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side:リュシアス
花が咲いている――――。
目の前に佇む細身のひとりの女性。
彼女以外なにも見えなくなるような錯覚をおぼえ、頭が真っ白になる。
どうしてしまったのだろうか。
どくどくと脈打つ心臓。
ぎゅうっと鷲掴みにされたように息苦しくなる。
薄い紫の髪。腰までゆるやかに伸びるそれは、きれいに艶めき、手触りが柔らかそうだ。
触れてみたい。指先に絡めとってみたい――。
白い陶器のような肌。小ぢんまりとしたかんばせには、肌の色とは対照的な、紅いさくらんぼのような色のふっくらとした唇。
吸い寄せられるようで、甘く誘惑しているようだ。
アーモンド型のぱっちりと大きな眼。
縁取る睫毛は、頬にやわらかく影を落とす。
青藤色の瞳。初夏にゆらめく藤の花のように神秘的な色をしている。
彼女の全てが匂い立つ花のようだ。
視線が離せない。
――――あぁ。私はこのために生まれてきたのか。
彼女に出会うために。




