第1話 世界に落ちる。
……目覚めたら幼女でした。何これ?悪い冗談?
「お嬢様!ご無事ですか!?あんな高いところから落ちて…!!」
当たりを見渡せば、なにやらメイドの様な格好をした人が私に慌てて駆け寄ってくるのが見える。
「うん、大丈夫…?」
悲しきかな。つい、日頃の社畜精神から「大丈夫」なんて返してみたものの、実際は何も大丈夫ではない。
ここはどこで、あなたは誰?というかそもそも私はどうなってるの??
「いたた…」
なにやらよく分からないが、ふいにお尻に鈍痛が来て、私は思わず声を出した。気づけば、手のひらからも血が出ている。状況からして、尻もちをついた拍子に手も擦りむいたのだろうけれど………問題はそこじゃない。問題は、私の声がやけに甲高いことと、見つめる先にある手やら脚やらがやたらと小さいことだ。試しに手を軽く握って開いてみる。…うん、私が動かした通りに動くね。信じたくないけれど、いまの私の体はこの小さい子のものみたいだ。
んー…子供の年齢なんてよく分からないけれど、この体は4~5歳ってところかな。はあ。なんでこうなった。
…そもそも、私は締切に追われて三徹目、もう限界だちょっと休もうと仮眠室で寝ていた、はずだった。
なのに、ふと落ちるような何かに引っ張られるような感覚に目を覚ましてみれば、”これ”だ。一体全体、意味がわからない…!そしてそんなことより締切…!明日の午前中が締切なのに、こんな夢なのか何なのかわからないものに付き合ってる暇はない…!
へい神様!勘弁してくれ!もどして!いますぐ!私を!ヘルプミー!!
「お嬢様、ああなんてこと…!御手を怪我してらっしゃる…!ああ奥方様になんと言われるか……!ああ…!」
私がフリーズしている間に、先程のメイドさんらしき人は私の傍までやってきていたようだ。メイドさんは私を軽く検分した後、はらりと倒れ、まるで悲劇のヒロインのように倒れ込んでメソメソしだした。
ええええ。
ちょっと待ってよお姉さん。泣きたいのこっちの方だよ。ねえ。
お姉さんは呆然とする私に気づくこともなく、本格的にしゃくりあげながら泣き出した。……ひょっとして劇団でも所属してる?って聞きたくなるくらい迫真の泣き姿。なんかもうね、”すごい!”しか出てこない。その”泣き”でハリウッド行けるんじゃない?メイドさん辞めて女優さん目指す方がいいんじゃないかなあ。
はあ。それにしてもこんな夢見るなんて私、相当キてんのかな?はあ、やだやだ。
この変な夢はもう十分だから、さっさと起きてくれ私。頼むから起きて。寝過ごしすぎだからね!さっさと起きてくれ!お願いだから!ジーザス!
主人公補足:【名前】雨宮 楓。生粋の日本人。成人済み。
【属性】社畜。(闇)