された様子で図書室を見つめるキトを見て、バニラは心配になる。
「キトさん…?」
―…いい子ね…そのまま歩いておいで……
キトは立ち上がり、黙って図書室へと歩き始めた。
心ここにあらずの状態だった。
バニラはとても焦る。
彼女についていこうと立ち上がると…突如バニラは眠気に襲われ、パタッとその場で倒れてしまった。
キトは図書室へ吸い寄せられ、歩き続ける…。
―――……
ガシャンッ…!
キッチンで皿洗いをしていた執事のナイトは身体にゾワゾワと何かが走るような感覚に襲われ、手に持っていた皿を床に落としてしまった。
ナイトは嫌な予感がして、身体に感じる感覚を頼りに根源を求めて居間を出た。
地下室の方から強い魔力を感じ、急いで地下室の扉へと向かう。
扉を開けようとするが、鍵がかかっていた。
キトたちは鍵をかけなかったのに…何故か。
“何故…鍵が……。魔力を感じる……しかも強い……これはレオよりも強い魔力の持ち主かもしれない……彼がいない隙を狙われたか……”
ナイトは魔法で鍵を開けようとするが、力不足だった。
また、庭から斧を持ってきて壊そうとするが…はじかれてしまい、自分自身が飛ばされてしまう。
“いったい誰なんだ…この魔力の主は……まずい…もし敵側の人間だとしたら……彼女が危ない”
ナイトは屋敷中を駆け回り、キトの無事を確かめる。
しかし…無事であってほしいとの願いは裏切られた。
どこにも彼女の姿はなく…猫たちはバニラと一緒に地下室へ入っていくのを見たというではないか…。
この事態を何とかしなくては…と、外出したレオを探しに出かけるために急いで玄関を出て行った。
―――……
図書室へと入ると…キトは奥の棚へと誘導される。
そういえば…奥の棚には近づいたことがなかった…。
初日に誕生日プレゼントを選ぶ時に奥の棚以外ならと言われてから、なんとなく近づいてはいけない気がしていたから…。
―…そう…いい子ね…。そのまま……
相変わらず落ち着いた女性の声が聞こえる…。
心地のよい声だ……。
奥の棚の前に立つと…
白い雪のような光がぽわ…ぽわっと…棚の前に現れ…
突然、奥の棚がガタガタと動き出し、左右に分かれて移動した。
すると、目の前に模様が彫られた美しく立派な白い大きな扉が出てきた。
キトは驚いて、美しい扉に目を奪われる。
―……中へいらっしゃい…
そう聞こえ…扉を開けようとする。
しかし…急に奥の棚が元の位置に戻り…催眠が解けたかのようにキトは我に返った。
ふと振り向くと、レオがいた。
「レオ…さん?」
「何があったの…?」
静かな声で尋ねるレオ。
「いえ…物音が聞こえた気がしたのでここに来ただけで。気のせいだったみたいです」
なんとなく…嘘をついてしまった。
レオのことを探ろうと地下室に入ったことへの罪悪感からだろうか。
「そう…何もなかったならいいんだけど」
レオは静かに言い、黙って図書室を後にした。
ふぅ…っと一息つく。
何故彼に本当のことを言えなかったのか…。
いったいさっきの声は誰で何が起きたのか…。
彼は扉が現れたのを見ていたのだろうか…。
頭の中でぐるぐると考えが駆け巡った。
ナイトはレオを呼ぶために外へ出たが、レオは先に嫌の予感がして戻ってきたのだった。
キトはナイトに連れられ、しばらく彼とともに居間で過ごした。
夕ご飯の場にレオは現れず、“私のせいだろうか…”とキトは落ち込んだ。
彼はキトが地下室を出てから、ずっと地下室に籠っているようだ。
―――――
部屋に戻ってからもキトは不思議な出来ごとについてを考えていた。
パフッとベッドに寝っ転がる。
天井をぼーっと見て、また溜め息をついた。
そっと目を閉じ…
“私のせいだけれど……またレオさんと…どう付き合ったらいいのか分からなくてなってしまった…”と思う。
そのまま目を閉じていると、気づいたらまた眠りについていた。
そして…また夢を見る。
今度は…今までの少年ではなく…猫の姿のレオだ…。
“猫の姿だ…ということはやっぱり…今までの全部…現実のレオさんの記憶……?”
