16 お腹いっぱい
「もういいです……。
それもよりも! この綺麗な薔薇の花びらたちはどうしましょうか。」
「ん? 好きにしてもらって構わないよ。ティアーナがいらないと言うなら、そのまま処分してしまおう。」
「処分?! ありえません! せっかくこんなに綺麗に咲いていた薔薇の花びらを。
そんな、もったいない!!!!」
あー……思わず貧乏性が出ちゃったわ。
でも本当に綺麗なお花だから、捨てるなんて選択肢は存在しない。
熱烈アプローチ後の扱いには、とても困りますが……。花に罪はないので。
このままにしておくのも素敵ですけど、他に何か利用できないかしら。
たくさんの花びらでポプリをつくって、香りを持って歩くのも粋な感じがしますね。
使用人さんたちの分まで作れちゃいそうな量だわ。
それもいいかも。挨拶がてら、みなさんに配ってみましょう。
あぁ! 薔薇風呂もできそう!素敵!!
ゴージャスな気分で湯船につかるなんて夢のようだわ。
薔薇で化粧水を作るのもいいわね。
薔薇の香りと保湿成分で、気分もお肌も整うなんていいこと尽くしだわ。
でもお子様たちとも何か遊べたらいいのに……。
花びら投げて飛ばすだけじゃ、なんとも楽しみに欠けるし。
うーん。
「とりあえず、この花びらの三分の一ほどを乾燥させることはできるでしょうか。
リュシアス様の魔法で。」
惚れた弱みというやつを利用するわけではない。
決して違う。
でも使えるものは使わせてもらいましょうとも!
そうとも。出来る人がやるべきなのである。
「まぁ。すぐにできるけど。何をするつもりだい?」
「乾燥させた花びらをポプリにしてみようかなと。この薔薇の華やかな香りに包まれるとしあわせな気分になりますし。まだ他の使用人の方たちにもご挨拶できてませんから、たくさん作ってご挨拶にでも伺おうかなぁと思ってます。」
「じゃぁ、ぜひとも私の分もよろしくね。」
「えぇ?!」
「僕もほしいー!」
「私もいただきたいですわ!」
「そんなの当然です! お二人にはもちろん差し上げますから!」
「……。」
くっ。イケメンなのに、なんでそんな捨てられた子犬のような表情を……っ!
あざとい……っ!!!!
「わ、わかりましたよ。リュシアス様にいただいたもので、魔法までかけていただくのですし。こんなにたくさんあるから、いくらでも作れそうですしね。出来たらお渡しします。」
「うん。ありがとう。君からの初めてのプレゼント、心待ちにしてるね。」
そんなに花が咲いたような笑顔をみせないでくださいっ!
表情ひとつで、ここまで人を躍らすことができるなんて……っ!
凄すぎる。
もうイケメンやだ。
「残りはどうしようか。」
「あとの花びらは、あとで別なことに使おうかなと考えてます。箱に入れて置いていただければ。」
「じゃぁ、すこし状態保存の魔法をかけておこうか。そうすれば枯れるのを気にしなくても済むだろう。
先にあげた一輪のほうには、もちろん先に状態保存をかけてあるから、いつまでも飾って愛でられるよ。見るたびに私を思い出せるね。」
……ごちそうさまでした。
本日は、これにて閉店ガラガラ。
わぉ。
脳内一人すべり。
「そうですか……。はい。もう、これ以上は結構です。ありがとうございます。
薔薇に罪はありませんからね……そうですよね。……はい。飾っておきます。」
「ふふ。そうしてくれ。
そろそろ時間がなくなってきたな。ティアーナ、ラファ、マルティまた後で会おう。」
「「はーい。」」
「……えぇ。」
リュシアスはまた去り際に、やおらティアーナの手をつかんで指先に口づけを落としていく。
あまぁぁぁーーーーーーいっ!!!!!
デザートは別腹とかじゃないんだからっ!
もういらないってばっ。
「もう本当に結構ですぅっ!」




