side:リュシアス
あの笑顔は反則だ。
私の腕の中でそんな顔をするから、抑えが効かなくなりそうだった。
なんとか自制心を働かせることができ、指先に口づけるだけに留めることができて本当によかった。
あんな公の場で一瞬でも我を忘れるとは思いもしなかった。
思い返すと、屋敷へ来てからの彼女の行動には、驚かされることばかりだった。
思いもつかないような道具を作ってきたり、遊びを考えたり。
子どもたちへの思いに溢れた彼女。
私の思いと同じか、それ以上に子どもたちを慈しんで、惜しみない愛情を与えてくれる。
もうかけがえのない家族の一員といっても過言ではない。
だが、私にとっては彼女は「家族」というだけの存在にしておきたくない。
他の特別な立ち位置が欲しい。
出会ったころから、どんどん思いが募っていくばかりだ。
今日屋敷でドレスアップした姿を見た時から、鼓動の高まりが静まらなかった。
それほどまでに私が思っていることを、彼女はわかっているのだろうか。
今まで彼女に伝えた言葉はすべて嘘や偽りなど何もない。
それどころか、自分の思いの半分も伝えきれていない、彼女に伝わっていないことへもどかしさを感じる。
彼女が来た日から、はっきりと言葉で好意を示してきたつもりだ。
だが一向に彼女との距離が近づいている気がしない。
むしろ、アプローチしていく毎に壁を作られているように感じる。
何かを……彼女の心なのだろうか……それを守るように、高く築きあげられていく壁。
彼女は何を抱えているのだろうか。
何を守ろうとしているのだろうか。
いつでも目を合わせれば、吸い寄せられるように見つめあっているのに。
惹かれあっているのは、間違いではないと感じる瞬間があるのに。
それに、踊っているときの彼女の不思議な空気感。
彼女も我を忘れて、踊っているようだった。
楽しそうに。嬉しそうに。哀しそうに。寂しそうに。儚げに……。
ねぇ。君は、何をみてるの?
君は、何を思っているの?
君は、何を……。
いつでも君には笑っていて欲しい。
だけど、私の腕の中でそんな顔で笑わないで。
私の瞳の奥を覗き込みながら、他の何かに思いを馳せないで。
どこかへ行ってしまわないでくれ。
どうやったら君を繋ぎ止めることができるのだろう。
どうやったら私を……。
焦燥感がざわざわと胸を掻きまわす。
もっと彼女を知りたい。
もっと私を知ってほしい。
君は私の唯一のひとだ。




