720話
「んっ...」
深い闇の底から意識を覚醒させたコウは重たい瞼をゆっくりと開くと、目の前に広がるのは見慣れたいつもの天井であり、ぼんやりとしながら暫くの間、虚空を見つめる。
そしてある程度虚空を見つめていると、徐々に意識がはっきりしてきたため、隣に首を曲げて見てみると、そこにはぴぃー...ぴぃー...とやかんのような寝息を立てるフェニが丸まって寝ており、コウが体勢を整えたり、シーツが擦れる音をさせたりしても起きるような気配はない。
そのため、まだ朝を迎えていないのかと思い、今度は窓に向かって視線を移すと、陽光が刺しておらず、空が白んでいるため、朝には少し早い時間帯と言えるだろうか。
(もう起きるか...)
とりあえず目が覚めてしまったということで、コウはこのまま起きることにし、フェニを起こさないようゆっくりと身体を起こすと、ベッドからさっと降りていき、家の中を歩くために用意したスリッパを履いていく。
(そういえば手紙...って手紙が無いぞ?)
そして部屋から出る前に昨日読んだ招待状と思われるものが入っていた手紙のことを思い出したので、机に置いた筈の手紙を再び見ようとするも、既にそこには何も置かれてはいなかった。
(どうなってるんだ...?)
そんな手紙が無くなっていることに疑問を覚えつつ、コウは音を立てぬように忍び足で移動し、部屋の外へ出ると、そのままリビングへ赴くことにした。
(やっぱまだ朝早いしライラも起きてないな)
やはりというかリビングに赴いても、まだ朝の時間帯が早いということもあってか、同居人であるライラもおらず、きっとフェニと同様にスヤスヤと寝息を立てながら柔らかなベッドの上で心地よく寝ているだろうか。
そんな自身の物音しか聞こえないリビングで佇んでいるのも変なので、とりあえずコウは乾いた喉を潤すために何かしらの飲み物を淹れることにした。
そして喉を潤すための紅茶が淹れ終わると、いつも座っている椅子に腰掛け、淹れたばかりの紅茶を一口飲み、先程見ていた夢の出来事についてを深く考えていく。
(これからどうするかなぁ...)
深く考え出したのはこれからどう行動するべきのか?ということであり、何故そんなことを考え出したのかというと、オルグスから再び迎えに行くと意識を手放す寸前に言われていたからである。
もし再び迎えに行くと言っていたことが本当であれば、日頃から活動範囲としているローランや一緒に行動しているライラやフェニに対して危険が及んでしまうかもしれない。
そのため、これから現れるであろうオルグスに対してどうするべきか?とコウの頭を悩ませることとなってしまったのだ。
そして暫くの間、静かな空間で1人温かい紅茶をちびちびと飲みながら考えるも、何とかするための案が思いつかず、ただ時間だけが過ぎていき、いつの間にかティーカップに注がれた紅茶は飲み終わっていた。
「ふぅ...これ以上考えても無駄だな」
とりあえずこのまま考えていても無駄だと判断したコウはゆっくりと椅子から立ち上がり、固まった背筋を伸ばすと、紅茶が飲み終わった空のティーカップを片付けていく。
そしてティーカップを丁度片付け終わると、窓から陽光が少しだけ差し込んできたのだが、未だに誰も起きてくる気配は無い。
「ちょっとだけ外の空気でも吸ってくるか」
このままみんなが起きてくるまで、リビングで寛いでも良いのだが、色々と頭を悩ましたお陰で何だか外の空気が吸いたくなってきた様な気がしてきた。
ということで、コウは頭の中を一旦リセットするため、息抜きとしてまだお店や屋台が開いていないローランの街中を目的もなく、歩き回ることにするのであった...。
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