736話
「ここは...何故こんなところにこんな家が...」
「わぁ〜...本当にこんなところに家があったんですね〜...」
そしてコウに手招きされたイザベルは恐る恐る隠蔽の魔法が解除された空間に一歩づつ踏み出しながら鉄格子の門を通り抜けてきた。
まぁいきなり何も無かった広場の空間へ死の森には似つかわしくない家が急に現れ、知り合いだとしてもコウが何も気にすることなく、その空間に足を踏み出し、手招きをしてきたのだからイザベルが警戒するのは当たり前と言ったところだろうか。
ただライラに関しては既に話を伝えてあったので、何も気にしていないようであり、寧ろ本当に死の森の中に家があったことに対して驚いている様子であったりする。
そんな2人を背後にコウは生家の玄関扉に立つと、小さくただいまと呟きながら扉を開けて中へと入ったのだが、そこは少し前に帰ってきた時から何も変わっていない光景が広がっていた。
しかし共に生活していたハイドは既に他界してしまっているためか、中はしんとした静けさが包み込む薄暗い空間となっており、何と言うか悲しさや寂しさといった気持ちが心の中へじんわりと染み込んでくるような気がしないでもない。
「とりあえずそこの椅子にでも座ってくれ。イザベルには事情を話すから」
とはいえ、そんな感傷的な気持ちで玄関扉の前に立っているのはあれなので、コウはそのまま明かりを点けながら家の中に入ると、ライラやイザベルも入ってきたので目の前にあった椅子に座るように指示を出していく。
「むぅ...もう話しちゃうんですか~?」
「いやまぁ話さないと今の状況が訳分からないだろ...」
「まぁそうなんですけども~...」
そしてイザベルに自身のことについて話そうとしようとすると、何を思ってなのか分からないが、ライラから不満の声が上がったのだが、説明しないことにはこの状況も分からないだろうと伝えるも、何故か不満そうではあった。
ということで、不満げなライラを宥めつつ、コウはイザベルに自身のことについてを数日前にライラへ話した内容と同じことを伝えていくことにした。
「まぁそんな感じだ。急な話で悪いけども」
「コウさんが...ふぅ...まぁ私はその話を信じますし話してくれて嬉しいです」
そんなこんなで話を聞き終えたイザベルは事前にビビとの会話内容を知っていたライラと違ってかなり驚いた様子なのだが、深呼吸をするとすぐに平静となり、一応それなりの付き合いということもあってなのか信じてくれることとなった。
「そういえばコウさんはお父さんが亡くなられたんですよね~?」
「ん?あぁそうだな。庭の片隅に墓は作ってあるけども」
「でしたらお祈りでもしてもよろしいでしょうか~?」
そして自身のことについてイザベルに対して話し終えると、今度はライラから自身の父親について聞かれたので、庭の片隅に墓を作ってあると言ったことを伝えると、どうやら祈りを捧げたいとのことであった。
まぁライラの本職は聖職者ではあるので、祈りの一つでも捧げてもらった方が供養になるかもしれないので、ここはお願いしても良いかもしれない。
「じゃあ頼もうかな」
「では私もお祈りさせてもらいますね」
そのため、ライラに祈りをお願いすると、どうやらイザベルも祈りを捧げてくれるらしく、美人2人に祈りを捧げてもらえるとは何とも幸せな父であると言えるだろうか。
そんなことを思いつつ、自身が作ったハイドの墓に2人を案内することにし、座っていた椅子から全員は立ち上がると、コウ達は再び家の玄関扉を開けて庭へと出ていくことにした。
「ここがそうだな」
「祈りを捧げさせてもらいますね~」
「では私も失礼します」
そして庭の片隅に作り上げたハイドの墓の前に到着すると、2人は膝をそのまま地面に付け、ハイドが眠っている墓に対して手を合わせて祈りを捧げだしたため、コウも同じ様に手を合わせながら帰ってきたということや今は親しい友人が出来たなどのことを報告するように祈ることにするのであった...。
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次回の更新予定日は多分10月17日or18日になりますのでよろしくお願いします。




