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クレックス・ピピエンス家

 時がめぐり、花の蕾も綻ぶ季節となった。

 その者、吸血鬼の有力な一族で名門と名高い家系の当主である彼女は、時が満ちたことを察し、己が系譜に連なりし者へと思念を送る。

「親愛なる我が眷族よ。目覚めよ」

『ははっ』

「現状を報告せよ」

 当主からの問いかけに代表と思われる者が答える。

『今季は環境にも恵まれ、残存率は二割を超えております』

「ふむ、暖冬であったからな」

『一部の部隊は潜伏場所を襲われ、全滅しました』

「オリンピックとやらで、工事が多いからな」

『しかし、今季の活動には影響はございません』

「よし。今夜より作戦を開始する。例年通り、ヒトから血を奪い、眷族を増やせ! そして生気を我に捧げよ!」

 当主からの命を受け、悦びに満ち溢れた思念と共に、眷族たちが飛び立っていく。

 それを確認し、当主は深く椅子に座る。

 その時、背後から拍手と共に扉が開かれ、闇が満ちていた部屋に光が差し込む。

「素晴らしい檄でしたわ。パレンス」

 当主ことパレンスは、黒い瞳を入ってきた人物に向け、錆色の髪をかき上げた。

「全く面倒だな。こういうのは柄ではないんだけど」

「ずいぶんノリノリだったけど」

「…やっぱり、もう一年やってよ、クインケ。見た目はほとんど一緒だし、誰にもわからないって」

 パレンスの言葉通り、入ってきた女性、クインケとパレンスは全く同じと言えるほど、容姿が似通っていた。

 違いと言えば、彼女らの家系特有の腹部の模様が、パレンスは均等な横線である一方、クインケは寝かした三日月が重なっている模様であること位である。

 両者とも腹部を露出させるような服装でない以上、バレることは無いと思うのだが…

「駄目よ。一年ごとの持ち回りって決まっているでしょう。それに面倒なのは私もイヤ!」

 バッサリと拒否するクインケ。

「はあー…一体誰が決めたんだ」

「私たちクレックス・ピピエンス家のご先祖様でしょ。当主、クレックス・ピピエンス・パレンス」

 そう言い、クレックス・ピピエンス・クインケはニッコリ笑った。

○Culex pipiens pallens

 和名:アカイエカ

 東アジアの温帯に分布。成虫で越冬する

 夜間吸血性で夜に安眠妨害する蚊

 鳥が好きだが人を含む色々な動物を吸血する

 媒介する主な感染症:

  リンパ系フィラリア症

  ウエストナイル熱


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