703話
そして決着が付いたことにより、コウは指をパチン!と鳴らすと、深々と降っていた雪はすぐに止み、一面が白銀となっていた世界は元の青々しい草が生える平原へと景色が移り変わる。
また頭に生えていた氷で出来た渦巻状の角とサンクチュアリを持つ手の部分を覆っていた氷のガントレットも同様にスッと無くなり、コウはいつも通りの姿へと戻ることとなった。
こうしてゴートンを無事に倒すことが出来たことによってなのか、周りでぐっすりと眠らされていた人達や従魔達が次々と目覚め始めたため、ホッと胸を撫で下ろし、これで一安心と言ったところだろうか。
「...少しよろしいでしょうか?」
ということで、少し離れた位置にいるライラやフェニはまだ眠りこけているので、起こすために足を向かわせようとすると、今度は後ろから声を掛けられることとなったのだが、その声の持ち主は先ほどまで戦っていたゴートンだとすぐにコウは気付く。
そのため、まだ生きているのか!と驚きながらコウはバッ!と振り返ると、そこには頭だけとなったゴートンが目をパチパチと瞬きをしながらこちらへ視線を向けてきていた。
とはいえ、敵意のようなものは一切感じず、何かしら仕掛けてくる様子もないので、問題はなさそうではあった。
「まだ生きてるのか...」
「あなたのお陰で私はもう長くはないですけどね」
そんなゴートン対してまだ生きているのかと言うと、皮肉交じりにコウのせいだと言い返されるが、そもそも王都を潰そうとしてきたのだから自業自得と言えるだろうか。
「じゃあ最後の遺言はそれでいいよな?」
「少々お待ちを...あなたに1つだけ提案したいことがあります」
ということで、コウは最後のとどめを刺すためにサンクチュアリを振り上げ、そのままスイカ割りの要領で刃を振り下ろそうとするも、何かしらの提案したいことがあるようで、最後の遺言として聞くために刃を振り下ろすのを思いとどまる。
「提案?逃がしたりするのは無いぞ」
「それについてはもう諦めてます」
「じゃあなんだよ?」
「私どもと一緒にあなたの母であるリーゼ様の敵を討ちませんか?」
その提案とはまさかのコウの母であるリーゼが死んでしまった原因となる人族に対して敵を討たないかといったことであり、そんな提案をされるとは思ってもおらず、そして自身の母の名が出ることも思ってもいなかったため、少しだけ驚いてしまった。
「なんでそんな提案を?」
「そうですね...あなたがリーゼ様のご子息ですからでしょうか?」
ということで、逆に何故そんな提案を自身にしてきたのだと聞き返していみると、どうやらコウがリーゼの息子だと判断したからとのこと。
まぁ確かにコウとしては思うところはあったりするのだが、今更敵討ちをしたいと思ってはいないし、何よりもそんなことを母であるリーゼが望んでいるとは思えない。
「却下だな。そもそもそんなことを今更したいと思ってもないし」
「それは残念です」
そのため、ゴートンの提案に対して拒否をしてみると、提案に乗ってくれないコウに残念だと口にしつつ、あっさりと身を引かれてしまった。
「おっと...私はお時間のようです。では御機嫌よう」
「待て待て。なんで俺の母さんの名前が出てくるのか聞いてないぞ」
そしてそんなゴートンは残り時間の限界が来たようで、キラキラと粒子のように空に向かって消え始めたではないか。
しかしコウとしては母であるリーゼの名が何故この場で出たのかの理由を聞いてなかったため、消えていくゴートンを止めようと、静止の声掛けをしていく。
「それは私どもの王が...」
すると消えていく最中のゴートンはコウの問いに対して答えようとしてくれてはいたのだが、残念ながら間に合わず、何やら中途半端で不穏な答えを残し、そのまま消えていってしまうこととなるのであった...。
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