750話
ビビと無事に合流することが出来たコウは暫くこの古城内を駆け巡ることとなり、運が良いのか分からないのだが、今のところディールや他の魔族と出会うことはなく、スムーズに移動することが出来ていた。
「こっち!そこを曲がればここから出るための転移部屋だよ!」
「そこだな?って...うわっ!」
そしてビビに案内されながら廊下を進んでいると、正面が突き当りとなり、曲がった先に転移することが出来る部屋があると言われたため、コウは先行して勢い良く曲がり角を曲がっていく。
すると目の前へ突如として視界を埋め尽くす謎の壁が現れたため、コウは急ブレーキするかのように動かしていた足を止めたのだが、残念ながら勢いを殺すことが出来ず、そのままぶつかってしまった。
しかしその目の前に現れた壁へぶつかったという割には痛みはなく、寧ろぽよん...とした柔らかい感触と甘い花のような香りが顔面へと伝わった訳なのだが、一体何が起こっているのか分からずコウは顔を上げた。
「お前は...!」
「レヴィーエル様...!」
「久しぶりね。元気そうで何よりだわ」
そして顔を上げた先の視線に映ったのは大きな双丘の上に過去何度か出会ったことのある真っ赤な長い髪を持つレヴィーエルという魔族の顔があり、まさかこんなところで出会うとは思ってもいなかった。
「わ...わざとじゃないぞ!...いたっ!」
それと同時にコウはレヴィーエルの柔らかな身体に抱きついている状況だということに気付くと、恥ずかしさを誤魔化すかのように慌てて後ろへ下がると同時に足が縺れて大きく尻餅をついてしまう。
「もう私に抱きつかなくてもいいのかしら?」
「するわけないだろ!てかなんでこんなところにいるんだ!」
「それはあなた達が逃げ出そうとしているの知ってたから待ってたのよ」
それにしてもどうしてこんなところにいるのか?をレヴィーエルへ聞いてみると、どうやらコウ達の目的を理解してため、ダンジョンから出ることが出来るこの場所でわざわざ門番のように待っていたらしい。
しかしこのダンジョンから出ることが出来る部屋が目前ということなのに目の前に現れたレヴィーエルが門番というのは何とも厄介なものだろうか。
レヴィーエルを振り切ってこの先へ無理矢理行こうにもこんなところで暴れれば他の魔族も気付いて集まってくるため、ビビと共に安全な脱出は不可能だし、例えここから脱出出来たところで追ってくる可能性が非常に高い。
「で...ここから抜け出すの?諦めるならこの場は見逃してもいいわよ?」
(どうするべきだ...?このままじゃ...)
そんなレヴィーエルから手に真っ赤な炎を灯しながらどうするのかと問い掛けしてきたため、どうするべきなのか返答を悩んでいると、今度は背後から自身達の足音ではない誰かの足音がコツコツとこちらへ向かってきている音が聞こえてきたではないか。
そして背後を振り返って誰がこちらに向かってきているのか確認してみると、曲がり角から執事の服装を身に纏う魔族であるディールが現れ、前門の虎、後門の狼といった状況となってしまう。
「...分かった...諦める」
「あら?てっきり諦めないと思ったのだけども...まぁ良い選択ね」
そのため、残念ながらここから先安全に切る抜ける方法は思いつかなかったので、レヴィーエルの問い掛けに対してコウは苦汁を舐めながらこのダンジョンから抜け出すのを諦めるといった選択肢を選ばされることとなってしまうのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新は12月13日になると思いますのでよろしくお願いします。