―ねぇ…!ねぇ…ってば!
“女の子…?”
木の上にいる猫の姿のレオに対し、一生懸命話しかける小さな黒髪の女の子の姿があった。
レオは無視をしているのか目を瞑ったまま答えなかった。
女の子は三つ編みのおさげで、見た目だと5~6歳くらいだろうか?
今までは暗い夢だったが、今日は少し違うようだ。
―…ねぇー!!何で返事しないのー!
黒髪の女の子は必死に話しかけている。
それでもレオは無視し続けていた。
いつも優しく言葉を返してくれるレオとは雰囲気が違う…。
―…むぅ…。あなたが返事してくれるまで毎日来ちゃうもん!
ずっと目を瞑ったままだったレオが目を開き少女を見る。
驚いているのか目をまん丸にしていた。
―…あー!やっとこっちを見てくれた!えへへ、返事してくれる日も近いね!
なんとなく微笑ましい光景にキトの頬はつい緩んでしまう。
ところが…レオは呆れたのか飽きたのか怒ったのか…また目を瞑ってしまった。
―…何でー!せっかくこっち見たのにー!
女の子はぷくっと頬を膨らませて怒る。
―…もういいもん!
そして、ぷいっとそっぽを向いて歩いて行ってしまった。
“あ…行っちゃった……”
キトは去っていく女の子を目で追う。
レオの方に視線を向けると…彼も同じように立ち去っていく少女を見ていた。
さっきは棘のある態度だったレオだったが、少女を見つめる彼からは優しい雰囲気を感じた。
キトももう一度歩いていく少女に視線を送り、後ろ姿を見つめた。
ふわーっと夢の中で意識が遠のいていき、また目が覚めた。
気づくと、うっすらと外が明るくなっていた。
カーテンを開けると、今日は空が曇っていた。
“夢で見た女の子…黒髪だった……写真で見たひいおばあさまに雰囲気が似ていたわ……もしかして…ひいおばあさまだったのかな……?”
ひいおばあさまとレオの出会いに想いを馳せながら、曇った空の動く雲をぼーっと眺めた。
そういえば…今日は12月3日、ガーネットとシュエットの家を訪れる日だ。
迎えに来る前に準備をしなければと、気持ちを切り替えた。
―――――
今日の朝ご飯にはレオの姿があり、いつも通りだった。
ふと夢に出てきた少女が頭に浮かんできた。
何度も声をかけているのに無視をされ、頬をぷくっと膨らませていた可愛らしい少女。
“私…何を急いでいたんだろう…レオさんと会ってまだ1ヶ月なのに……。少しずつ知れたら…それでいいんだよね。…きっとひいおばあさまは長い時を一緒に過ごして少しずつ仲を深めていったんだよね。それに…この前みたいに私が嘘をついてしまったら…信頼してもらえないよね”
前に座っているレオを見て、キトは微笑んだ。
レオは視線に気づき、首を傾げた。
「レオさん…私、白状しなければならないことがあるんです…!」
「急に…どうしたの?」
突然、宣言をしてきたキトにレオは驚きながら尋ねる。
一緒に食卓を囲む、猫たちもナイトもシュムシュムたちもキトの方を見た。
「実は…レオさんがお出かけしている間に図書室にいたのは、物音がしたからじゃないんです!レオさんがやりたいことがあるって言っていたことが気になって…地下室に行けば何か分かるかもしれないと思って忍び込んだんです。結局何も分からなくてぼーっとしていたら、声が聞こえてきて…それで奥の棚に近づいたんです。嘘ついてごめんなさい…!」
頭をペコっと思い切り下げる。
「地下室を調べようと言ったのは私です!私がキト様を…!」
とバニラが声を上げる。
他の皆は、目を丸くしてきょとんとしている。
「あはは、話してくれてありがとう」
レオは笑った。
「やりたいことは調べごとがあったんだ。外に出たのも同じ理由。危険な目に遭わせてごめんね?」
と続けて優しい声で言う。
「あ…いえ!そんな!」
キトは慌てて首を振った。
「あのー…話しているところ悪いんだけど、約束の時間なんですけど」
「わ!ガーネットさん?!」
