ステゴミア家の勝者なき闘い
色々忙がしくて、更新が遅くなりました。
当分、ゆっくりペースで進めますm--m
モスキー島、アエデス・ステゴミア・エジプティの居城。
その最上階でアルボがエジプティに詰め寄っていた。
「ちょっと、どういうつもり」
「いくらなんでも雨が長すぎよ」
アルボに同行したフラボも口を挟む。
「どうも何も、私たちの魔法のお陰ですわ」
涼しげな表情でそう言うエジプティの前の机に、アルボは「バンッ」と両手をつく。
「それはわかっている。2週間後に止めるように、制限をかけたはずなのに、何故それ以上に降っている?」
「気圧調整はアルボ、湿度調整は私、その状況の維持は貴方の担当よね、エジプティ」
エジプティは含み笑いから、徐々に笑い声を大きくする。突然笑いだしたエジプティについていけず、呆然とした表情でアルボとフラボは互いを見合う。
「すべて計算通りですわ」
笑うのを止め、ぽつりと呟くエジプティに視線を戻す二人。
「計算通りってどういう…」
「決まっているでしょう。アルボ、貴方の分布域を侵食するため」
その言葉を聞き、今度は唖然とした表情で顔を見合わせるアルボとフラボ。
「これまで何度苦渋を飲まされたことでしょう」
「エジプティ」
「この機会に眷属の分布を世界中に広げて…」
「エジプティ!」
「何? って…何ですの、その顔は?」
ようやく二人の表情がおかしいことに気づくエジプティ。
「エジプティ。それは無理」
「アルボ、何を言って…」
「いや、だって。エジプティの眷属って、冬眠できないでしょう?」
「私の眷属の分布域は温帯。冬眠ができなけば、越冬出来ないよ」
二人に指摘された内容を脳内で反復するエジプティ。そして、指摘が正しい事に気付き、フリーズしてしまった。
アホな子を見るような表情でエジプティを見るアルボ。
その時、部屋の扉が乱暴に開け放たれて、一人の吸血鬼が逃げ込むように入ってきた。
「どうした、ダイテンシス?」
その名をフラボに呼ばれ、慌てて背で扉を締めつつ口を開くダイテンシス。
「それが…クレックスとの会談で、フラボの替え玉とバレてしまいまして…」
その言葉を聞き、フラボはカーテンの隙間から外を覗き込む。
「あー、クレックス一族が来ちゃったみたいね。どうする? 特にパレンスが怒ってるみたいよ」
「どうするって…」
アルボはフリーズ状態であるエジプティに視線を向ける。
それにつられて、フラボ、ダイテンシスもエジプティに視線を向け、そしてお互い目配せをした。
それからは早かった。
三人はエジプティを簀巻きにして、窓の外へ投げ捨てる。
それから暫く、パレンスの怒号とエジプティの悲鳴が聞こえたような気がしたが、三人は気にしないことにした。
こうしてようやく、長い梅雨が終わりを迎えることができた。
○Aedes (Stegomyia) aegypte
和名:ネッタイシマカ
アフリカ原産
現在は世界中の熱帯~亜熱帯に分布
越冬はできない。
昼間吸血性で野外、屋内で吸血
人を好む傾向
媒介する主な感染症:
チクングニア熱
デング熱
ジカ熱
ウエストナイル熱