711話
馬車へ乗ったコウ達は揺り籠のようにゆり揺られながら王都の街中を進み、暫くするとディルが住む屋敷が小窓から見え、そのまま大きな鉄格子の門を通り過ぎると、屋敷の玄関前で止まることとなる。
そしてコウ達は馬車から降ろされると、応接室まで案内されていくのだが、途中でディルの従魔である鳥達が自身達を熱烈な歓迎で迎え入れてくれた。
そんな熱烈な歓迎のお陰でコウ達は羽毛まみれとなったのだが、ライラとフェニは嬉しさが込み上げてきているのか、ニコニコと従魔達と戯れていたりする。
「ははは。なんかうちの子達がごめんね」
「悪気がある訳じゃないしな」
「そうですよ〜私は嬉しかったです〜」
「キュイ!」
ということで、従魔達の熱烈な歓迎を受けながら応接室に入ると、既にディルが苦笑いしつつ待っており、羽毛だらけのコウ達を謝罪の言葉と共に迎え入れてくれた。
まぁコウ達としても歓迎する形で迎え入れてくれた方が嬉しさを感じるので、全身が羽毛だらけになろうともそこまで気にしてはいない。
「そう言ってもらえると助かるよ。さてと...じゃあ本題に移るけど昨日は色々と迷惑を掛けてごめんね」
そんなやりとりをディルと交わしつつ、コウ達は部屋に置いてあったソファーは腰掛けると、昨日の魔族の件で今度は謝罪を受けることとなった。
しかし昨日の魔族の件についてはディルのせいではなく、ただ運が悪かっただけなのだと思うのだが、今回の楽しい筈の交流会でそのようなことが起きてしまったことに対して本人は申し訳なさを感じているようだった。
「だからみんなにはこれをお詫びとしてあげてるんだよね」
「ん?なんだこれ?」
「今度僕が従魔専門の店を開くんだ。そしてこれは割引が出来るようになる証みたいなやつだね」
そしてディルからはお詫びとして何やら鳥の刻印が施された証のようなものを目の前に差し出されたのだが、一体それが何に使うものなのかについて聞いてみると、どうやらこれから従魔専門の店を開くようで、そこで使える割引用の証とのこと。
「へぇ...どこでその店は開く予定なんだ?」
「今のところ王都とローランかな?うちから近いからね」
「じゃあ有り難く貰おうかな」
またその従魔専門の店とやらは何処で開く予定なのかと聞いてみると、王都とローランで2店舗開くらしく、自身達が活動する範囲内ということなので、いずれ出来た際に寄ってみるのも悪くないのかもしれない。
ということで、コウはお礼を伝えながらそのお詫びとして差し出された鳥の刻印が施された証を手に取ると、無くしてしまわないように収納の指輪の中へ大切に仕舞い込んでいくことにした。
「そういえばコウ君達はこれからどうするんだい?」
「ローランに帰ろうかなとは思ってるぞ」
そしてディルからお詫びの品を受け取り一息つくと、今度はこれからの予定についてを聞かれることとなったのだが、コウとしてはお詫びを受け取るために王都へ一泊しただけなので、後はローランへ帰る予定というのを伝えていく。
「そうなんだ。良ければ馬車を用意してあげようか?」
「いいのか?」
「交流会に参加してくれたしそれくらいするさ。わざわざ馬車を探すのも面倒でしょ?」
「まぁそうだけど...あー...じゃあ有り難く用意してもらおうかな」
するとディルから交流会に参加してくれたということで、ローランまで向かう馬車を用意しようかという有り難い提案をされることとなる。
まぁここは王都とということで、ローランへ向かう馬車を探すのはそこまで時間は掛からないとは思うのだが、面倒なのであるのは確かなので、ここはディルの提案に甘えても良いかもしれない。
そのため、ローランまで向かう馬車を用意してもらうこととし、馬車の準備が出来るまでの間、コウ達はディルとお茶でも啜りながらゆったりと待つことにするのであった...。
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次回の更新予定日は多分7月19日になると思いますのでよろしくお願いします。




