691話
「こんなもんだな。ちょっと履いてみてくれ」
「ん...わかった」
靴を選んでからというもの、店主に靴を色々と調整してもらったのだが、調整がうまく行っているのかを確認するため、実際に履いてみて欲しいと促されたということで、コウは調整された靴を早速履いてみることにした。
そして調整された靴を実際に履いてみると、店主の腕が良かったのか、自身の足の形へぴったりと合い、履き心地の良い靴へと変わっていたため、文句の1つも付けようがないと言えるだろうか。
「悪くなさそうだがどうだ?」
「歩きやすいし良いな」
「ふぃ〜...そりゃ良かった」
そんな靴の履き心地を確認していると、店主なら靴の調整はどうかと聞かれたため、悪くはないといった旨を伝えると、何故かホッとした様な表情を浮かべだす。
どうしてそんな表情を浮かべたのかというと、中々来ることがない高ランク冒険者の相手をしていたということで、店主は多少なりとも緊張していたということなのだが、そんなことはコウからしてみれば知る由もない。
「じゃあこのまま履いていくか?あと前の靴はこっちで処分するぞ」
「このまま履いていこうかな。靴の処分は頼む」
ということで、コウは靴の代金を支払い終えると、店主から靴はそのまま履いていくか?ということと、ボロボロとなってしまっていた靴の処分はどうするのか?についてを聞かれた。
まぁコウとしてはこのまま履いていけば楽だし、ボロボロの靴に関しても持っていてもしょうがないので、このまま靴を履いていくことと、処分のお願いの旨を伝えていく。
「私の用事も終わりましたし一旦店の外に出ますか」
「ん...?トゥリッタのナイフは良いのか?」
「後日受け取りになりましたので問題ありません」
そんなやりとりを店主としていると、トゥリッタから用事も終えたということで、そろそろ外に出ないかということを言われたたのだが、ナイフの件は良いのか聞き返してみると、どうやら修理には時間が掛るということで、後日の受け取りになるらしい。
となれば、ここでの用は既に無いし、これ以上ここに居座っても新たに訪れるであろう他の客の迷惑にもなってしまうということで、コウ達はそのまま店主に別れを告げると、店の外へ出ることにした。
それにしてもルビィやトゥリッタから事前に聞いていた通り悪くはない店だったので、これからは機会があれば是非とも利用させてもらいたいと言ったところ。
「ルビィ先輩!トゥリッタ先輩!」
ということで、店の外に出た訳なのだが、トゥリッタやルビィの知り合いと思われる見知らぬ少年がこちらに向かって駆け寄りながら話し掛けてきたではないか。
まぁルビィやトゥリッタへの話し掛け方や身に纏っている防具が新品なのを見る限り、多分後輩の冒険者だと思われる。
「元気そうだね!」
「久しぶり。元気にしてた?」
「僕は元気です!ここで会えると思ってませんでしたから嬉しいです!」
そして見知らぬ少年は2人に出会えたことが嬉しかったのか、まるで犬が久しぶりに会えた主人に対してぶんぶんと尻尾を横に振っている様に見えたりもする。
「ところであんたは誰なんですか?」
そんなやりとりを蚊帳の外から見ていた訳なのだが、突然見知らぬ少年からギロリと敵意を剥き出しにされながら睨みつけられてしまい、一体何故なのかコウとしては理解が出来なかった。
そのため、どうしてだろうと思いつつ考えてみると、ルビィやトゥリッタがコウとの左右に立っており、まるで両手に花のような状態となっていることに気付く。
もしかすると、自身の好いているルビィやトゥリッタという先輩冒険者が侍らかされているようにも見えなくはないので、もしかするとそれが気に障ったのかもしれない。
「もしかしてルビィ先輩やトゥリッタ先輩は弱みを握られてるんですか?だったら僕が追い払いますけど?」
「この人は...「まぁもしかするとそうかもしれないな」
そんな考えに辿り着くと、今度は見知らぬ少年が全く持って見当違いなことを言いだしたのだが、これはこれで面白いと思ったコウは訂正しようとするルビィの言葉を遮りながら曖昧な返答を返しつつ、首を縦に振ってみることにした。
「やっぱり!じゃあ僕と戦って僕が勝てば二度と近づかないで下さい!」
「んー...まぁ良いぞ。なら訓練場にでも行くか」
すると見知らぬ少年はやっぱりと声を大にして今度は謎の勝負を挑んできたため、コウは面白半分で受けることにし、とりあえずこの場では周りに迷惑が掛かってしまうので、冒険者ギルドの裏手にある訓練場へ向かうこととなるのであった...。
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次回の更新予定日は多分5月17日になりますのでよろしくお願いします。




