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落ちていく。

どこまでも深い、底のない漆黒の闇。

藁にもすがる思いで手を伸ばしても、何も掴むことはできない。

得も謂われぬ浮遊感に、瞼をぎゅっと瞑るが、いつまで経っても止まることはなく、闇へと吸い込まれていく。


 あぁ。おちる。こわい。たすけて。


どんなに願っても、叶わない。

落ちる。おちる。おちる。


 はやくおわって。


この状況をどうにかしようという考えすら浮かばない。

ただ終わりを願うだけ。

暗闇が身を包み、ひたすらに落ちていく。

誰もいない。助けてくれない。

ひとりで。ただ落ちていく。



**********


はっと目が覚める。

はぁはぁと乱れる息。

締め付けられ、凍りつきそうな、それでいて激しく脈打つ心臓。

苦しさに思わず顔を手で覆い、またもう一方の手で心臓のあたりの服を鷲掴みにする。


――――おわった。


そう思うのと裏腹に、いまだに暗闇に捕らわれている感覚にさいなまれている。

背後から引きずり込まれそうな気配に、冷や汗がつたう。


大丈夫。

目覚めた今、あの悪夢は終わったのだ。

落ち着こう。


口元に両手をあて、出来るだけ長く息を吐くよう努める。

ゆっくりと目を見開き、辺りを見回す。

窓から月明かりが差し込んでいる。


ほら、あの漆黒の闇からは解放されたのだ。

いまだに底無しの闇への恐怖は消えないが、いつもの見慣れた部屋の光景に、やや落ち着きを取り戻す。


 夢だったのか。


夢にも関わらず、体が投げたされるリアルな感覚を思いだし、また身震いしてしまう。

終わらないと思った。

あの最果てのない暗闇に絶望していた。


 なんて夢を見たんだろう。


あんな悪夢他にないってくらいの悪夢だった。

今まで一度も高いところから落ちた経験もない。あんなにリアルに体感したような夢なんて、そうそうないだろう。

なんの予兆なのか。

決していいことがある兆しのものとは思えない。


 はぁ。


深くため息が出てくる。

しかし、悪夢から覚めた直後よりも落ち着きの出てきた感覚に、少し安堵する。


 何もなければいいのだけど。


夢は自分を映す鏡のようなものだと言う。

この先のことか、今現在のことか、それとも過去のことか。いずれにしろ、何事も起きなければいいと願うばかりだ。



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