739話
さて...霧のように包んでいた周囲の土埃が全て晴れたことによって、周りの風景がはっきりとした訳なのだが、やはりというか暴れ回っていると思っていた魔物や襲われている冒険者はいない様子。
ということは先程の地響きやら土煙やらの原因は多分目の前にある獲物を待ち構えているかのようにぽっかりと口を開いている不気味な洞穴が原因だとコウ達は理解させられることとなる。
「どうしますか〜?」
「どうするって言われてもなぁ...」
そしてライラから目の前にある洞穴についてどうするか?と聞かれたのだが、何が待ち構えているとも言えない洞穴の内部へ臆することなく入っていくのは流石に危険だろうか。
しかし今回は調査が目的なので内部に何があるかくらいは調査しておかないと、そもそも危険かどうかすら分からないし、先程の地響きと土煙を見た他の冒険者達が何事かと思い、集まってきて洞穴の内部へ入ってしまう可能性があるため、先に調査するべきと言えなくもない。
「イザベルならどうする?」
「私なら入口付近だけを調査して後は報告ですね」
「なるほど...それもありだな。入口だけなら俺の氷の鳥を飛ばせばいいしな」
どうするべきかの判断について自身では何とも言えないので、イザベルにも意見を聞いてみることにすると、返ってきた答えとしては入口付近を調査してから報告すると言ったものであったため、確かにその案も悪くないかもしれない。
それに自身が調査するのであれば、氷の鳥を作り出すだけで事足りるし、何より直接中へ入るよりかリスクは限りなく低いと言えるだろうか。
ということで、コウは調査用の氷の鳥を作り出していき、獲物を今か今かと待ち構えているかのようにぽっかりと口を開いている不気味な洞穴に向けて次々と飛ばしていくことにした。
「あれ...?俺の作った氷の鳥達が...」
「キュ?」
しかし自身の下から飛ばした氷の鳥達は洞穴の内部へ入って行こうとすると、洞穴の入口には見えない何かで塞がれているのか、氷の鳥達は何かに次々とぶつかっては粉々になってキラキラとした氷の結晶へと変化していくではないか。
「結界のようなものが張られているんでしょうか?」
「だから氷の鳥達が壊れているのか...」
「何だか尚更怪しく感じますね~」
まさかそんな結界のようなものが洞穴の入口にあるとは思ってもいなかったので、ライラの言う通り怪しさがどんどんと増していってしまう。
もしこの結界を魔族が作り出したものであれば、何かしら隠したいものがあるということになるので、ここは少しでも良いから情報が欲しいところ。
「だったら近づいて覗くくらいにしますか~?」
「覗くなら慎重に近づいていくぞ」
「分かってますよ~私に任せて下さい~!」
そのため、氷の鳥達が中に入れないのであれば、遠目からでも内部を覗くしかないということで、ライラが率先して中がどうなっているのかを確認しようとしていたため、注意喚起しながらコウ達も近づいていくことにした。
「痛いです~!」
するとゴツン!と固いものにぶつかったかの様な音が聞こえたため、何かと思うとライラが痛そうな表情を浮かべながら鼻を押さえつつ、その場でしゃがみだしたではないか。
どうやら結界が見えないということもあり、ライラは結界に対して鼻を強打してしまったみたいであるのだが、何と言うか間抜けなものである。
「やはり結界のようなものがありますね」
そしてイザベルはライラの隣に立って目の前の空間に対して扉をノックすると、コンコンと固いものに当たるような音が鳴ったため、やはり結界のようなものが洞穴の入口手前付近にある様子。
「俺も触ってみようかなっと...って...は?」
ということで、コウもイザベルと同じ様に結界に触れようとすると、まるで結界など存在しないかのように触れようとしていた手は空を切り、体勢を崩したためかそのままライラ達よりも一歩前へ出てしまった。
まさか自身が結界を通り抜けられるとも思っていなかったため、まさかの展開にコウは思考が停止してしまうが、その瞬間、足元が光り輝き出し、今度は魔法陣のようなものが現れることとなる。
「危ないです~!」
「コウさん!」
「キュ!」
「何があぶ...」
そしてコウは結界を通り抜けられてしまったことによって思考が停止してしまっていたため、フェニとイザベルが声を上げるも、一体何が起こったのか分からず、反応が遅れてしまい、そのまま周囲の景色は変化していき、何処かへ飛ばされてしまうのであった...。
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次回の更新予定日は多分10月29日or30日になりますのでよろしくお願いします!