声のする方に視線を向けると、居間の入り口のところにガーネットが腕を組んで立っていた。
慌てて居間にある壁掛けの猫時計を見ると、彼女の言う通り約束していた時間になっていた。
「ご、ごめんなさい!すぐ準備を!」
急いで立ち上がろうとするキト。
「あーいいよ、食べ終わってからで。ただ忘れられてたら困るから声かけただけ」
にこっとガーネットは微笑む。
お言葉に甘えつつ、急いで朝ご飯を食べ、準備をした。
―――――
「気をつけてね!」と御屋敷の皆に見送られ、ガーネットとともに外へ出る。
10月31日、御屋敷に来た時から初めての外出だった。
キトたちの姿が見えなくなるまでレオとナイトは居間の窓から見守っていた。
猫のレオは、窓の側にあるタンスの上に乗っていた。
姿見えなくなったことを確認した後、ナイトは「…外出を許可してよかったのでしょうか」とレオに尋ねる。
「大丈夫だよ…。ガーネットも傍にいるし。それに…夜は外に出ないように伝えているから」
優しい口調でナイトへ言葉を返すレオ。
「しかし…昨日のことがあったばかりで」
ナイトは納得がいかないようだ。
「ガーネットの瞬間移動の能力は、一族の中でも1・2を争うほどの腕前だよ?心配ない。それに…ずっと御屋敷に閉じ込めて…彼女の自由を奪ってしまったら監獄と変わらないでしょう?」
彼を安心させるように、穏やかな口調で続ける。
「……そうですが」
しかし…彼の心配する気持ちは、どうしても収まらないようだ。
少し…沈黙が続いた後…レオは静かに言う。
「…ナイトも…自由を奪われることの辛さは分かるでしょう…?」と。
いつも無表情のナイトが珍しく少し驚いた表情をし、「…はい」と返す。
「だから…これでいいんだよ。…何かあった時、すぐ助けられるようにはしてあるから…安心して?それに…たまには少し距離を置いて…気分転換することも必要だと思うしね」
と真っ直ぐ窓の外を眺めるレオ。
「…分かりました」
ナイトは心配な気持ちは消えなかったが、レオの言葉を受け入れた。
「それに昨日の出来事は…ナイトが思っている“アイツ”の仕業ではないよ」
レオは外を眺めながら、呟く。
「…え」
「雪の悪戯…かな」
ナイトは首を傾げながら、一緒にもう一度窓の外を見ると…雪が降り始めていた。
「雪…まさかこの雪の仕業だと……?」
「ふふ、この雪のせいではないよ…」
レオは何か心当たりがありそうだが、教えてはくれなかった。
「キトさんたちも行ったことだし、戻ろうか」
そういってレオはタンスから降りて、居間を出て行ってしまった。
“雪の悪戯とはどういうことだ…”と疑問に思いながら、ナイトも普段の生活に戻るのだった。
第4章:夢と微笑みの裏。を読んでいただき、ありがとうございます。
次回は、ついにシュエットのお家でのお話!キトに将来へと続く親友ができるかも?
そして…キトは自分のとある気持ちに気づく…?さらに…敵の影が忍び寄る…?
第5章:森の梟屋敷とアトウッド家。をお楽しみに!ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
★前書きの表紙についての解説
―――――――――――――――
キトが最初に見た夢のイメージ
―――――――――――――――
★イラストでの解説
―――――――――――――――
シュラーフの葉
→横から見ると厚みがあってマシュマロのように柔らかいのが特徴。
ソリーム蜂
→キラキラと輝く紺色と淡紅色の縞模様が特徴。
ノンム豆
→甘味があってお料理に入れてもジュースにしても美味しい豆。
ジュースにするとほんのりと光ってお洒落なドリンクができる。
桃色リボン・赤色リボンのミニペンギンたち
→他にも色んなリボンのペンギンたちがいるが、今回は桃色と赤色リボンの2匹。
桃色リボンくんは少し気が強い、赤色リボンくんは真面目だが少しぼんやりしている。