5 イケメンは半端ない!
「では、私は執務があるので一旦失礼するよ。出来れば晩餐でまた話をさせてもらいたいのだが、いかがでしょう?」
「はい。分かりました。お忙しいのに、お手間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。」
「いや。私があなたをエスコートしたかったのです。また後ほど会えるのを楽しみにしていますね。」
リュシアスはにこやかに笑いながら、おもむろにティアーナの右手を掴む。
恭しくその手を引き寄せ、指先にやわく唇を落とす。
前髪がさらりと揺れ、手の甲を撫でていく。
ゆるく閉じられた瞼には、長い睫毛が縁取られている。
そっと唇をはなして、きれいな榛色の瞳がこちらを見つめる。
視線がぶつかり、絡まって。
―――目が、離せない。
一瞬の動作のはずなのに、スローモーションのように映る。
ざわざわと胸がざわめいて、うるさい。
「では。また後で。」
リュシアスはゆっくりと名残惜しそうに手を離し、部屋を後にした。
え。
…………え? えっ!?
なに?なに?いまのなに?!
頬が熱い。
行き場をなくした右手をどうすることもできない。
脈打つ心臓は耳元まで音が聞こえてきそう。
い、イケメンの破壊力半端ない……!!
心臓がいくらあっても足りないよ!
精神崩壊一歩手前……!
芸能人とかアイドルとかのファンを改めて尊敬する。
握手会やらファンミーティングやらで、直接推しでイケメンなアイドルと接触しまくって、よく生きてられるわ。
いや、でもそれが生き甲斐になるのもわかる気がしてきたぞ。
やヴぁいな!これ!
あー。思考が乱れてる。
もうどうしてくれようか。
わたしはなんでここにいるんでしょう?
ここはどこ?わたしはだれ?
いや。まて!落ち着くんだ!!
手にキスなんて、よくあるあるじゃないか?
忠誠や敬愛を示すときにする、アレだよ!
うん!そうだ!
イケメン伯爵様には、いろんな美人なお姉さまがたが周りにたくさんいらっしゃるはず。
いくら容姿がそこそこ恵まれた今世の私でも、この程度なんてきっと見慣れたものよね!
ふぅ。落ち着いてきたぞ。
私、今世ではとんとその手のことに縁がないから、免疫なさすぎなのよねぇ。
ま、前世でも大した恋愛経験なんてなかったしなぁ。
ふぅ。焦ったわ~。
「ティアーナさま、大丈夫ですか?」
「お父様ったら、いきなりすぎます。もっとゆっくりと段階を踏まなくてはいけませんわよね?」
マルティちゃんはおませさんですか……?
いいえ。私にはきこえてませんよ。
気のせいですよね。
ふふふ。
「…………こほん。すいませんわ。取り乱してしまいまして、情けないところをお見せしてしまいました。お二人とも少しお茶にいたしませんか?」
「はい! ご一緒させてください!」
「いっぱいお話したいです!」
「ふふ。たくさんお話いたしましょうね。では準備してもらいますので、少々お待ちになってくださいませ。」
あぁ~。いい子達。
ドキドキさせられた後だから余計に、天使な双子にいやされるー!
私のこどもたちにも、こんな頃があったわねぇ。
この子達と同じ双子で、とてもかわいい前世の我が子。
私がいなくなったあとも、元気に過ごせているかしら――――。




