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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

十本足の宇宙人シリーズ 漫談 聖人

作者: 桜花佐助
掲載日:2019/07/13

 えー。仏教の説話に「捨身飼虎」というお話がございます。ある日、王子は、飢えた母虎と七匹の子虎に出会います。飢えて死にそうな虎の親子を憐れんだ王子は、自分を食べるよう母虎の前に横たわります。

 しかし、弱り切った母虎には、王子を食べる力もありません。そこで、王子は自分を傷つけ、血を流し、母虎に与えます。それで力を取り戻した母虎は、王子を食べ、虎の母子は命を救われたというお話でございます。

 なんという自己犠牲と生き物を憐れむ心でございましょう。とても真似の出来るものではございません。この王子、お釈迦様の前世のお姿だという事でございます。

 実は、これと似たお話が地球から遠く離れた惑星にもございます。

この惑星の住人。足が十本ございます。

 この星の聖人が道を歩いておりますと、飢えた虎が動けなくなって横たわっております。

 憐れに思った聖人は自分の足を一本切り取り、虎に与えます。飢えた虎はそれを貪り食います。そうしておりますと、血の匂いに反応した虎が茂みの中から次々と出てまいりまして、総数七匹。この聖人、後から出て参りました七匹にも自分の足を それぞれ一本ずつ与え。とうとう二本足になってしまいます。

 聖人は、美味しそうに自分の足を食べる虎を 笑顔で眺めておりましたが、突然 この虎達が苦しみ出します。

 この聖人、うっかりと失念しておりましたが、この星の住人の足には毒がございます。重ねて申し上げますが、うっかりと忘れていただけでございます。決してわざとではございません。

 弱肉強食のことわりの中で自分の身を守るため進化を重ねた猛烈な毒。足を食べた虎達は全て死んでしまいます。

 「可哀想な事をした」

聖人は虎達の死を心から悼みます。

 このまま、この虎達の命を無駄にしてしまう事を忍びなく思った聖人は、この虎達を食する事にいたします。

 八頭の虎を一人では運ぶ事も出来ませんので、弟子やら、村人やらを呼んできて、皆に分け与えながら、家まで運びます。

「これで、虎達も無駄死にではあるまい」

虎達を焼肉にして口の中に入れると、その美味しい事、美味しい事。もう口の中はジューシーな甘みで、トロトロ、メロメロ、グジュグジュ。

 この後、この星の虎は乱獲のため、絶滅してしまいますが、この時から、この星では二本足の人は、皆 聖人と呼ばれております。

 お後が、よろしいようで。

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