744話
「なぁ...もう事情を話したから良いだろ?」
「いや駄目だ。あんたには暫く付き合ってもらうぞ」
とりあえず自身の後を付けてきていたロガーの話を聞いた後、コウは氷の手錠を作り出し、ここから逃げ出さないように手足を拘束していく。
そして手足の拘束が無事に完了すると、あれやこれやとロガーは解放しろなどと文句を言ってくるが、せっかくこの崩壊している街中が詳しいと思われる人物をコウはみすみす逃がすつもりもない。
「分かった!分かった!じゃあ俺は何をすれば解放されるんだよ!」
「そうだな...とりあえずここから外へ出るための方法を教えるか場所を案内してくれ」
「ん...?案内つってもお前さんは俺と同じ魔族だろ?だったら外に出る方法ぐらい知ってるだろ?」
そしてロガーから解放の条件は何なのか?ということを聞かれたので、コウは少しだけ考えると、このダンジョンと思われる場所から外へ出るための方法を教えるか場所に案内して欲しいと自身の希望を伝えていく。
すると返ってきた答えとしては同じ魔族ということで、外に出る方法ぐらいは知っているだろと言われたのだが、はて...?何故、このロガーは自身に魔族の血が流れていることを知っているのだろうか?
いや...そういえば以前帝国にて出会ったビビという魔族のメイドがコウのことを魔力で判断していたのを思い出した。
「もしかして魔力で俺が魔族って分かったのか?」
「魔族なら魔力を感じとって何となく分かるだろ?まぁお前さんは少し変わってる魔力の質だけども...」
やはり言い方的に魔族は魔力の質でお互いを判断しているようなのだが、コウとしては魔力を感じ取るといったものは持ち合わせていないためか、そんなことを言われたとしてもさっぱり分からなかったりする。
「それにしても何かお前さん同族にしちゃ知識が足りてねぇよな?」
そしてそんな会話を交わしていると、ロガーはコウに対して疑念を抱いたようで、疑いの眼差しを向けられたため、ここは何かしらの言い訳をして誤魔化した方が良いかもしれない。
「ずっと外で暮らしててここに来るのは今日が始めてなんだよ。しかも転移の罠に引っ掛かったし」
「ふぅん...まぁ同族のよしみでそういうことにしといてやるよ」
とりあえず苦し紛れの言い訳をしてみるも、ロガーはあまり納得していない様子であり、まだ疑いの眼差しを向けられるが、まぁ自身でもそんな怪しげな人物と出会ったら同じ様な対応となるに違いない。
しかし一応ではあるが同族のよしみということもあってその部分には多少なりとも目を瞑ってくれるらしいので、何だかんだ言って意外と甘いのかもしれない。
「で...教えてくれないのか?」
「はぁ...せっかちな奴だな。じゃあとりあえず中央にある城に向かえ。そこから出られるからよ」
そして外へ出るための方法を教えるか場所を案内をしてくれないのかと聞いてみると、どうやら崩壊している街中の中心部に聳え立つ古城へ向かえば外に出られるといったことを言われることとなる。
確かにこの崩壊している街中やぐるりと囲んでいる城壁付近は歩いたものの中心部に聳え立つ古城に行ってはいないので、このダンジョンから外に出る何かしらがあるのかもしれない。
とはいえ、それが本当なのか嘘なのかについては実際には分からず、もしかしたら罠の可能性も無くはないと言えるだろうか。
「ほら教えたんだから解放してくれや」
「いや罠かもしれないし嘘かもしれないからこのまま一緒について来てもらうぞ」
「まじかよ...」
そしてロガーから教えたのであれば解放してくれと言われるも信用出来ないので、ここはこのまま連れて行った方が良いのではとコウは判断し、首を横に振りながら一緒に付いてきてもらうといった旨を伝えていく。
するとロガーは嫌そうな表情を浮かべるが、コウとしてはそんなことは知ったことではないので、そのまま氷の鎖を作り出し、手足を拘束している氷の手錠に繋げると、まるで散歩の途中で諦めた犬を引き摺るかのように引っ張りながら中心部にある古城へと向かうことにするのであった...。
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次回の更新は11月19日になると思いますのでよろしくお願いします。




