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暑すぎる初夏

 スクリーン越しの人物を一瞥した後、パレンスは溜め息を一つ吐く。

『ちょっと聞いてるの? 現当主』

「…ハイハイ。聞いてますよ。ピピエンス」

『当主は持ち回りとは言え、私はクレックス・ピピエンス家の家名を冠する者』

 そう言いパレンスより少し印象をキツめにした者、クレックス・ピピエンス・ピピエンスがスクリーン越しにパレンスを軽く睨む。

『眷族はヨーロッパ、アメリカを中心に世界を席巻している。無礼な態度は慎んで欲しいわね』

「私は礼儀正しいことで有名よ」

『ほおー…では、今君が飲んでいるのは何かな?』

「鳥の生気。今繁殖期だから、眷族が吸血しやすいみたい」

『卵が孵化するまで、親鳥はあまり動かないからな』

「それでも、吸血する場所が限られているから、大変らしいよ」

『目の周辺か、足の鱗の隙間だったな。眷族どもの努力を考えさせられるな…って、そういう話ではない!』

 鳶色の髪をかき乱し、ピピエンスはスクリーンにしがみつかんばかりに顔を近づける。

「顔が近い。冷静になりなよ」

『それもお前の礼儀がなってないからだ』

「つまらないことで連絡するからだ」

『つまらない事ではない!私の面子に関わることだ!』

 そこで言葉を切り、ピピエンスはようやくスクリーンから距離を取る。

『モレスタスに勝手に生気を与えただろう』

「彼女から要請があった」

『モレスタスと最も近縁なのは私だ!その私に連絡もせずに、何故勝手なことをした!』

 パレンスは大きな溜め息を一つ吐いた後、グラスを側の机に置く。

『モレスタスもモレスタスだ!何故私に要請しない…』

「ピピエンス」

 パレンスは姿勢を糺して、スクリーンのピピエンスを見る。

「わからないの?モレスタスが気を使ったことを」

『それはどういう…』

「夏が来ていないのにこの暑さ。あなたの眷族は暑さに弱い。今後のことを考えると、生気を温存しなければならないでしょう?」

『それはお前の眷族も同じこと』

「私の近縁にクインケがいる。暑さに強い眷族を持つ彼女から、生気を融通してもらうことも可能」

 パレンスの言葉を聞き、先程より幾分か態度を和らげるピピエンス。

『それなら、直接クインケに要請すればよいものの…』

「引きこもりのモレスタスが連絡できるのはあなたとギリギリ私まででしょう」

『引きこもりとか根暗とか…モレスタスが聞いたら怒りそう』

「根暗とは一言も言ってない」

○Cx. p. pipiens

 和名:トビイロイエカ

 アメリカ~ユーラシア大陸の温帯に分布

 成虫で越冬、夜間吸血性

 鳥が好きだが人を含む色々な動物を吸血

 媒介する主な感染症:

  リンパ系フィラリア症

  ウエストナイル熱

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