エピローグ
「お母さん」
「元気してる?」
ふと声を掛けられ、びっくりする。
振り返り、また更に驚いてしまう。
「らいと! みく!!」
「本当に久しぶりだね。」
「楽しそうに過ごしてるみたいで、よかったわ。」
「あなたたち……どうしてここに?」
「ん? そんなことはどうでもいいよ。」
「そうよ。別に関係ないわ。」
「そんなことあるわけないじゃない。」
「そんなことあるの。」
「で、どうなの? 新婚生活」
「うっ……!」
「まぁ。いい人が見つかってよかったね。」
「あの人なら、絶対に幸せにしてくれるのがわかるものね。」
「うぅ……。そうかもしれないけど……。」
「なーに、遠慮してんの?」
「そんなに考え込むことないじゃなーい。」
「我が子相手に、この話題はないわ。」
「はは。そうかもねー。」
「ま、いいわよ。そんなこと。」
「そんなこと……」
「俺は、結婚もしてもう子どももいるんだよー」
「私は結婚したばかり。新婚ほやほや~。」
「……そう。幸せに暮らせているのね。」
「もちろんだよ。」
「いつまでも不幸に浸っても仕方がないわ。」
「はは。そうね。我が子ながら、たくましいわ。」
「そうでしょ。お母さんの子どもだからね。」
「そうでしょ。お父さんの子どもだからね。」
「ふふ。さすがだわ。そう言ってもらえて、とても嬉しい。」
「これからは、お母さんも幸せになってね。」
「きっとなるって信じてるから。」
「うん。ありがとう、二人とも。二人とも元気でね。」
「「うん!!」」
そこまで会話すると、二人ともすっと消えていってしまい、辺りは暗闇に包まれるだけになってしまった。
これはなんだったのだろうか?
と不思議に思っていると、またふと背後に気配を感じた。
振り返り、また驚きに言葉がでなくなる。
「あ、あ……。」
「はは。なんて顔してるんだよ。」
「そ、そんな。でも。なんで。」
「そんなことどうでもいいよ。」
「どうでもよくないわっ!!」
あれほどまでに焦がれていた人。
そう。前世での最愛の人がそこにいたのだ。
「ははは。まぁ、説明のしようもないからさ。そんなことよりも、一言伝えたくて。」
「……伝えたいこと?」
「うん。突然一人にしてごめんな。子どもたちを立派に育ててくれてありがとう。
いつまでも側にいたかったけど、そうできなくて俺も悔しかった。」
「そんな……。そんなの。当り前よ。でも私、立派に育てられたのかな……。
子どもたちが独り立ちしてすぐに私も二人を残してしまったし……。」
「よく頑張ってくれたよ。それは俺がよく知ってるから。」
「そう……なの?」
「ああ。さっきの二人、幸せそうだっただろう?
君が頑張ってくれたからだよ。そこは、自信をもっていい。」
「……そうかな。うん。そう言ってもらえると、嬉しい。ありがとう。」
「ううん。だから、君ももう自分の幸せに集中してね。
彼はきっと君を幸せにしてくれるはずだから。」
「それも知ってるの?」
「もちろんだよ。いつでも見守っていたから。」
「そう……。
ねぇ。あなた。私一人残されて、とても絶望したわ。
でもあなたと一緒にいた日々は、いつでも心にあった。
それを思うと、あなたがいなくても頑張れた。」
「うん。知ってる。」
「でも転生しても、あなたへの思いが残っていて、胸にぽっかり穴が開いたままだった。」
「うん。」
「でもあの人に出会って、それをゆっくり埋めてもらえたの。」
「そうか。」
「私、あの人と幸せになるね。」
「うん。前世の分も、いっぱいいっぱい我がままを言って、いっぱい幸せになってくれ。」
「ふふふ。そうね。わかったわ。」
「じゃぁ、いかなくちゃ。」
「そう……。ありがとう。」
「うん。こちらこそ、ありがとう。」
そういうと、子どもたちと同様、またすっと消えていく彼。
暗闇に包まれ、呆然としつつも、温かになった胸を両手で押えた。
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「ティアーナ?」
リュシアスの声が響き、はっと目が覚める。
きょろきょろと周りを見回すと、明るい光が部屋を照らし、隣にいるリュシアスが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「怖い夢でもみたの?」
「え?」
ふと頬に手をあてると、涙で指が濡れた。
それに驚き、また目を見開く。
「涙までながして、そんなに怖かったなら早く声を掛ければよかったな。」
「いや。そうじゃないんです。」
「違うのか?」
「はい。とてもいい夢でした。」
心配するリュシアスに、にこりと笑って返す。
そう。とてもいい夢だった。
リュシアスにも聞いてもらおう。
きっと彼は全てを受け入れてくれるから。
「あのね……。」
夢の続きはもうないけれど、現実はどんどん続いていく。
さぁ。どんな未来がまっているのだろう。
これにて完結です。いかがでしたでしょうか。
ここからは、少し蛇足。(スルーして大丈夫です!)
「転生モノ」って、聞くと楽しそうだけど、実はちょっぴりシリアスですよね。
「転生」の前には、必ず前の人生が存在しているのだから。
コロナが猛威を振るい、背後をひたひたと近づく恐怖に、誰もが晒されました。
昨年からこの脅威は一向に収まるところを知りません。
そんな今、私がいなくなったら?と考えない人はいないでしょう。
死後の世界、あればいいなとも思うけど、前世の記憶がない私にはそれを信じることがなかなかできません。
そんな死後を思う前に、今の生活をどれだけ大切に過ごすかが重要だと考えました。
この物語でも、少しづつ問いかけていたもの。
何かを感じて、考えていただく一助になっていたら、とてもとても嬉しいです。
まぁ、ただ単純に甘い言葉をささやくイケメンも好きなのですけどw
この小説が、皆様に楽しい時間をもたらせていたら幸いです。
一言でも感想いただけると、なお嬉しいですw
予想以上に長くなってしまいましたが、お付き合いいただいてありがとうございました。




